【声劇台本】捻じれた想い

【声劇台本】捻じれた想い

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
明(あきら)
圭介(けいすけ)
海斗(かいと)
真希(まき)

■台本

圭介「明、悪い。俺はもう降りさせてもらう」

明「おいおい、圭介、何言い出すんだよ。急に。今、上手くいってるところだろ」

圭介「……まっとうに生きたい」

明「はあ? それこそ、今頃の話だ。……止めたからって、今までの罪が消えるとでも思ってるのか?」

圭介「これから出頭して、償ってくる」

明「いやいやいや。待て待て待て! 俺たちは人を殺したわけじゃない。そんな思いつめることでもないだろ」

圭介「多くの人からお金を騙し取った」

明「だから何だよ! 世の中、金の奪い合いだろ! 俺たちは頭を使って金を稼いだだけだ」

圭介「法律……いや、人の道から外れたやりかただ」

バンと机を叩く明。

明「なんなんだよ! もう少しだろ! もう少しで小さい頃からの夢が叶うんだ!」

圭介「大金持ちになる……か。なあ、明。俺たち、どうして金持ちになりたかったか、覚えてるか?」

明「ああ? 金持ちになるための理由なんて別にないだろ。本能だよ、本能」

圭介「……俺は、思い出したんだ。だから、一からやり直したい」

明「……」

圭介「大丈夫だ。お前のことは吐かない」

明「勝手にしろ!」

圭介「じゃあな……」

ドアを開けて圭介が出ていく。

明がバンと机を叩く。

明「くそ……」

場面転換。

スズメの鳴く声。

携帯の着信音が鳴る。

明「ん、んん……」

眠そうに携帯を取る明。

明「はい?」

海斗「おお! 俺俺!」

ブツと電話を切る。

明「ったく! くだらんことで起こしやがって」

再び、携帯が鳴る。

通信ボタンを押す。

明「同業者にかけてくんじゃねーよ、カス!」

海斗「ああ? 明、何言ってんだよ。俺だよ、海斗だよ」

明「海斗だぁ?」

海斗「おいおい。薄情な奴だな。高校まで一緒につるんでただろ」

明「……あ、ああ! 海斗か! 久しぶりだな。10年ぶりくらいか?」

海斗「卒業以来だから、8年ってところだな」

明「で? 急にどうしたんだ?」

海斗「なあ、明。圭介のこと、覚えてるか? 俺たちと一緒につるんでた」

明「……あ、ああ。もちろん。覚えてるさ」

海斗「……その圭介だけど、死んだんだ」

明「……は? な、なに言ってんだよ。あいつ、3日前まで俺と……」

海斗「ああ、明のところにも連絡してたのか。いや、俺もビックリしてさ。話した次の日にあんなことになったから……」

明「……死んだって、事故かなにかか?」

海斗「いや、刺されたらしい。……あいつさ、何かヤバいことやってたらしいんだよ」

明「……」

海斗「でさ、警察に出頭する前に、アレを掘り出したいって相談されたんだよ」

明「……アレ?」

海斗「それでさ、どうせなら、あのときのメンバー全員で掘り出そうってことで、真希にも連絡取ろうとしたんだよ」

明「……真希か。はは。あいつのことも懐かしすぎるな」

海斗「真希とも連絡が取れて、いざ、圭介に連絡取ってみたら、あいつの親が出たんだよ。で、あいつの携帯にお前の番号が入ってたから、連絡したってわけ」

明「そっか……」

海斗「で、どうする?」

明「なにがだ?」

海斗「あいつの葬式、行くだろ?」

明「……あ、ああ。そうだな。行くよ」

海斗「その後、掘り出しにいかないか、アレ」

明「……アレってなんだっけ?」

海斗「ん? 圭介から話いったんじゃねえの?」

明「あー、いや……。そのときは、その話は出なかったんだ」

海斗「……ふーん。変なの。アレってのは、アレだよ。小学生のときに埋めた、アレ」

明「小学生? んな昔のこと、覚えてねえって」

海斗「だよな! 俺も圭介から聞くまで全然、覚えてなくてさ。すっかり忘れてたよ、タイムカプセルのこと」

明「……タイムカプセル? ……ああ! 思い出した! 埋めたな!」

海斗「真希も葬式来るって言ってたからさ、その後、掘り出しに行こうぜ」

明「……けど、俺、どこに埋めたか覚えてねえけど」

海斗「暗号の紙は俺が持ってるから大丈夫だ」

明「ああ。あの頃は暗号なんてもんも作ってたな。小学生らしいよな」

海斗「はは。まったくだ。黒歴史だよ、黒歴史。じゃあ、真希にも話しておくな」

明「ああ、頼む」

ブツっと電話が切れる。

場面転換。

山道を歩く明、海斗、真希。

明「なあ、海斗。ホントにこんなところだっけ?」

海斗「暗号の紙には、この辺って書いてあるぞ」

真希「小学生だけで、こんな山奥に来るなんて、今考えたら危ないわよね」

明「まったくだ。……それより、真希。お前、今、どうなんだ?」

真希「どうって?」

明「あー、いや……ほら……」

海斗「貧乏かってことだろ?」

明「おい! ストレート過ぎんだろ」

真希「あはははは。あー、そっか。あの時はすっごい、自分で貧乏貧乏、言ってたもんね」

海斗「確か、両親が離婚したんだよな」

明「お前、ズケズケ言い過ぎだぞ」

真希「いいって。ホントのことなんだから。父さんが出て行ったときは絶望しかなかったわ」

明「……今も、苦しいのか?」

真希「ううん。今はそれなりの暮らし出来てるわよ。っていうか、あのときも、言うほど貧乏じゃなかったからね」

明「そうなのか?」

真希「あの時は同情が欲しくて、大げさに言ってたのよ」

明「ふーん……」

海斗「そういや、真希はまだ結婚してないんだよな? 彼氏とかはいんの?」

明「……」

真希「うっさいわね! 今は仕事に集中したいの!」

海斗「んなこと言ってっと、行き遅れるぞ」

真希「あー、そういうのモラハラっていうのよ」

海斗「おっと、着いたぞ。この辺りだ」

滝の音が響く。

明「いや、この辺りって……どこだよ?」

真希「まさか、この辺一帯、掘り返すなんて言わないでしょうね?」

海斗「大丈夫だ。赤と三本線がある」

明「……何言ってんだ?」

海斗「暗号だよ、暗号。あの木の影が滝の夕日に跳ね返って三つの影ができる。その影が重なるところに埋めたんだ」

明「……よくもまあ、そんな厨二的なことを考えたもんだ」

真希「黒歴史ね」

海斗「えっと……ああ、あそこだ。行くぞ」

場面転換。

海斗「ここだ」

明「ん? なんか掘り返した跡があるな」

海斗「圭介が掘り返したのかな?」

真希「とにかく、掘ってみましょ」

場面転換。

穴を掘る音。そしてスコップが箱に当たる。

海斗「あった……」

箱を開ける海斗。

明「懐かしいな。ガオレインのカードだ」

真希「お気に入りの人形……。失くしたと思ったら、埋めたんだったわ」

海斗「俺、なんで壊れたおもちゃなんて埋めたんだろ……」

真希「それより、本命の手紙が見たいわ」

海斗「それぞれの自分の未来宛の手紙だろ。……えっと、あったあった。ほれ、こっちが真希の分で、こっちが明のだ」

明「サンキュー」

ガサガサと手紙を開く。

明(N)「拝啓、未来の僕へ。未来の僕はちゃんとお金持ちになっているでしょうか? お金持ちになって、真希ちゃんをお嫁さんに出来てたらいいんだけど……。でも、もし、圭介の方が早くお金持ちになって、真希ちゃんと結婚するなら、ちゃんと祝福してあげてね。面白くないからって、意地悪したらダメだよ。……ったく、我ながら子供の癖に生意気なこと書いてあるな」

明「……そっか。圭介。お前、このこと、思い出したんだな」

真希「ひゃー。恥ずかしいこと書いてある」

海斗「俺も……」

明「なあ、真希」

真希「なに?」

明「……あ、いや。なんでもない」

真希「……なによ。気になるわね」

明「……少しだけ、待ってて欲しい」

真希「待つってなにを?」

明「……」

場面転換。

街中を歩く明。

明(N)「圭介。今なら、お前の気持ちがわかる。……確かにあんな方法で稼いだ金で真希を迎えに行けない。……だから、お前がしようとした通り、俺も清算するよ」

後ろから男が駆け寄ってくる。

そして、背中にナイフが突き刺さる。

明「うぐっ!」

男「見つけたぞ! 俺の金……。くそ! お前らのせいで、俺の人生は無茶苦茶になっちまったんだ!」

明「あ……う……」

男「うおおお!」

明「や、やめ……」

ドス、ドス、ドスと何度も刺される音。

明(N)「この結末は俺にとって当然だったのかもしれない。俺たちは間違ったんだ。これは報いだ。捻じ曲がった想いの……」

終わり。

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