【声劇台本】開店初日

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■概要
主要人数:1人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
紀行(のりゆき)

■台本

紀行(N)「ふっふっふっふ。ついにこの日がやってきた。俺の人生が変わる日。……俺の店のオープン日だ!」

紀行(N)「思えば、大学を卒業して、初めて就職した初出勤の日に、社長の顔面を、全体重を乗せたコークスクリューをぶちかましてから、早10年か……」

紀行(N)「考えてみれば、あの日、会社をクビになってから、転落人生だったんだよな……。まあ、社長の顔を殴ったくらいで、クビにしてくるような度量の小さい会社は、こっちから願い下げだけどな」

紀行(N)「そうそう。それで、仕事がなくなったから、世間で流行りのニートになるって言ったら、親父がブチ切れたんだったよなー。そのあと、一週間くらい、生死の狭間をさまよったんだっけ。あのときが初めてだったんだよな、恐怖で涙を流したのは」

紀行(N)「で、退院したら、そのまま勘当されて、無一文で放り出されてさ。……いや、今考えたら、勘当するんだったら半殺しにするプロセス、必要だったか? いいじゃん、そのまま追い出せばさ。まあ、今となれば、いい思い出だけどな」

紀行(N)「そのあとは、自販機の下のお金を拾ったり、庭で買ってる犬から、エサを少しわけてもらったりして、日々を食いつないだんだよな。いやー、それにしても、意外とドックフードって美味しいことにはビックリしたぜ」

紀行(N)「そして、立ち直るきっかけとしては、あれを忘れてはいけない。なぜか、俺を自分の孫だと思って、ご飯を食べさせてくれるおばあちゃんのところに、いかついおっさんが来て、それを撃退したこと。あいつら、なんていったっけなぁ? あ、そうだ地上げ屋だ」

紀行(N)「で、地上げ屋を何度かボコボコにしてたら、今度はあいつらの方から、仕事を手伝って欲しいって言われたんだっけ。……それにしても、あれはさすがに引痩せをかいたな。カチコミって言ってたけど、俺一人で100人くらいいる事務所を潰してこい、だもんな。いやー、さすがに死ぬかと思ったぜ」

紀行(N)「そのくせ、潰したら潰したで、ホントにできると思わなかったとか、危険だから潰しておかないといけないとか、ホントふざけんなって感じだ!」

紀行(N)「数ヶ月はやってくる奴らを撃退してたけど、さすがに面倒くさくなって、泳いで中国まで行ったんだよな。そして、その山奥で、師匠に出会った」

紀行(N)「いや、ホント、上には上がいるもんだよ。もしかしたら、師匠なら、親父に勝てるかもしれないな。とにかく、俺は師匠に弟子入りをした」

紀行(N)「なにより嬉しかったのは、飯が食べれたこと。あんまり美味しいとは言えなかったけど、人間らしい食事ができたんだから、文句は言えないよな」

紀行(N)「師匠から免許皆伝って言われて、追い出されて、ほとぼりが冷めただろと思って帰国したんだよな。泳いで」

紀行(N)「戻ってきた俺は、今度はまともに働こうと思って、数百社を受けて全滅。まあ、よくわからんが、世間では就職氷河期とか言われてるから、これが当たり前なんだろう」

紀行(N)「そして、俺は考えた。会社が俺を雇ってくれいないなら、俺が会社をやればいいって。いやー、自分の天才ぶりに、震えちゃうね。コロンブスの卵っていうんだっけ? こういうの」

紀行(N)「とにかく、何か商売をやろうと思って、なにをするかなって悩み始めた。何かの本で、会社をやるなら、自分のスキルを活かした方がいいって書いてあったのを見たんだ」

紀行(N)「俺が持ってるスキルといえば……そう、師匠のところで修行した武術がある。だけど、武術を活かしたビジネスって言ってもなかなか思いつかなかった。そこで俺はさらに発想を転換させる。俺は中国で修行をした、つまり、中国の本場を知っている。中国が本場と言えば、そう! ラーメンだ!」

紀行(N)「よく、脱サラするときに話にあがるのも、ラーメン屋だ。だから、俺はラーメン屋をやることにした。けど、今まで作ったこともないのに、ラーメン屋をやるほど、俺は無謀じゃない。ちゃんと修行をしたぜ」

紀行(N)「何とか俺は、ラーメンを作る生産工場へ潜り込む。そこで俺は、インスタントラーメン作りのイロハを学んだ」

紀行(N)「インスタントラーメンを完璧に作れるようになるまで、2年かかったが、そのおかげで工場長と仲良くなれた。工場長の口利きで、ラーメンを安く仕入れることができるようになった」

紀行(N)「となれば後は、店舗の場所だ。どこかいい場所がないか、ウロウロしていたら、ちょうどいい廃墟ビルを見つけた。そして、たむろっていた奴らを追い出して、俺は開店の準備に取り掛かった」

紀行(N)「そして、ついにオープンの日を迎えたわけだ。さあ、これから忙しくなるぞ。ふふふふ。店が繁盛すれば、俺も億万長者だ。今まで俺を見下してたやつらを見返すことができる!」

紀行(N)「今日、俺の人生が変わる! いや、変えてみせる!」

紀行(N)「にしても、もう昼の時間は結構過ぎてるのに……」

紀行(N)「誰も来ねえな」

終わり。

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