【声劇台本】ホラーハウス
- 2021.07.25
- ボイスドラマ(10分)
■概要
主要人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
いっちー
もも
将也(まさや)
健太(けんた)
室長(しつちょう)
その他
■台本
賑わっている遊園地。
長蛇の列に並んでいるいっちー。
いっちー(N)「遊園地にある、ホラーハウス。ここの、夏限定のホラーハウスは、本当に怖いということで、とても人気がある。僕もこのホラーハウスのファンで、毎年、必ず通っている。ふふふ。今年はどんなのかな? 凄く楽しみだ」
もも「よお! いっちー! やっぱ、お前も来てたか」
いっちー「ああ、ももくんも初日から来てるんだね」
もも「あったりめーよ。ここのホラーハウスが一年の楽しみだからな」
いっちー「わかるわかる。って、ももくん、横入りはダメだよ。ちゃんと並ばない」
もも「いいじゃん。どうせ、気付かないし」
いっちー「だーめ! ちゃんと並び直して」
もも「……はあ。相変わらず、いっちーは真面目だなぁ……」
場面転換。
室長「今年も、俺たちの季節がやってきた。お客様はここのホラーハウスを楽しみにして来てくれているんだ。このメンバーの中にはいないと思うが、一切、一瞬でも気を抜くなよ。常に最大限のパフォーマンスでお客様を驚かせるんだ! いいな!」
一同「はい!」
室長「ここのホラーハウスの売りは、本気の恐ろしさを提供することだ。どんなものでも、全力で驚かせて、怖がらせる。例え、子供でもだ。トラウマを植え付けるつもりでやれ」
将也「……あのー、室長。ホントに、その、いいんでしょうか? あとで、親から苦情がきたりは……」
室長「馬鹿者! お客様は、うちの、本気の怖さを楽しみに来てると言ってるだろ! つまり、全てをわかってきている。ここに子供を連れてきているということは、それを覚悟した上ということだ。そんな覚悟を決めた者に、子供だからと言って手を抜くなんてことは、返って失礼だ」
将也「も、申し訳ありません!」
室長「わかればいい。よし、それじゃ、30分後にオープンだ。各自、入念に最終チェックをしておけ」
一同「はい!」
場面転換。
将也「……」
健太「なんだ、将也。緊張してるのか?」
将也「健太か……。誘って貰って悪いけど、まさか、ここまでガチだと思わなかったよ。正直、自信、無くなってきた」
健太「大丈夫だって。練習通りやればいいんだって」
将也「わかってるけどさ……」
健太「いいか、将也。こういうときはなりきるんだ。お前は人間じゃない。妖怪だ」
将也「妖怪……」
健太「そうだ。妖怪は人を驚かせるのが仕事……いや、本能だ! いいか。お前は驚かせるためだけに存在してるんだ」
将也「……本能。驚かせるためだけに存在してる……」
健太「ま、今のお前は特殊メイクで、暗がりで見るだけで失神するくらいの出来だ。なりきって、脅かせば、相手のトラウマくらいにはなれるさ」
将也「ありがとう、健太。俺、やれそうな気がする」
健太「おう! お互い、頑張ろうぜ」
場面転換。
将也「おおおお……」
男の客「うわああああ!」
女の客「きゃああああ!」
二人が走り去っていく。
将也「よし! だいぶ慣れて来たぞ」
ダダダダと走る音が近づいてくる。
将也「お、次のお客さんが来たな。よし!」
ドンドン足音が近づいてくる。
将也「おおおおおー!」
健太「ぎゃああああー」
将也「うああああああ!」
健太「あ、ああ、なんだ、将也か。暗がりで見ると、ホントヤバいな」
将也「健太こそ。危うく、トラウマになるところだったよ」
健太「お互い様だ」
将也「それより、お前、なに持ち場離れてるんだよ? 怒られるぞ?」
健太「ああ、そうだ! そんなこと言ってる場合じゃない!」
将也「……なんかあったの?」
健太「出たんだよ!」
将也「なにが?」
健太「妖怪が!」
将也「……そりゃ、ここ、ホラーハウスだからね。他のスタッフさんが……」
健太「いや、そうじゃなくて! 本物だよ、本物!」
将也「本物?」
健太「そうだ。顔に、目が一つしかなかったんだ」
将也「……見間違いじゃない?」
健太「いーや! 絶対、見間違いなんかじゃない! あれは……本物だ! うう……このホラーハウスは呪われてしまったんだ」
将也「とにかく、室長に報告して置こうよ」
健太「そ、そうだな……」
場面転換。
室長「馬鹿者! 勝手に持ち場を離れるとは何事だ!」
健太「ですが、室長。本物ですよ? 本物が出たんです!」
室長「いいか、健太。俺たちの仕事はなんだ?」
健太「……驚かせることです」
室長「そうだ! 俺たちの前に現れた者は誰であろうと、なんであろうと驚かせるだけだ。それが例え、本物でも、だ!」
健太「……室長。俺、間違ってました。俺の前に立ったら、全部お客さんです。お客さんを驚かせるのが、俺の仕事でした」
室長「そうだ! そのことを忘れるなよ!」
健太「はい!」
室長「将也。お前も、その覚悟を持って、持ち場に立って欲しい」
将也「はい! わかりました!」
室長「よし! それじゃ、2人とも持ち場に戻れ」
健太・将也「はい!」
場面転換。
将也「そう……俺は、今、妖怪だ。俺の前に来たものを驚かせる。そのことに集中するだけだ」
徐々に足音が近づいてくる。
将也「よし、次のお客さんだ。全力で驚かせるぞ」
目の前まで足音が来る。
将也「うおおおお……」
もも「ぎゃあああああ!」
将也「うわああああああ!」
場面転換。
いっちーとももが歩いている。
もも「いやー! やっぱり、今年も最高だったなー」
いっちー「うん。すごかったね。すっかり、肝が冷えちゃったよ」
もも「俺さ、怖すぎて、変身解けそうになったもんな」
いっちー「ええ? それ、ヤバいよ!」
もも「大丈夫大丈夫。解けそうになっただけだって」
いっちー「本当? もう、ももくんは、目が百個あるんだから、気を付けないと」
もも「いっちーはいいよな。目が一つしかなくて。隠すの楽そう」
いっちー「そんなことないよ。大きいから隠すの大変だよ」
もも「そりゃ、そっか。……にしても、あそこのホラーハウスはすげーよ。俺たちよりも、怖いんだもんな」
いっちー「そうだよねー。あ、そうだ。また明日も行かない?」
もも「お、いいねー!」
いっちーとももが談笑しながら歩いて行く。
終わり。
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