【声劇台本】日記
- 2021.09.07
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:2人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
拓也(たくや)
亮太(りょうた)
■台本
昼休み。教室内はざわざわと騒がしい。
拓也「……」
亮太「……だと考えたら、ノートの方がいいよな? って、聞いてるのか、拓也」
拓也「ん? すまん、なんだっけ?」
亮太「パソコン買うなら、デスクトップかノートかって話」
拓也「何に使うかによるんじゃないか?」
亮太「だーかーら! 小説書くために使うんだって!」
拓也「あれ? 亮太、小説書いてんの?」
亮太「なるほど。お前が最初から全く、俺の話を聞いてなかったってことがよーくわかった」
拓也「ごめんごめん。マジで。今度はちゃんと聞くから。で?」
亮太「はあ……。いやさ、今、家にパソコンがないから、小説を手書きで書いてんだよ。しかも原稿用紙もないから、日記帳に」
拓也「日記帳って、またメルヘンチックだな。お前、日記なんてつけてたのか?」
亮太「妹のだよ」
拓也「あー、奏(かなで)ちゃんのか。……にしても、いーなー。お前は」
亮太「なにがだ?」
拓也「あんな可愛い妹がいるなんてさ」
亮太「はあ……。いいか、拓也。世界中の妹がいない男は、全員、妹という存在に幻想を抱きすぎだ」
拓也「世界って……。いや、でも、奏ちゃんが可愛いことは確かだろ」
亮太「甘いな、拓也。人間というのは精神も伴った状態で評価されるべきなんだ。見た目なんて、二の次にしたほうがいい」
拓也「そうかぁ? けどさ、奏ちゃんは可愛いし、性格だっていいだろ?」
亮太「わかってない! 本当に、お前はわかってない! あいつは外見もいいが、外面もいいんだ。あれは擬態といってもいいくらいだ。あいつと付き合う男は、正直に言って、詐欺にあうようなものだ」
拓也「実の妹をそこまで言うか?」
亮太「実の妹だからこそだ。間近であんたのを見せられたら女性不振に陥りそうだ」
拓也「そういりゃ、亮太はどんな女の子が好きなんだ?」
亮太「ん? んー。そうだな。やっぱり、現実にはいないくらい心が純粋な子かな」
拓也「現実にいないくらいなのは、現実にはいないんじゃないのか?」
亮太「おお、哲学だな」
拓也「いや、違うって」
亮太「……って、おい! どこまで話を逸らすんだよ! パソコンの話だよ、ぱそこんの!」
拓也「ああ、ごめんごめん。えっと、ディスクトップかノートかって話だよな? で、目的は小説を書くこと、と」
亮太「ああ、そうだ」
拓也「なら、ノートの方が良いんじゃないか? 持ち運べるし、あれば、どこでも書けるだろ」
亮太「そっか……。ノート方がいいか。んー、そっかそっか」
拓也「……お前さ。まさか、ゲームするからディスクトップの方がいい、とか考えてるんじゃないだろうな?」
亮太「ぎくっ!」
拓也「やめとけって。ゲームなんて買ったら、それこそ小説なんて書かなくなるって」
亮太「……うっ! そ、そうだよな……。うん。わかった。今回はノートパソコンにしよう」
拓也「ああ。それがいいと思うぞ」
亮太「あとさ、やっぱネット回線はあった方がいいよな? あ、もちろん、調べものするためだぞ! ゲームじゃない」
拓也「すこぶる怪しいけど、まあいいか。確かにネット環境はあったほうがいいかもな」
亮太「それでさ、拓也にちょっと頼みたいんだけどさ」
拓也「ん? なに?」
亮太「家にさ、前に買ったパソコンの周辺機器が残ってんだけどさ、こいうのって使えるもんなのか?」
拓也「んー。どれくらい前にもよるんじゃないか?」
亮太「大体、3、4年ってとこかな」
拓也「それなら大丈夫じゃないか?」
亮太「で、頼みって言うのがさ、その周辺機器がまだ使えそうか、見て欲しいんだよ」
拓也「ああ、いいよ。じゃあ、今日の学校の帰りにお前ん家によるか」
亮太「すまんな」
場面転換。
ガチャリとドアが開く音。
亮太と拓也が家に入って来る。
亮太「ただいまー……って、誰もいなんだけどな」
拓也「まさか、お前。一人の時もその突っ込みしてたりしてないよな? 結構、痛いぞ」
亮太「……」
拓也「……って、誰もいなって、奏ちゃんは?」
亮太「あいつは最近、部活始めたから帰ってくるのは遅いな」
拓也「そっか……。しゃーない。奏ちゃんに会うのは諦めるか」
亮太「友達としていうけど、あいつは止めた方がいいって」
拓也「やけに止めるんだな。もしかして、俺にお兄さんって呼ばれたくないとかか?」
亮太「それは確かにあるな。ってことで、あいつのことは諦めてくれ」
拓也「ええ……」
亮太「それより、今日の本題に入ろうぜ」
拓也「ああ、周辺機器のことだったな」
亮太「ちょっと持ってくるから、待っててくれ」
拓也「あ、その前に、ごめん、亮太。トイレ貸して」
亮太「ああ、別にいいけど。しょんべん、まき散らすなよ」
拓也「散らすか!」
場面転換。
廊下を歩く拓也。
拓也「えーっと……おお、あったあった。トイレトイ……」
ピタリと立ち止まる拓也。
拓也「ここって奏ちゃんの部屋だよな? 少しドアが開いてるから中が見えるぞ」
ゆっくりと歩み寄り部屋を覗き込む拓也。
拓也「おおー……。奏ちゃんの部屋! すこし興奮するな。ふむ……」
数秒考えたのち、答えを出す拓也。
拓也「少しだけ、ちょっとだけ中に入るだけだ」
がちゃりとドアを開けて入って来る拓也。
拓也「おじゃましーますー。……って、誰もいなんだけどね。……って、おお! あ、あれは!」
走り寄る拓也。
拓也「こ、これは……奏ちゃんの日記! ……少しだけ。ホント少しだけ。10ページ見たら元に戻す」
バッと日記帳を手に取り、中を開く。
拓也「えーと。……今、私には好きな人がいますぅ? え? マジで!? だ、誰だよ!」
ペラペラとノートをめくる拓也。
拓也「えっと、好きな人は、お兄ちゃんの親友。小さい頃からよく遊んでくれて……いつの間にか好きになってた」
深呼吸する拓也。
拓也「これって……俺じゃね? 続きは? えっと、最近は滅多に家に来てくれなくなった。忙しいのはわかるけど、とっても寂しい。私はあの人がいつ来てもいいように、ずっと部屋にいるのに……」
バクバクという心臓音。
拓也「間違いない。俺のことだ。全てが当てはまる。……そっか、奏ちゃんが俺のことを……」
そのとき、ガチャリとドアが開く音。
亮太「ああ、いたいた。こんなとこにいたのかよ」
拓也「うおぅ! ビビった! マジで心臓止まるかと思ったぞ」
亮太「あ、それ!」
拓也「ん? ああ、日記がどうかしたか?」
亮太「どうだった?」
拓也「なにが?」
亮太「妹に読んでもらったけど微妙でさ」
拓也「なにが?」
亮太「それ」
拓也「どれ?」
亮太「はあ、やっぱり女目線の一人称は厳しかったか」
拓也「お前の小説かーい!」
日記帳を床に叩き付ける拓也。
終わり。
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