【声劇台本】捻じれた想い
- 2021.01.30
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
明(あきら)
圭介(けいすけ)
海斗(かいと)
真希(まき)
男
■台本
圭介「明、悪い。俺はもう降りさせてもらう」
明「おいおい、圭介、何言い出すんだよ。急に。今、上手くいってるところだろ」
圭介「……まっとうに生きたい」
明「はあ? それこそ、今頃の話だ。……止めたからって、今までの罪が消えるとでも思ってるのか?」
圭介「これから出頭して、償ってくる」
明「いやいやいや。待て待て待て! 俺たちは人を殺したわけじゃない。そんな思いつめることでもないだろ」
圭介「多くの人からお金を騙し取った」
明「だから何だよ! 世の中、金の奪い合いだろ! 俺たちは頭を使って金を稼いだだけだ」
圭介「法律……いや、人の道から外れたやりかただ」
バンと机を叩く明。
明「なんなんだよ! もう少しだろ! もう少しで小さい頃からの夢が叶うんだ!」
圭介「大金持ちになる……か。なあ、明。俺たち、どうして金持ちになりたかったか、覚えてるか?」
明「ああ? 金持ちになるための理由なんて別にないだろ。本能だよ、本能」
圭介「……俺は、思い出したんだ。だから、一からやり直したい」
明「……」
圭介「大丈夫だ。お前のことは吐かない」
明「勝手にしろ!」
圭介「じゃあな……」
ドアを開けて圭介が出ていく。
明がバンと机を叩く。
明「くそ……」
場面転換。
スズメの鳴く声。
携帯の着信音が鳴る。
明「ん、んん……」
眠そうに携帯を取る明。
明「はい?」
海斗「おお! 俺俺!」
ブツと電話を切る。
明「ったく! くだらんことで起こしやがって」
再び、携帯が鳴る。
通信ボタンを押す。
明「同業者にかけてくんじゃねーよ、カス!」
海斗「ああ? 明、何言ってんだよ。俺だよ、海斗だよ」
明「海斗だぁ?」
海斗「おいおい。薄情な奴だな。高校まで一緒につるんでただろ」
明「……あ、ああ! 海斗か! 久しぶりだな。10年ぶりくらいか?」
海斗「卒業以来だから、8年ってところだな」
明「で? 急にどうしたんだ?」
海斗「なあ、明。圭介のこと、覚えてるか? 俺たちと一緒につるんでた」
明「……あ、ああ。もちろん。覚えてるさ」
海斗「……その圭介だけど、死んだんだ」
明「……は? な、なに言ってんだよ。あいつ、3日前まで俺と……」
海斗「ああ、明のところにも連絡してたのか。いや、俺もビックリしてさ。話した次の日にあんなことになったから……」
明「……死んだって、事故かなにかか?」
海斗「いや、刺されたらしい。……あいつさ、何かヤバいことやってたらしいんだよ」
明「……」
海斗「でさ、警察に出頭する前に、アレを掘り出したいって相談されたんだよ」
明「……アレ?」
海斗「それでさ、どうせなら、あのときのメンバー全員で掘り出そうってことで、真希にも連絡取ろうとしたんだよ」
明「……真希か。はは。あいつのことも懐かしすぎるな」
海斗「真希とも連絡が取れて、いざ、圭介に連絡取ってみたら、あいつの親が出たんだよ。で、あいつの携帯にお前の番号が入ってたから、連絡したってわけ」
明「そっか……」
海斗「で、どうする?」
明「なにがだ?」
海斗「あいつの葬式、行くだろ?」
明「……あ、ああ。そうだな。行くよ」
海斗「その後、掘り出しにいかないか、アレ」
明「……アレってなんだっけ?」
海斗「ん? 圭介から話いったんじゃねえの?」
明「あー、いや……。そのときは、その話は出なかったんだ」
海斗「……ふーん。変なの。アレってのは、アレだよ。小学生のときに埋めた、アレ」
明「小学生? んな昔のこと、覚えてねえって」
海斗「だよな! 俺も圭介から聞くまで全然、覚えてなくてさ。すっかり忘れてたよ、タイムカプセルのこと」
明「……タイムカプセル? ……ああ! 思い出した! 埋めたな!」
海斗「真希も葬式来るって言ってたからさ、その後、掘り出しに行こうぜ」
明「……けど、俺、どこに埋めたか覚えてねえけど」
海斗「暗号の紙は俺が持ってるから大丈夫だ」
明「ああ。あの頃は暗号なんてもんも作ってたな。小学生らしいよな」
海斗「はは。まったくだ。黒歴史だよ、黒歴史。じゃあ、真希にも話しておくな」
明「ああ、頼む」
ブツっと電話が切れる。
場面転換。
山道を歩く明、海斗、真希。
明「なあ、海斗。ホントにこんなところだっけ?」
海斗「暗号の紙には、この辺って書いてあるぞ」
真希「小学生だけで、こんな山奥に来るなんて、今考えたら危ないわよね」
明「まったくだ。……それより、真希。お前、今、どうなんだ?」
真希「どうって?」
明「あー、いや……ほら……」
海斗「貧乏かってことだろ?」
明「おい! ストレート過ぎんだろ」
真希「あはははは。あー、そっか。あの時はすっごい、自分で貧乏貧乏、言ってたもんね」
海斗「確か、両親が離婚したんだよな」
明「お前、ズケズケ言い過ぎだぞ」
真希「いいって。ホントのことなんだから。父さんが出て行ったときは絶望しかなかったわ」
明「……今も、苦しいのか?」
真希「ううん。今はそれなりの暮らし出来てるわよ。っていうか、あのときも、言うほど貧乏じゃなかったからね」
明「そうなのか?」
真希「あの時は同情が欲しくて、大げさに言ってたのよ」
明「ふーん……」
海斗「そういや、真希はまだ結婚してないんだよな? 彼氏とかはいんの?」
明「……」
真希「うっさいわね! 今は仕事に集中したいの!」
海斗「んなこと言ってっと、行き遅れるぞ」
真希「あー、そういうのモラハラっていうのよ」
海斗「おっと、着いたぞ。この辺りだ」
滝の音が響く。
明「いや、この辺りって……どこだよ?」
真希「まさか、この辺一帯、掘り返すなんて言わないでしょうね?」
海斗「大丈夫だ。赤と三本線がある」
明「……何言ってんだ?」
海斗「暗号だよ、暗号。あの木の影が滝の夕日に跳ね返って三つの影ができる。その影が重なるところに埋めたんだ」
明「……よくもまあ、そんな厨二的なことを考えたもんだ」
真希「黒歴史ね」
海斗「えっと……ああ、あそこだ。行くぞ」
場面転換。
海斗「ここだ」
明「ん? なんか掘り返した跡があるな」
海斗「圭介が掘り返したのかな?」
真希「とにかく、掘ってみましょ」
場面転換。
穴を掘る音。そしてスコップが箱に当たる。
海斗「あった……」
箱を開ける海斗。
明「懐かしいな。ガオレインのカードだ」
真希「お気に入りの人形……。失くしたと思ったら、埋めたんだったわ」
海斗「俺、なんで壊れたおもちゃなんて埋めたんだろ……」
真希「それより、本命の手紙が見たいわ」
海斗「それぞれの自分の未来宛の手紙だろ。……えっと、あったあった。ほれ、こっちが真希の分で、こっちが明のだ」
明「サンキュー」
ガサガサと手紙を開く。
明(N)「拝啓、未来の僕へ。未来の僕はちゃんとお金持ちになっているでしょうか? お金持ちになって、真希ちゃんをお嫁さんに出来てたらいいんだけど……。でも、もし、圭介の方が早くお金持ちになって、真希ちゃんと結婚するなら、ちゃんと祝福してあげてね。面白くないからって、意地悪したらダメだよ。……ったく、我ながら子供の癖に生意気なこと書いてあるな」
明「……そっか。圭介。お前、このこと、思い出したんだな」
真希「ひゃー。恥ずかしいこと書いてある」
海斗「俺も……」
明「なあ、真希」
真希「なに?」
明「……あ、いや。なんでもない」
真希「……なによ。気になるわね」
明「……少しだけ、待ってて欲しい」
真希「待つってなにを?」
明「……」
場面転換。
街中を歩く明。
明(N)「圭介。今なら、お前の気持ちがわかる。……確かにあんな方法で稼いだ金で真希を迎えに行けない。……だから、お前がしようとした通り、俺も清算するよ」
後ろから男が駆け寄ってくる。
そして、背中にナイフが突き刺さる。
明「うぐっ!」
男「見つけたぞ! 俺の金……。くそ! お前らのせいで、俺の人生は無茶苦茶になっちまったんだ!」
明「あ……う……」
男「うおおお!」
明「や、やめ……」
ドス、ドス、ドスと何度も刺される音。
明(N)「この結末は俺にとって当然だったのかもしれない。俺たちは間違ったんだ。これは報いだ。捻じ曲がった想いの……」
終わり。
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