【声劇台本】あなたと共に
- 2021.07.02
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:2人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、未来、シリアス
■キャスト
ライザ
アレン
■台本
ライザが荒野を歩いている。
ピタリと立ち止まると、機械音が響く。
ライザ「大気解析。……ヨウ素、2030ペタベクレル。セシウム、121ペタベクレル。ストロンチウム、12ペタベクレル。プルトニウム、0.03ペタベクレル……。依然、安全水準を大幅にオーバー。人が住める環境ではありません」
再びライザが歩き出す。
場面転換。
ガチャリとドアが開き、ライザが部屋に入って来る。
ライザ「アレン様。ただいま、戻ました」
アレン「お帰り、ライザ。遅かったから、心配したよ」
ライザ「申し訳ありません。探索範囲を大幅に広げましたので」
アレン「いや、別に謝る必要はないよ。無事に戻って来てくれれば、それでいいんだ」
ライザ「心配は必要ありません。外にはほぼ生物は存在しません。ある意味、この場所よりも安全です」
アレン「はは。そうだね。だけど、こういうときは、どうしても心配してしまうものなんだよ」
ライザ「……理解できません。なぜでしょうか?」
アレン「えっと……。ほ、ほら、例えば、建物の中にいるときに、地震とかが起こって、物が倒れたりしたとかさ」
ライザ「その確率はかなり低いです。それに、仮にそのような状況下でも、私の体の強度であれば、問題ありません」
アレン「うーん。とにかく、心配なんだよ」
ライザ「理解不能です。なぜ、私なんかにそこまで心配されるのでしょうか?」
アレン「なんか、なんて言わないでくれ。君は僕にとって、とても大切な存在なんだ」
ライザ「大切な存在……。理解しました。確かに、私がいないと、外を調べることはできません。食料の回収は生命維持に深く関係しますからね」
アレン「そういうことじゃなくて……」
ライザ「……どういうことでしょう?」
アレン「例えばだけど、もし、君が外を探索できなかったとしても、僕は君を大切だと思ったはずだよ」
ライザ「……理解できません」
アレン「はは。そっか。まあ、一種の愛情とでも思っていてくれ」
ライザ「……愛、ですか。そんなものは、脳内物質が見せる、幻想です。愛なんてものは存在しません」
アレン「愛は、脳内物質が見せる、幻想か……。でも、脳内物質による反応ということなら、存在するんじゃないか?」
ライザ「脳内物質が存在し、その作用によるものなので、存在するということですか?」
アレン「そうそう。そういうこと」
ライザ「……アンドロイドは、脳内物質はでません。ですので、少なくても私には愛というものは存在しません」
アレン「寂しいことを言わないでくれよ。でも、まあ、君が僕のことを愛してくれなかったとしても、僕は君のことを愛してるよ」
ライザ「アンドロイドに対して、そのような感情を抱くのは異常かと」
アレン「おいおい。人のことを変態みたいに言うなよ」
ライザ「ですが……」
アレン「それより、食料の方はどうだったんだい? 何か見つけることはできた?」
ライザ「はい。色々と確保に成功しました」
アレン「ありがとう。これで、一か月はもちそうだ」
ライザ「あとは、こういうのも回収できました」
アレン「……本?」
ライザ「はい。データ内を検索した結果、本は娯楽になるとありましたので」
アレン「ありがとう。君がいないときに、読ませてもらうよ」
ライザ「……なぜでしょうか? 私が不在でなくても、本は読めると思うのですが」
アレン「君がいるなら、君と会話したいからさ」
ライザ「私と? ですが、私が持つ有意義なデータは全てお渡ししています。私と話すよりも本を読む方が、ずっと有意義だと思います」
アレン「そんなことはないさ。君と話していると楽しいんだ。だから、君と話すことは有意義だよ」
ライザ「……そう言って貰えるなら、なによりです」
アレン「でも、本当に君を見つけることができてよかったよ。もし、見つけたのが、君じゃなかったら、きっと僕はこの生活に耐えられなくなっていただろうね」
ライザ「アレン様には感謝しています。廃棄状態だったところを直していただき、こうして私に存在意義をくれたことに」
アレン「あはは。存在意義って、ちょっと大げさじゃないかな?」
ライザ「そんなことはありません。アレン様に尽くすことが私の全てです。それがはあせないなら、私は存在する意味はないんです。存在することは許されません」
アレン「ライザ、そんなことはないよ」
ライザ「……どういうことでしょう?」
アレン「例え、この後、僕が死んだとして……僕がいなかったとしても、君は存在してもいいんだ」
ライザ「存在意義がないなら、消えるべきだと思います」
アレン「存在意義なんて、生きていれば、見つかるよ」
ライザ「……矛盾したようなものいいですね」
アレン「まあ、あんまり深く考えないで欲しいってことだよ」
ライザ「……わかりました」
場面転換。
ドアが開き、アレンが部屋に入って来る。
アレン「おやよう、ライザ」
ライザ「おはようございます。……ですが、今はもう14時を過ぎています。おはようというよりは、こんにちは、の方が正しいのではないでしょうか?」
アレン「別にいいんじゃないかな。外に出るわけでもないし、おはようでも、こんにちは、でもさ」
ライザ「アレン様がそういうなら……」
アレン「あ、そうだ。ライザ、そろそろメンテナンスをしようか。連日、遠くまで行ってくれてるからね」
ライザ「ありがとうございます」
場面転換。
カチャカチャと機械を組み立てる音。
アレン「……よし、あとはバッテリーを繋いで終わりだよ」
ライザ「ありがとうございます」
そのとき、部屋が揺れ始める。
アレン「……地震? しかも、結構大きいな」
ドンドンと地震が大きくなっていく。
アレン「うわ、凄い大きいな!」
ライザ「アレン様! ここが崩れそうです! 早く、避難をお願いします!」
アレン「君を残して、行くわけにはいかないさ」
ライザ「いけません! お願いです! 早く避難を!」
アレン「もう少しなんだ! ……よし! 終わった……」
そのとき、巨大な音を立てて、部屋が崩壊し始める。
アレン「ライザ!」
ライザ「アレン様!」
場面転換。
部屋が静まり返っている。
ライザ「……再起動完了しました。……アレン様は?」
アレン「ぐふっ! ……ライザ、無事だな?」
ライザ「アレン様!」
アレン「はあ、はあ、はあ……。よかった」
ライザ「……どうして、私を庇ったのですか? 私なんて放っておいて、逃げればこんなことには……」
アレン「言ったよね? 君は僕にとって、大切な存在だって。だから、どうしても置いてはいけなかった」
ライザ「……アレン様」
アレン「ライザ。僕から、最後のお願いがある」
ライザ「アレン様! アレン様!」
ピッピッピと設定ボタンを押す音。
アレン「これで……よし。これで……君は自分の意思で、起動停止することはできなくなった」
ライザ「嫌です! お願いです! アレン様と一緒に、消えさせてください!」
アレン「……ライザ、愛しているよ。……生きて……くれ」
ライザ「アレン様! アレン様―!」
場面転換。
ライザが荒野を歩いている。
ピタリと立ち止まると、機械音が響く。
ライザ「大気解析。……ヨウ素、2030ペタベクレル。セシウム、121ペタベクレル。ストロンチウム、12ペタベクレル。プルトニウム、0.03ペタベクレル……。依然、安全水準を大幅にオーバー。人が住める環境ではありません」
ライザ(N)「アレン様は言っていました。生きていれば、存在意義を見つけることができると。今はまだ、見つけられていませんが、きっと見つけてみせます。それがアレン様の望みなのだから」
終わり。
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