【声劇台本】あなたと共に

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■概要
人数:2人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、未来、シリアス

■キャスト
ライザ
アレン

■台本

ライザが荒野を歩いている。

ピタリと立ち止まると、機械音が響く。

ライザ「大気解析。……ヨウ素、2030ペタベクレル。セシウム、121ペタベクレル。ストロンチウム、12ペタベクレル。プルトニウム、0.03ペタベクレル……。依然、安全水準を大幅にオーバー。人が住める環境ではありません」

再びライザが歩き出す。

場面転換。

ガチャリとドアが開き、ライザが部屋に入って来る。

ライザ「アレン様。ただいま、戻ました」

アレン「お帰り、ライザ。遅かったから、心配したよ」

ライザ「申し訳ありません。探索範囲を大幅に広げましたので」

アレン「いや、別に謝る必要はないよ。無事に戻って来てくれれば、それでいいんだ」

ライザ「心配は必要ありません。外にはほぼ生物は存在しません。ある意味、この場所よりも安全です」

アレン「はは。そうだね。だけど、こういうときは、どうしても心配してしまうものなんだよ」

ライザ「……理解できません。なぜでしょうか?」

アレン「えっと……。ほ、ほら、例えば、建物の中にいるときに、地震とかが起こって、物が倒れたりしたとかさ」

ライザ「その確率はかなり低いです。それに、仮にそのような状況下でも、私の体の強度であれば、問題ありません」

アレン「うーん。とにかく、心配なんだよ」

ライザ「理解不能です。なぜ、私なんかにそこまで心配されるのでしょうか?」

アレン「なんか、なんて言わないでくれ。君は僕にとって、とても大切な存在なんだ」

ライザ「大切な存在……。理解しました。確かに、私がいないと、外を調べることはできません。食料の回収は生命維持に深く関係しますからね」

アレン「そういうことじゃなくて……」

ライザ「……どういうことでしょう?」

アレン「例えばだけど、もし、君が外を探索できなかったとしても、僕は君を大切だと思ったはずだよ」

ライザ「……理解できません」

アレン「はは。そっか。まあ、一種の愛情とでも思っていてくれ」

ライザ「……愛、ですか。そんなものは、脳内物質が見せる、幻想です。愛なんてものは存在しません」

アレン「愛は、脳内物質が見せる、幻想か……。でも、脳内物質による反応ということなら、存在するんじゃないか?」

ライザ「脳内物質が存在し、その作用によるものなので、存在するということですか?」

アレン「そうそう。そういうこと」

ライザ「……アンドロイドは、脳内物質はでません。ですので、少なくても私には愛というものは存在しません」

アレン「寂しいことを言わないでくれよ。でも、まあ、君が僕のことを愛してくれなかったとしても、僕は君のことを愛してるよ」

ライザ「アンドロイドに対して、そのような感情を抱くのは異常かと」

アレン「おいおい。人のことを変態みたいに言うなよ」

ライザ「ですが……」

アレン「それより、食料の方はどうだったんだい? 何か見つけることはできた?」

ライザ「はい。色々と確保に成功しました」

アレン「ありがとう。これで、一か月はもちそうだ」

ライザ「あとは、こういうのも回収できました」

アレン「……本?」

ライザ「はい。データ内を検索した結果、本は娯楽になるとありましたので」

アレン「ありがとう。君がいないときに、読ませてもらうよ」

ライザ「……なぜでしょうか? 私が不在でなくても、本は読めると思うのですが」

アレン「君がいるなら、君と会話したいからさ」

ライザ「私と? ですが、私が持つ有意義なデータは全てお渡ししています。私と話すよりも本を読む方が、ずっと有意義だと思います」

アレン「そんなことはないさ。君と話していると楽しいんだ。だから、君と話すことは有意義だよ」

ライザ「……そう言って貰えるなら、なによりです」

アレン「でも、本当に君を見つけることができてよかったよ。もし、見つけたのが、君じゃなかったら、きっと僕はこの生活に耐えられなくなっていただろうね」

ライザ「アレン様には感謝しています。廃棄状態だったところを直していただき、こうして私に存在意義をくれたことに」

アレン「あはは。存在意義って、ちょっと大げさじゃないかな?」

ライザ「そんなことはありません。アレン様に尽くすことが私の全てです。それがはあせないなら、私は存在する意味はないんです。存在することは許されません」

アレン「ライザ、そんなことはないよ」

ライザ「……どういうことでしょう?」

アレン「例え、この後、僕が死んだとして……僕がいなかったとしても、君は存在してもいいんだ」

ライザ「存在意義がないなら、消えるべきだと思います」

アレン「存在意義なんて、生きていれば、見つかるよ」

ライザ「……矛盾したようなものいいですね」

アレン「まあ、あんまり深く考えないで欲しいってことだよ」

ライザ「……わかりました」

場面転換。

ドアが開き、アレンが部屋に入って来る。

アレン「おやよう、ライザ」

ライザ「おはようございます。……ですが、今はもう14時を過ぎています。おはようというよりは、こんにちは、の方が正しいのではないでしょうか?」

アレン「別にいいんじゃないかな。外に出るわけでもないし、おはようでも、こんにちは、でもさ」

ライザ「アレン様がそういうなら……」

アレン「あ、そうだ。ライザ、そろそろメンテナンスをしようか。連日、遠くまで行ってくれてるからね」

ライザ「ありがとうございます」

場面転換。

カチャカチャと機械を組み立てる音。

アレン「……よし、あとはバッテリーを繋いで終わりだよ」

ライザ「ありがとうございます」

そのとき、部屋が揺れ始める。

アレン「……地震? しかも、結構大きいな」

ドンドンと地震が大きくなっていく。

アレン「うわ、凄い大きいな!」

ライザ「アレン様! ここが崩れそうです! 早く、避難をお願いします!」

アレン「君を残して、行くわけにはいかないさ」

ライザ「いけません! お願いです! 早く避難を!」

アレン「もう少しなんだ! ……よし! 終わった……」

そのとき、巨大な音を立てて、部屋が崩壊し始める。

アレン「ライザ!」

ライザ「アレン様!」

場面転換。

部屋が静まり返っている。

ライザ「……再起動完了しました。……アレン様は?」

アレン「ぐふっ! ……ライザ、無事だな?」

ライザ「アレン様!」

アレン「はあ、はあ、はあ……。よかった」

ライザ「……どうして、私を庇ったのですか? 私なんて放っておいて、逃げればこんなことには……」

アレン「言ったよね? 君は僕にとって、大切な存在だって。だから、どうしても置いてはいけなかった」

ライザ「……アレン様」

アレン「ライザ。僕から、最後のお願いがある」

ライザ「アレン様! アレン様!」

ピッピッピと設定ボタンを押す音。

アレン「これで……よし。これで……君は自分の意思で、起動停止することはできなくなった」

ライザ「嫌です! お願いです! アレン様と一緒に、消えさせてください!」

アレン「……ライザ、愛しているよ。……生きて……くれ」

ライザ「アレン様! アレン様―!」

場面転換。

ライザが荒野を歩いている。

ピタリと立ち止まると、機械音が響く。

ライザ「大気解析。……ヨウ素、2030ペタベクレル。セシウム、121ペタベクレル。ストロンチウム、12ペタベクレル。プルトニウム、0.03ペタベクレル……。依然、安全水準を大幅にオーバー。人が住める環境ではありません」

ライザ(N)「アレン様は言っていました。生きていれば、存在意義を見つけることができると。今はまだ、見つけられていませんが、きっと見つけてみせます。それがアレン様の望みなのだから」

終わり。

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