【声劇台本】最弱で最強の陰陽師


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■概要
主要人数:5人以上
時間:15分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス

■キャスト
山背 蒼(やませ あお)
透真(とうま)
その他

■台本

蒼(N)「最弱の陰陽師。僕は、ずっとそう言われ続けていた」

蒼「落ち着け。大丈夫だ。僕ならやれる」
鬼「ギイイイ」
蒼「隠れても無駄だ。僕の目はどんな妖怪でも見通すことができる」

深呼吸する蒼。

蒼「念巫(ねんふ)を目に集中……開眼! いた!」
鬼「ギガアアアアア」
蒼「鬼よ、あるべき場所へ還れ! 斬!」

パシュという気の抜けた音。

蒼「へ?」
鬼「グガアアアア!」
蒼「うわあああああ!」

場面転換。

老人1「山背蒼。陰陽師認定試験、不合格」
蒼「……はい」

トボトボと歩き出す蒼。

老人1「いい目を持っているのに、勿体ないのう」
老人2「目が良くても、術が使えないんじゃ、陰陽師としては致命的じゃ」
老人1「奴とは真逆じゃな」
老人2「確か、同じ高校だったはずじゃぞ。会うことがあるかものう」
老人1「ま、会ったところで何があるわけでもないがの」

場面転換。
学校のチャイム。

蒼「ヤバいヤバい。遅刻しちゃう」

走っている蒼だが、何か騒がしく人が集まっているのを見つける。

蒼「あれ? なんだろ?」

人ごみのところへ向かう蒼。

蒼「何か、あったんですか?」
幸奈「え? あ、えっと、人が倒れたみたいです。突然」
蒼「……貧血か何か、ですかね?」
幸奈「どうなんでしょう? ただ、最近は同じように倒れる生徒が多いみたいですよ」
蒼「おかしいですね。特に暑いというわけではないのに……」
透真「霊力が座れてる……妖怪の仕業だな」
蒼「え?」
透真「……」

透真が歩き去っていく。

蒼「……あの人」

場面転換。
透真が廊下を歩いている。
そこに蒼がやってくる。

蒼「あの!」
透真「ん? お前は、朝に独り言言ってたやつか。なんのようだ?」
蒼「君って、もしかして陰陽師?」
透真「な、何を言って……」
蒼「僕もそうなんだ。って、試験に通ってないから、まだ陰陽師は名乗れないんだけど」
透真「え? ……お前もか」
蒼「も?」

場面転換。

透真「なるほど。蒼は見ることに関しては優秀だが、術を使うのはからっきしだと?」
蒼「それで、君は……」
透真「透真でいい」
蒼「……透真くんは、強力な術を使えるのに、見ることができないの?」
透真「ああ。いつも、試験じゃ闇雲に撃ってるんだけどな。……ま、当たるわけねえ」
蒼「……強力な術を使える、か。いいなぁ」
透真「俺からしたら、妖怪が見える、蒼の目が羨ましいな」
蒼「普通にしてても、見え過ぎちゃうのが悩みなんだけどね」
透真「それでも、十分、羨ましいって」
蒼「はは。お互い、無いものねだりってわけだね」
透真「そうだな……あっ!」
蒼「どうかしたの?」
透真「蒼。俺と組まないか?」
蒼「え?」
透真「お前が見つけて、俺が倒す。今、学校で噂になってる、妖怪を俺たちで倒すんだ。そうすれば、きっと、あのジジイどもも俺たちを認めてくれるんじゃないか?」
蒼「う、うん! やるだけやってみよう」

場面転換。
ガラガラとドアを開く透真。

透真「どうだ? いるか?」
蒼「ちょっと待ってね。念巫(ねんふ)を目に集中……開眼!」
透真「すげえな。目にそこまで念巫を集められるなんて」
蒼「……目にしか集まられないんだけどね。……って、いた!」
鬼「ギギギ……」
透真「どこだ?」
蒼「ロッカーの上! こっちを狙ってる!」
鬼「グルルル……ガアアア!」
蒼「来た! 透真に向かって真っすぐ来てる!」
透真「はああああ! 斬!」

パキンという鋭い、割れるような甲高い音。

鬼「ギガアアア……」
蒼「すごい! 倒せた」
透真「ホントか? よっしゃー!」

場面転換。
廊下を並んで歩く蒼と透真。

蒼「……これで認めて貰えるかな?」
透真「本物の鬼を倒したんだぜ? そりゃ、認めてくれるだろ」
蒼「……鬼は鬼でも小鬼だけどね」
透真「まあ、もし、信じて貰えなかったら、俺たちが組んで試験受ければいいんじゃねーか?」
蒼「あ、そっか。って、あれ? 誰か倒れてる」

走って駆け寄る蒼と透真。

蒼「あの、大丈夫ですか?」
透真「……霊力が吸われてる。朝の奴と同じ症状だ」
蒼「そんな。鬼は倒したのに」
透真「もう一体、いるのかもしれない。蒼、もう一回、学校内を回るぞ」
蒼「うん」

場面転換。
廊下を並んで歩く蒼と透真。

透真「おかしいな。見つからない」
蒼「教室は全部回ったんだけどね。……もしかしたら、もう学校から立ち去ったとか?」
透真「どうだろうな。もし、立ち去るなら、もうとっくにいなくなってそうだけどな」
蒼「そうだよね。じゃあ、どこに潜んでるんだろ?」

そのとき、悲鳴が聞こえてくる。

蒼「音楽室の方だ!」
透真「行くぞ!」

二人が走り出す。

場面転換。
勢いよくドアを開ける蒼。

蒼「どうしました!?」
幸奈「……あ、あなたは」
蒼「あ、君は……偶然だね」
透真「なんだ、知り合いでもいたのか?」
蒼「あ、いや、知り合いっていうか、朝に会っただけなんだけど」
女子生徒1「急にこの子が倒れたの。さっきまで、なんともなかったのに」
女子生徒2「とにかく、先生を呼んでくる」
透真「待て! まだ、音楽室内にいるはずだ。今、動くのは危険だ」
女生徒3「え? 何を言ってるんですか?」
透真「蒼、見てくれ! 絶対に、音楽室内にいるはずだ」
蒼「うん!」
透真「……どうだ? いるか?」
蒼「ううん。いないよ」
透真「そんなバカな……」
女生徒1「ああ……」

ドサリと倒れる女生徒1。

女生徒2「え? どうしたの?」
透真「……霊力が吸われる」
蒼「どういうこと? 僕はずっと開眼状態で見てたんだ。見逃すはず、ないのに」
幸奈「とにかく、どこかに避難した方がいいんじゃないですか?」
蒼「そうだね。透真くん。まずは2人を逃がそう」
透真「ああ。そうだな。おい、お前。音楽室から出るんだ」
女生徒3「え? で、でも……」
蒼「……お前?」
透真「ん? 蒼、どうした?」
蒼「ねえ、透真くん。今、音楽室内にいるのは、僕たちを抜いて、何人いる?」
透真「ん? ……倒れてるやつらを合わせて、『3人』だけど」
蒼「やっぱり……」
透真「なんだよ?」
蒼「……君、妖怪だったんだね」
幸奈「な、なんですか? 妖怪ってなんのことです?」
蒼「凄いね。ここまではっきりと具現化できるなんて」
幸奈「……な、なんのことですか?」
透真「なあ、蒼。さっきから、誰と話してるんだ?」
幸奈「え?」
蒼「僕の目はハッキリと見え過ぎるから、朝は君が妖怪だって気づかなかったんだ」
幸奈「……」
蒼「だけど、透真くんはそもそも見えてないんだ。つまり、君は妖怪ってことなんだ」
幸奈「あら、残念。陰陽師レベルなら、私のこと、完全に認識できるから今まで気づかれなかったんだけどね。でも、まあ、ここであんたたちを始末すれば何も変わらないわ」
蒼「透真くん!」
透真「わかってる!」
幸奈「グガアアアア!」
透真「斬!」

パリンという甲高い音が響く。

幸奈「ギアアアア……」

パリンと割れる音が響く。

蒼「ふう」
透真「倒せたか?」
蒼「うん」
透真「やっぱ、見えるって大事だな」
蒼「いや、今回は見えなくて助かったよ」
透真「ん? どういうことだ?」
蒼「ううん。こっちの話」

蒼(N)「この後、僕らは二人で組むことで、日本一の陰陽師と呼ばれることになる。一人一人だと、最弱と呼ばれていたのに」

終わり。

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