【声劇台本】気付かなかった想い

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブストーリー

■キャスト
涼真(りょうま)
六華(りっか)
マネージャー

■台本

演奏が終わる。

涼真「今日はライブに来てくれて、ありがとうございました!」

ワーッと歓声が上がる。

場面転換。

マネージャー「お疲れさまでした。ライブ、大成功ですね」

涼真「ええ。ようやく、人気も上がってきたって感じですね」

マネージャー「涼真さんの努力のたまものですよ。それに、ようやく明日はテレビ出演ですからね。これで、一気に知名度が上がるはずです」

涼真「はい、頑張ります」

場面転換。

ガチャリとドアを開け、部屋に入って来る涼真。

涼真「……」

ドサっとベッドに倒れ込む涼真。

涼真「……疲れたな」

場面転換。

ここから回想。

六華「……涼真。……ちょっと涼真!」

涼真「ん? ああ、六華か」

六華「六華か、じゃないわよ! また着替えないで寝て! 学ラン、シワだらけじゃない!」

涼真「あー、そうだな。でも、ま、いいんじゃねーの。別に」

六華「よくない! ほら、早く脱いで! アイロンかけてあげるから」

涼真「お前、母親みたいだな」

ギュッと、頬をつねる六華。

涼真「いたい、いたい!」

六華「母親じゃなくて、か、の、じょ!」

涼真「わかった、わかったから、手を放してくれ!」

六華「ったく、なんでこんなのと付き合うのをオッケーしちゃったかな……」

涼真「ん? 六華、お前、手に変な青色付いているぞ」

六華「え? あ、ヤダ。ホントだ」

涼真「何つけたんだ?」

六華「ああ……いや、ま、マネキュアよ、マネキュア」

涼真「へー、六華もついに色気づいたか」

六華「あんたねー。彼女にいうセリフ?」

涼真「あ、そうだ、六華。新曲できたんだ! 聞いてくれ!」

六華「え? ホント? 聞きたい、聞きたい!」

涼真がギターを弾きつつ、歌い始める。

場面転換。

路上で演奏して、歌っている涼真。

そして、歌い終える。

涼真「……はあ。今日も観客はゼロか」

六華「私がいるでしょ、私が」

涼真「知り合いはカウントしないもんなんだよ。こういうのは」

六華「でも、なんでみんな素通りするんだろうね。いい曲だと思うんだけどな」

涼真「それはお前がひいきしてるだけだろ」

六華「そうかなー」

涼真「さすがに高校でスカウトっていうのは無理か……」

六華「あんまり、急ぐ必要ないよ。頑張れば、大丈夫だよ。涼真、才能あるんだから」

涼真「ひいきも大概にしとけって。……って、そういえば、六華は大学どうするんだ?」

六華「私? 私は……その……」

涼真「なんだよ? 行かないとか言うなよ」

六華「……私、美大に行くんだ」

涼真「ええ!? マジか! お前、絵描くの?」

六華「う、うん……。まあ」

涼真「全然、知らんかった」

六華「言ってなかったしね」

涼真「俺はどうすっかな。今から、音大は無理だしな……」

六華「涼真の学力なら、大学に行くこと自体難しいもね」

涼真「お前! みなまで言うなよ」

六華「あはは。でも、大学にこだわらなくていいんじゃない? 音楽なら今みたいに、どこでだってできるんだしさ」

涼真「そりゃそうだけど……」

六華「私はずっと涼真を応援し続けるからね」

涼真「お、おう。サンキューな」

場面転換。

勢いよく、ドアが開き、六華が部屋に入って来る。

六華「ねえ、聞いて、涼真!」

涼真「おお! 六華! 俺も大ニュースがある!」

六華「大ニュース? なに?」

涼真「じ、つ、は! ミスリードのライブの前座をやらないかって、言われたんだ!」

六華「えー! すごい! やったね!」

涼真「ああ! これはチャンスだ! これから忙しくなるぞ! 新曲作らないとな」

六華「うん! 頑張って、涼真!」

涼真「……で、お前の方の用事は?」

六華「え? ああ、うん。いや、なんでもないよ。全然大したことないから」

涼真「そうなのか?」

場面転換。

演奏の練習をしている涼真。

涼真「ふう……」

パチパチパチと拍手しながら、六華が歩み寄る。

六華「お疲れ様、涼真。はい、飲み物」

涼真「ああ、サンキュー」

ごくごくと飲む涼真。

六華「大分、良い感じになってきたんじゃない?」

涼真「ああ、今回は失敗できないからな」

六華「大丈夫! 涼真なら絶対、成功するよ」

涼真「ああ、見ててくれ。……って、そういえば、六華。お前、目の下にクマ出来てるけど、寝不足か?」

六華「え? ああ、うん。ちょっと、ね」

涼真「ん? 何かしてんのか?」

六華「今、涼真は人のことを気にしてる場合じゃないでしょ! 練習、練習!」

涼真「お、おう! そうだな」

場面転換。

ライブで演奏して、歌う涼真。

ワーッと歓声が上がる。

場面転換。

バンと勢いよく、ドアが開き、涼真が入って来る。

涼真「六華! 別れたいって、どういうことだよ!」

六華「……ごめんね」

涼真「どうしてだよ!」

六華「私ね、パリに留学するんだ」

涼真「え?」

六華「絵のコンクールでいいところまでいって、それで、本場で勉強してみないかって話がきたの」

涼真「……え? な、なんでそんなこと隠してたんだよ?」

六華「ごめん。涼真には音楽に集中してほしかったんだ」

涼真「べ、別にさ、別れることないだろ? 遠距離だって……」

六華「私、絵に関しては本気なの。大学を卒業しても、数年は帰って来ないつもり」

涼真「……」

六華「涼真も音楽に集中しなくっちゃ。せっかく、レコード会社からスカウトきたんだから」

涼真「お、俺……」

六華「大丈夫! 私がいなくても、涼真なら、絶対大丈夫だから!」

涼真「六華……」

六華「離れてても、ずっと涼真を応援してるからね。……さよなら」

涼真「……」

回想終わり。

場面転換。

朝。鳥の鳴く声。

涼真「……六華」

携帯が鳴り、とる。

涼真「はい、もしもし。あ、マネージャー。……はい。……はい。……あ、あの。今日なんですけど……」

場面転換。

ドアがノックされる。

六華「はーい!」

ドアを開ける六華。

涼真「六華。元気だったか?」

六華「……え? 涼真、どうして?」

涼真「六華。俺さ……。俺が思ってたより、お前のこと、好きだったみたいだ」

六華「で、でも……音楽は? どうするの?」

涼真「音楽はどこでだってできるさ」

六華「でも……」

涼真「今までずっとお前に支えられてきてた。今度は俺もお前を支えたい。それに、音楽も諦めない」

六華「バカ……バカ……。欲張り過ぎだよ」

涼真「ああ。そうだな」

六華「……涼真。涼真……」

六華が涼真に抱き着く。

涼真「六華。愛してる……」

終わり。

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