【声劇台本】上級国民
- 2021.07.29
- ボイスドラマ(10分)
■概要
主要人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
大晴(たいせい)
陽太(ようた)
その他
■台本
大晴(N)「上級国民という言葉を聞いたことがあるだろうか? 高い地位にあり、何かと優遇される人間のことを指す言葉だ。法の下では皆平等、とは言うが、そんなものは単なる理想論だ。上級国民というのは、確かに存在する。そして、それは大人たちの世界だけの話ではないのだ」
場面転換。
大晴が小学生の頃。
ガラガラと教室のドアが開き、大晴が入って来る。
陽太「あはは! ヤバいよな!」
大晴「おはよー」
陽太「でさ、あの突っ込みが最高でさ」
生徒1「うん、うん。あれはウケたよね」
大晴「なになに? なんの話?」
陽太「昨日の王様の椅子の話だよ。大晴は見たか?」
大晴「……いや、見てない」
陽太「なーんだ。じゃあ、いいや」
大晴「ねえ、陽太くん。どんな内容だったの? 教えてよ」
陽太「いいよ、面倒くさい。……それでさ、あのコントだけど」
生徒1「ああ、あのファミレスのやつでしょ? 腹抱えて笑ったよ」
大晴「……」
自分の席に座る大晴。
そこに生徒2がやってくる。
生徒2「ねえ、大晴くん。宿題のノート、提出してくれる?」
大晴「ええ? 提出するの、今日だっけ?」
生徒2「そうだよ」
大晴「やばい。やるの忘れてた。ねえ、ノート、ちょっと見せてくれない?」
生徒2「ええ? やだよ。やっていない人が悪いじゃん」
大晴「そんなー。先生に怒られるー」
生徒2「しょうがないんじゃない? やってない大晴くんが悪いんだからさ」
大晴「……」
場面転換。
帰路を歩く、大晴と陽太と数人の生徒たち。
大晴・陽太・他数人「じゃーんけん、ぽん!」
大晴「あっ!」
陽太「はい、大晴の負け―。じゃあ、あの店までみんなのランドセル持ちな」
大晴「ええー。さっきも持ったじゃん!」
陽太「じゃんけんに負ける大晴が悪い」
生徒1「そうだよ」
陽太「ほらよ!」
大晴「うっ……重い」
大晴と陽太と数人の生徒たちが歩く。
陽太が立ち止まる。
陽太「ああー! ドッキリマンチョコ、入荷してるぞ!」
生徒1「ホントだ!」
大晴「ドッキリマン?」
陽太「なんだよ、大晴、知らないのか? ドッキリマンチョコのシール、今、人気なんだぞ」
生徒1「僕、買おうっと」
陽太「俺も俺も! 大晴は?」
大晴「……僕はいいかな」
陽太「なんだよー。ノリ悪いな」
大晴「……じゃあ、一個だけ」
場面転換。
生徒1「あー、持ってるのばっかりだ。リーダーシール欲しかったのに」
陽太「なかなかリーダーシールは当たらないよな。俺もカスばっかだった」
バリっと袋を開ける大晴。
大晴「……あ、なんか、キラキラしてる」
生徒1「え?」
陽太「あああああー! それ! ゴッドシールじゃん!」
大晴「え? え? ゴッド?」
陽太「すげー、レアカードだよ! 俺、初めて見たよ!」
生徒1「見せて見せて! すげー!」
大晴「そ、そんなにすごいの?」
陽太「ばっか! すげーってもんじゃねーよ! これ10枚限定のシールだよ!」
生徒1「すげーすげー!」
大晴「……へー。そんなに凄いんだ」
場面転換。
ガラガラと教室のドアが開き、大晴が入って来る。
陽太「あはは! ヤバいよな!」
生徒1「うん、うん」
大晴「おはよー」
陽太「おはよう、大晴くん」
大晴「大晴くん……?」
生徒1「おはよう!」
大晴「ねえ、さっき、何の話してたの?」
陽太「後退の小人ってアニメの話だよ」
生徒1「大晴くんは見た?」
大晴「う、ううん。見てない。……どんな内容なの?」
陽太「えっとな、すごく強い小人がいる世界の話で……」
場面転換。
学校のチャイムが鳴る。
生徒2が大晴のところにやって来る。
生徒2「ねえ、大晴くん。昨日の宿題のノート持ってきた? 先生のところに持っていかないとならないから、出して」
大晴「うん」
ガサガサとカバンを漁る大晴。
大晴「あれ? ない? なんで? ……あー! 机の上に忘れて来たんだ!」
生徒2「ええ? ないの? 先生に怒られるよ?」
大晴「うう……どうしよう」
生徒2「ねえ、僕のノート見せてあげようか?」
大晴「え? ホント?」
生徒2「その代わり、大晴くんが当てたって、ゴッドシール、見せてくれない?」
場面転換。
場面転換。
帰路を歩く、大晴と陽太と数人の生徒たち。
大晴「ね、ねえ。やっぱり、自分のカバンは自分で持つよ」
陽太「いいって、いいって。大晴くんはゴッド持ちだからな。神みたいなもんだよ」
生徒1「そうだよ、そうだよ! 神様はカバン持っちゃダメだよ」
大晴「……えへへ」
場面転換。
給食を食べている大晴。
そこに陽太がやってくる。
陽太「大晴くん、フライドチキン好きだったよな? 俺の一個やるよ」
大晴「ええ? いいの?」
陽太「ああ、食べてくれ」
生徒1「僕のもあげるよ!」
大晴「えへへ……ありがとう」
場面転換。
生徒1「ねえ、大晴くん!」
場面転換。
陽太「大晴くん」
場面転換。
生徒2「大晴くん!」
場面転換。
ガラガラと教室のドアが開き、大晴が入って来る。
陽太「うわー。お前、早いな」
大晴「おはよー」
生徒1「あのドラゴン、超強いよ」
大晴「……おはよー」
陽太「どこにいるんだ?」
生徒1「タートスの村の左上の森の中」
陽太「あー。あそこかぁ」
大晴「ね、ねえ。何の話?」
陽太「ん? ああ、ポケットドラゴンってゲーム。今、すげー流行ってんだよ。な?」
生徒1「うん! すごい面白いよね!」
陽太「大晴、持ってるか?」
大晴「う、ううん。持ってない……」
陽太「じゃあ、いいや。……でさー!」
大晴「……」
場面転換。
大人になった大晴のナレーション。
大晴(N)「小学校での、カースト制度はちょっとしたことで上がり、上級国民になれる反面、何かのきっかけで一気に落ちる可能性がある。俺は小学校の頃の体験で悟った。世の中は本当に世知辛いと」
終わり。
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