マラソン大会の決戦

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブコメ

■キャスト
岬(みさき)
勝巳(かつみ)
さやか
教師

■台本

学校の教室。

教師「いい? 来週にマラソン大会があるからね。みんな、しっかり準備するように」

ええーというブーイングが巻き起こる。

教師「そうそう。今年は創立50周年記念大会だからね。いつも8キロだけど……」

岬「ふふふふ。勝巳。ようやく貴様との決着をつけるときがきたな」

勝巳「ふん。それはこっちの台詞だ、岬。5分くらい差をつけて勝ってやるぜ」

岬「お、言ったな」

勝巳「ほえ面かくなよ」

さやか「ちょっと、二人とも。先生の話聞かないと。怒られちゃうよ」

岬「お、おう」

勝巳「わかってるって」

岬(N)「俺と勝巳との勝敗は1勝1敗」

勝巳(N)「つまり、今年の勝負で決着する」

岬(N)「だが、それ以上に……」

勝巳(N)「負けられない理由がある」

場面転換。

グラウンド。

生徒たちが大勢集まっている。

岬「いい天気だな」

勝巳「ああ。まさに決着をつけるにふさわしい日だ」

そこにさやかがやってくる。

さやか「晴れてよかったねー」

岬「ああ」

勝巳「なあ、さやか」

さやか「ん?」

岬「俺達の戦い……」

勝巳「ちゃんと見ててくれよな」

さやか「あははは。もう、二人ともガチ過ぎだよ。マラソンは、自分との戦いだぞ」

岬「……そうだな」

勝巳「わ、わかってるさ」

教師「はーい。男子、そろそろスタートだからこっち集まってー」

さやか「あ、先生が呼んでるよ」

岬「よし、行くか」

勝巳「ああ」

さやか「二人とも頑張ってね」

勝巳「さやかもな」

岬と勝巳が歩き出す。

岬「……絶対に勝つ」

勝巳「それは俺のセリフだ」

場面転換。

教師「よーい、スタート!」

パンとピストルの音が響く。

同時に、男子生徒たちが走り出す。

岬「はああああ!」

勝巳「うおおお!」

岬と勝巳がトップに躍り出る。

さやかの声が遠くから聞こえる。

さやか「ええー! ちょっと、二人とも飛ばし過ぎだよ!」

岬(N)「いや、大丈夫だ」

勝巳(N)「ペース配分なら、しっかり考慮している」

岬(N)「この日の為に、練習を重ねて体力をつけてきた」

勝巳(N)「8キロを走り切る体力をな」

場面転換。

岬と勝巳が並んで走っている。

岬「は、は、は、」

勝巳「ふ、ふ、ふ」

岬(N)「体が軽い」

勝巳(N)「いい調子だ」

岬「は、は、は、」

勝巳「ふ、ふ、ふ」

岬(N)「思えば、いつも勝巳と競ってるな」

勝巳(N)「俺と岬で競って、そして……さやかがそれを見ていた」

回想。

グラウンド。

勝巳「止め止め。逆上がりなんて無理」

岬「大体、逆上がりなんて、なんの役にも立たないし」

さやか「えー。せっかく練習してるんだから、もう少しがんばろーよ」

岬「めんどい」

勝巳「疲れた」

さやか「じゃあ、先に逆上がりできるようになった方に、チューのプレゼントする」

岬「うおおおおお!」

勝巳「はああああ!」

場面転換。

グラウンド。

岬「ほっ!」

勝巳「ていっ!」

二人が逆上がりする。

さやか「すごいすごい! 二人とも逆上がりできたじゃない!」

岬「……」

勝巳「……」

さやか「これで、次の授業もばっちりだね」

岬「な、なあ、さやか」

さやか「なに?」

勝巳「……チューのプレゼントは?」

さやか「二人とも同時だったから、なし」

岬「ええー! そんなー」

勝巳「嘘だろー!」

さやか「えへへへ」

場面転換。

岬、勝巳、さやかの3人で歩いている。

さやか「ずっとこのままがいいのにね」

岬「なにがだ?」

さやか「ほら、私たち、もうすぐ高校生でしょ? そしたら、こうやって3人でいることって少なくなるのかなーって」

勝巳「そんなことないだろ」

岬「そうそう。3人とも一緒の高校なんだし」

さやか「うん。そうだよね! ずっと3人、一緒だよね!」

場面転換。

岬と勝巳が並んで歩いている。

勝巳「なあ、岬」

岬「ん?」

勝巳「もうすぐ卒業だな」

岬「……ああ」

勝巳「さすがに大学で3人一緒っていうわけにもいかないだろ?」

岬「……そうだな。全員、バラバラの大学だからな」

勝巳「だからさ、卒業のときにさやかに告白しないか?」

岬「……意味ないって。あいつは断られた方のことを気にするからな。きっと、どっちも選ばない。というより、あいつにそんな負担はかけたくない」

勝巳「だから、告白するのは一人だけにしよう」

岬「……どういうことだ?」

勝巳「勝負で決めよう。勝った方がさやかに告白できる」

岬「……乗った!」

回想終わり。

岬と勝巳が並んで走っている。

岬「は、は、は、」

勝巳「ふ、ふ、ふ」

岬(N)「もうすぐ、8キロ……」

勝巳(N)「ゴール間近。長かったような、短かったような……」

岬(N)「勝巳とさやかとの3人でいるのは楽しかった」

勝巳(N)「けど、いつまでも続くわけがない。……だから」

岬(N)「さやかだけでも」

勝巳(N)「手に入れてみせる!」

岬「はああああああ!」

勝巳「うおおおおおお!」

岬と勝巳がラストスパートをかける。

岬(N)「ありったけを全部!」

勝巳(N)「この後、倒れたっていい!」

岬(N)「限界の……」

勝巳(N)「さらに先へ!」

岬「はああああああ!」

勝巳「うおおおおおお!」

岬と勝巳が全力で走る。

そして――。

岬「うおおー!」

勝巳「ゴーール!」

倒れこむ二人。

岬「はあ、はあ、はあ……。どっちが先だ?」

勝巳「はあ、はあ、はあ……。先生に、聞こうぜ」

教師がやってくる。

教師「……あんたたち」

岬「せ、先生……」

勝巳「どっちが勝っ……」

教師「なにやってんの?」

岬「え?」

勝巳「いや、ゴール……」

教師「今回は10キロって言ったよね?」

岬「……」

勝巳「……」

岬・勝巳「えええええっー!」

岬(N)「結局、俺達はこの後……」

勝巳(N)「リタイアした」

終わり。

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