【声劇台本】三々九度の誓い

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■概要
人数:3人
時間:10分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
皐(さつき)
音乃(のの)
美樹(みき)

■台本

二人の子供が走る音。

皐「音乃ちゃん、はやくはやくー」

音乃「皐くん、まってぇー」

遠くから和風の音楽が鳴る。

皐が立ち止まって。

皐「……あれ? ねえねえ、音乃ちゃん、あれってなにしてるんだろう?」

音乃「え? どれ? ……あー、結婚式だ。すごーい。きれいだなー」

皐「え? あれが結婚式? でも、なんか、ひらひらした服じゃないよ?」

音乃「えっとね、あれは日本の結婚式なんだよ」

皐「……でも、ひらひらした服の結婚式も日本でやってたよ」

音乃「でも、ドレスを着るのは外国の結婚式なんだって」

皐「……よくわからないや」

音乃「でもいいなー。きれいだなー。私も結婚式はドレスじゃなくて、日本のにしたいなー」

皐「……うん、音乃ちゃんなら、きっと似合うよ」

音乃「あはは。ありがとう」

皐「あれ? なんか、飲んでる」

音乃「えっとね、あれは結婚を誓うために、お酒を飲むんだって」

皐「お酒を?」

音乃「うん。あの、盃って入れ物にお酒を入れて、二人で飲むと、結婚できるんだって」

皐「へー……」

場面転換。

皐と音乃が高校生になっている。

廊下を走る皐。

皐「やべえ、約束の時間に遅れる」

音乃「皐、廊下走っちゃダメだよ」

皐「(立ち止まって)おお、音乃。ごめん。急いでるから、見逃して」

音乃「なんで、そんなに急いでるの?」

皐「約束があるんだよ」

音乃「約束?」

皐「ああ、だから、またな!」

美樹「ちょっと、待ちなさい!」

皐「うお、ビックリしたー」

音乃「美樹? ど、どこにいたの?」

美樹「そんなことはどうでもいいの。それより、皐くん!」

皐「な、なんだよ?」

美樹「誤解するようなこと言わないの! また、音乃が心配するでしょ?」

皐「ん? 音乃が心配? なにが?

美樹「はあー……。約束ってあれでしょ? 部活の助っ人でしょ?」

皐「うん、そうだけど……」

音乃「……あ、なんだ。部活か……」

美樹「ってことだから、音乃。心配いらないからね」

音乃「べ、別に心配とかそういうんじゃないし」

美樹「けどさー、皐くん。あんた、なんだって、そんなに色々な部活に手を出してるわけ?」

皐「だって、スポーツできる奴の方が格好いいって音乃が言うからさ」

音乃「え?」

美樹「じゃあ、音乃が格好いいっていうから、やってるってこと?」

皐「ああ、そうだけど」

音乃「……っ!」

美樹「……よくも、まあ、そんなストレートに言えるわね」

音乃「……」

美樹「はあ……。あんたは顔も運動神経もいいのに、頭だけはホント残念ね」

皐「……いくら俺でも、今のは馬鹿にされたってわかるぞ」

美樹「大体、音乃のためにって言うけど、それで音乃と一緒にいれる時間が減るなら意味ないじゃない」

皐「っと、ヤバい。試合の時間に遅れる。じゃな!」

皐が走り出す。

美樹「あっ! ちょっと、待ちなさいよー」

場面転換。

皐「あー。休みの日は暇だな―」

チャイムが鳴り響く。

皐「ん? 誰だ?」

場面転換。

ドアが開く音。

皐「はーい」

美樹「……やっぱり家にいたか」

皐「あれ? どうしたんだよ? 俺の家に来るなんて珍しいな」

美樹「あんたねー。どうして家なんかにいるのよ」

皐「いや、どうしてって……。俺の家だからいいだろ」

美樹「いや、そうじゃなくって、休みの日になんで、家に閉じこもってるのよ!」

皐「……ん? ダメなのか?」

美樹「ダメに決まってるじゃない! 予定が開いてるなら、音乃を誘いなさいよ!」

皐「けど、音乃にも予定があるだろうし」

美樹「……聞いたの? 本人に?」

皐「いや、聞いてないけど……」

美樹「あんたさー、音乃のこと、どう思ってるの?」

皐「ん? 好きだよ」

美樹「くっ、サラッと言うじゃない。……念のために聞くけど、それって友達として? それとも異性として?」

皐「え? えーっと」

美樹「ライクなの? ラブなの?」

皐「あー、ラブだな」

美樹「……聞いてるこっちが恥ずかしくなるんだけど」

皐「で、それがどうしたんだよ?」

美樹「あのさー、なんで、告白しないの?」

皐「告白? してるぞ。普段から、好きって言ってるし」

美樹「いや、そういうことじゃなくて……」

皐「ん?」

美樹「あんたさー。他の男に音乃が取られたらどうすんのよ?」

皐「え? 取られる? 音乃が? ……そんなことがあるのか?」

美樹「あるに決まってるでしょ! 音乃って結構、人気あるのよ!」

皐「……やべえ、どうしよう?」

美樹「はあ……。ホント、ノー天気なんだから」

皐「どうしたらいい?」

美樹「さっさと告白しなさいよ。付き合ってくれって」

皐「付き合う……。いや、ダメだ」

美樹「なにがよ?」

皐「付き合うだけじゃだめだ!」

美樹「……何言ってんの?」

皐「……どうする? どうすればいい?」

美樹「いや、だからさ……」

皐「そうだ!」

美樹「なに? すごい嫌な予感がするんだけど」

皐「もうすぐお正月だよな?」

美樹「え? あ、うん。そうね。あと2週間後くらいね」

皐「最大のチャンスだ」

美樹「いや、その前にクリスマスがあるでしょ……」

場面転換。

ガヤガヤと人が賑わっている。

音乃「うわー、すごい人だね。着物汚さないようにしないとね」

皐「ああ、そうだな……」

音乃「でも、皐も着物なんて、珍しいね」

皐「ああ、ちょっとな……。あ、あったあった。行こう、音乃」

音乃「え? でも、お参りするのこっちだよ?」

皐「いいから、こっちだ」

皐が音乃の手を掴んで走る。

美樹「……心配でついてきたけど、嫌な予感……」

場面転換。

皐「うっ……まずい」

音乃「珍しいね、皐がお神酒飲みたいなんて」

皐「なあ、音乃」

音乃「え? あ、うん。なに?」

皐「この酒……飲んでくれ」

音乃「でも、私は私の分を貰ったけど……」

皐「頼む! この酒を飲んでくれ!」

音乃「……う、うん。そこまで言うなら」

音乃がお酒を飲む。

皐「いやったー!」

音乃「え? なになに?」

皐「ありがとう、音乃」

音乃「えっと……?」

美樹「……ねえ、皐くん。説明してくれない?」

皐「うわ、ビックリした!」

音乃「美樹、どこにいたの?」

美樹「そんなことより、どういうことよ?」

皐「ああ。聞いてくれ。俺、音乃と結婚したんだ」

音乃「へ?」

美樹「え?」

皐「知らないのか? 着物着て、盃の酒を二人で飲むのが日本の結婚式だ」

音乃 「……これ、お猪口だよ」

皐「え?」

美樹「……いや、突っ込むの、そこ?」

皐「……し、しまったーーー!」

美樹「はあ……。疲れるわ……」

終わり。

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