【声劇台本】よくある優等生と不良の組み合わせ

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■概要
人数:2人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
楓(かえで)
郁真(郁真)

■台本

楓が街中を歩いている。

すると郁真を見つける。

楓「ふう。今日も疲れなぁ。……ってあれ? あれって、まさか」

楓が郁真に駆け寄る。

楓「ねえ、郁真君。郁真君でしょ?」

郁真「ん? ……ああ、楓君か。懐かしいな」

楓「高校以来だね。ねえ、せっかくだし、どこかで少し話さない?」

郁真「構わないが、20時までにしてくれ。それまでにいつも帰るようにしているんだ」

楓「相変わらず真面目なんだね。仕事終わったら、いつも家に直行してるの?」

郁真「ああ」

楓「遊んだり、飲みに行ったりしないの?」

郁真「ないな」

楓「でも、そんなんだと、出世とかに響かない?」

郁真「問題ない。周りが文句を言えないくらい結果を出していれば、自ずと出世していく」

楓「さすが優等生の郁真君ね」

郁真「その表現はあまり好きではないな」

楓「ああ、ごめんなさい。つい、高校のノリで……」

郁真「いや、多少不快なだけだ。そこまで気にする必要はない」

楓「はは。不快だってはっきり言っちゃうところは郁真君らしいけど、なんか、丸くなった感じがするね」

郁真「丸く? 体型は高校の時から変わっていないと思うのだがな」

楓「違う違う。性格の話だよ」

郁真「性格? 見えないものがどうして丸いとわかるんだ?」

楓「なんていうかな。棘がなくなったっていうか……そう、優しくなったっていう感じ」

郁真「そうか。自分では高校の時から変わったという意識はないんだがな」

楓「まあ、変わったっていうのは、自分じゃわかりにくいものだから」

郁真「自分のことなのに、自分じゃわからないのか?」

楓「ははは。相変わらずだね、そういう考え方」

郁真「変わったのか、変わらないのか、一体、どっちなんだ?」

楓「んー。少し変わったって感じかな」

郁真「難しいな」

楓「それより郁真君。その左手の指輪……」

郁真「ん? 結婚指輪だが?」

楓「……結婚、できたんだ?」

郁真「18歳を越えているからな。国籍も手放していない」

楓「ああ、えっと……。郁真君が結婚したいって思える人ができたんだ?」

郁真「当然だ。政略結婚するほど、俗的(ぞくてき)ではないし、困っていることもない」

楓「ふーん。高校の頃はあんなに、恋愛とかに興味なさそうだったのにね」

郁真「ふむ……確かに、高校生の頃は恋愛というものの感情がわからなかったな」

楓「それじゃ、大学に行ってから大恋愛したのかな? ねえ、相手の人ってどんな人か聞いてもいい?」

郁真「どんな人もなにも、君も知っている人物だ」

楓「え? 誰?」

郁真「杏奈君だ」

楓「……杏奈? 杏奈って、竜宮杏奈(たつみやあんな)さん!?」

郁真「ああ」

楓「えええええええ! 嘘っー!」

郁真「そんなに驚くことか?」

楓「それはそうよ。なんていうか、真逆の存在だったもの。郁真君と杏奈さんって」

郁真「そうか? 確かに杏奈君は、勉学は下から数えた方が早かったが、運動に関しての成績は上位だった。そこまで言うほど、真逆とは思えんが」

楓「いやー、なんていうか、その……杏奈さんって不良だったでしょ? かなりヤバ目の」

郁真「不良……。ふむ。そうだな。出席日数は卒業ギリギリで、教師と生徒に暴行した回数は数えきれない。停学は二桁で、退学にならなかった方が不思議だ。そう考えると確かに、不良というグループの方に近かったかもしれないな」

楓「近いもなにも、杏奈さんが不良じゃなかったら、日本に不良はいないよ」

郁真「どこからが不良なのか、不良の中でもどこに悪さのレベルの基準があるかが分からないからな。どうも判定しづらい」

楓「杏奈さんって、大学じゃ丸く……いや、更生したんだ」

郁真「いや、杏奈君は大学には行っていない。付き合いは高校の頃からだ」

楓「え? そうなの? でも、全然、接点がないように見えたけど……」

郁真「杏奈君が人前で接するのを嫌がってな。それぞれのイメージがあると言って、人前でお互いが話をするのは禁止されていたのだ」

楓「ふーん。なるほどね。でもさ、郁真君は杏奈さんのどこに惹かれたの? 確かに美人だけど、郁真君って容姿はあまり気にしなさそうだし」

郁真「杏奈君は癒しをくれるんだ」

楓「癒し? 杏奈さんが? 真逆な気がするんだけど……。あ、もしかして、物凄いツンデレだったとか?」

郁真「ツンデレ?」

楓「あ、えっと、普段、他の人に見せている態度と、好きな人の前の態度が一変する人のことよ」

郁真「……いや、言動や行動は他の人間の前のものと変わらなかったな」

楓「……えっと、それじゃ癒しにはならないんじゃない?」

郁真「何に対して癒しになるかは、人によって違うものだ」

楓「それじゃ、郁真君に対しての癒しって?」

郁真「高校生の頃……いや、高校生まで、周りの人間、大人や教師、特に異性からは気を使われていた、というか、いわゆるおべっかというのを使われていた」

楓「ああ……。うん、郁真君は勉強、運動、顔が完璧だったからね。女子の中での人気は一番だったよ」

郁真「だが、杏奈君は違った。まったく、おべっかというものを使わず、他の人間と同じように話してくれた」

楓「あー。郁真君の攻略法はそっち方面だったのか……。御曹司系だったんだね。普通に接すればよかったんだ。高校のときに気づいてればなぁ……」

郁真「なにより、杏奈君の強い言葉が心に刺さった」

楓「……え?」

郁真「バカ、カス、無能……。ふふ。よくも、ああも人を蔑(さげす)む言葉が出てくるものだ。言葉自体は知っていたが、その言葉を向けられることは初めてだったからな。なんというか……新鮮だったよ」

楓「……まさか」

郁真「それに平気で暴力を振るってくるんだ。親にだって手を挙げられたことはなかったんだがな。まさか、異性にやられるとは思っていなかった。……ふふっ」

楓「……」

郁真「おっと。すまない。ここから駅まで3分56秒かかる。次の電車に乗るにはもういかねばならない。それでは失礼する」

郁真が歩き去っていく。

楓「郁真君って……ドMだったんだ」

終わり。

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