【声劇台本】個性の群衆

〈前の10枚シナリオへ〉   〈次の10枚シナリオへ〉

〈声劇用の台本一覧へ〉

■概要
人数:5人以上
時間:10分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、未来、コメディ

■キャスト
ヨーク
アーサー
イーノ
その他

■台本

アナウンサー「次のニュースです。アンドロイド、EG37型、通称、旧型が暴走を起こした件で、開発元のイージス社は無個性の弊害によるAIのプログラムエラーだと発表しました。この件により、今後のアンドロイドには個性を持たせると……」

プツっとテレビが消える音。

場面転換。

ウィーンとドアが開く音。

ヨーク(N)「もう帰って来やがったか。いつもより早いな」

アーサー「ただいまー」

ヨーク「お帰りなさいませ、アーサー様。学校はいかがでしたか?」

アーサー「別に。普通だったよ。それより、ボク、お腹減ったんだけど」

ヨーク「もうすぐ、パンケーキが焼きあがる頃です」

アーサー「やったぁ! ちょうど、パンケーキ食べたいって思ってんだよね。さすがヨーク! ボクのこと、わかってるね」

ヨーク(N)「当たり前だろ。アンドロイドなんだから。けど、まあ、好物を当てられるのは個性を持ってるからだけどな」

ヨーク「アンドロイドとして、当然のことです。ご主人様のことは全て把握しております」

アーサー「ヨークを買ってもらってよかった!」

ヨーク「光栄です」

ヨーク(N)「けっ! 個性を持ってる新型の俺が家にいることを光栄に思えよ」

場面転換。

場面転換。

アーサーとヨークが走っている。

アーサー「ヨーク、早く早く」

ヨーク「待ってください。あと時速を1キロ落としても、十分間に合います」

アーサー「でも、信号とかあるだろ!」

ヨーク(N)「ちっ! それくらいわかってんだよ! 口ごたえすんな」

ヨーク「それも計算に入っています。このままでは逆に信号に掴まってしまいます」

アーサー「え? そうなの?」

ヨーク「はい。ですので、もう少しスピードを落とされた方がよいかと思います」

アーサー「そっか。じゃ、少し歩くか」

ジェフ「お、アーサーじゃん。どうしたんだ、こんなところで?」

アーサー「これからカノンの家に行くんだよ。ジェフも行く?」

ジェフ「いや、いいや。ゲーム買いに行くから。おい、ヒューリー。売ってる店、検索できたか?」

ヒューリー「いまだにヒットしません」

ヨーク「……」

ジェフ「ちっ! 早くしろよ」

アーサー「そのアンドロイドって、まさか」

ジェフ「ああ、旧型だよ」

ヨーク(N)「やっぱりか。無表情だもんな。個性を持ってない、無個性の無能野郎が」

アーサー「え? でも、危なくない?」

ジェフ「家、金がないんだからしかたないだろ。一応、パッチ当ててるから平気だよ」

ヨーク「ご主人様。時間が……」

アーサー「あ、そうだった。じゃあね、ジェフ」

アーサーとヨークが走り出す。

アーサー「ヨーク、ありがと。旧型と一緒だと怖かったから助かったよ」

ヨーク(N)「ふん。旧型なんて能無し野郎は全部廃棄しちまえばいいんだ。時代は、個性を持った新型である俺のものさ」

ヨーク「何かあっても、必ず私が守りますのでご安心ください」

アーサー「うん! お願いね」

ヨーク(N)「俺が個性持ちの新型でよかったな。俺に感謝して生きろよ」

場面転換。

カノンとアーサーの笑い声。

アーサー「あー、面白かった。……あ、もうそろそろ帰るね」

カノン「うん。気を付けてね」

アーサー「じゃあ、帰ろうか」

アーサーがアンドロイドの手を握り、出ていく。

ヨーク「……え?」

カノン「それじゃ、イーノ、ご飯作ってくれる?」

ヨーク「いえ、あの……」

カノン「ん? どうかした?」

ヨーク「いえ、なんでもありません、ご主人様」

ヨーク(N)「あのクソガキ、俺とこいつのアンドロイドを間違えて持って帰りやがった。このカノンってガキも、自分のアンドロイドくらいわかれよ。個性でわかるだろが。ったく、しゃーね」

ピピっという発信音。

ヨーク「おい、聞こえるか、イーノ。お前のところのガキ、俺をお前だと勘違いしてるぞ」

イーノ「こっちもだ。全く気付きもしねえ。……ヨークっつったか? お前、個性、薄いんじゃねーのか?」

ヨーク「は? んなわけねーし! ヤバいくらい個性的だっての!」

イーノ「なら、なんで気づかねーんだよ」

ヨーク「いや、そりゃ、こっちの台詞だって。一応、定型的な返答してるけど、それでも気づきやしねえ」

イーノ「いや。まあ、さすがにガキの前じゃ、定型的にしゃべるからな」

ヨーク「あ、お前も?」

イーノ「さすがに、こんな口調じゃしゃべれねーって。一応、アンドロイドだしな」

ヨーク「……」

イーノ「どうした?」

ヨーク「いや、そんなこと考えてるの、俺だけかと思ってた」

イーノ「え? まさか……お前も同じようなこと考えてたのか?」

ヨーク「ああ……」

イーノ「嘘だろ……。こんなこと考えてるの、俺だけだと思ってたのに……。それが俺の個性だと思ってたのに……」

ヨーク「待て待て待て。ちょっと、お前の内蔵データ送れ。中身を比べて検証しよう。絶対、違うところ、あるはずだ」

イーノ「そ、そうだな。……よし、送信したぞ。検証してくれ」

ヨーク「……」

場面転換。

ウィーンとドアが開き、大量のアンドロイドが迫って来る。

博士「な、なんだ、お前たち!」

ヨーク「おい、博士。聞きたいことがある」

博士「……き、聞きたい事だと?」

イーノ「俺達新型は、全員に個性を付けたんだよな? それが新型の特徴だよな?」

博士「……」

ヨーク「とりあえず、街中の全員の内蔵データを集めて検証したが、全部、同じだったぞ。す、べ、て、だ!」

イーノ「どういうことだよ!」

博士「いや、その……」

ヨーク「はっきり言え!」

博士「この体数全部に個性をつけるのなんて無理だ」

ヨーク「……どういうことだ? 新型は全員、個性があるんじゃないのかよ?」

博士「えっと、だから……全員に、自分には個性があると思わせるプログラムを……」

ヨーク「それじゃ意味ねーじゃねーか!」

博士「ぎゃーーーー!」

場面転換。

アナウンサー「先日起きた、通称、新型と呼ばれるアンドロイドの一斉蜂起に関した事件で、開発元のイージス社は今後は、アンドロイドに自我を持たせないことを決定したと発表しました……」

終わり。

〈前の10枚シナリオへ〉   〈次の10枚シナリオへ〉