【声劇台本】ある日のバレンタインデー
- 2022.01.17
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
光喜(こうき)
湊(みなと)
蒼真(そうま)
春(はる)
■台本
光喜が歩いている。
そこに、湊がやってくる。
光喜「……うう。やっぱりヤバいかな」
湊「よお、光喜! おはよー」
光喜「うわあああ! 湊、お前、ビックリさせるなよ!」
湊「あん? 普通に声かけただけじゃねーか。ビビり過ぎだっての」
光喜「……」
湊「いやー。今日はあれだな。バレンタインデーだな」
光喜「そ、そうだな」
湊「この時期になると、モテねー、男はつれーよな。いっそ、バレンタインデーなんて、無くなっちまえばいいのに」
光喜「そうだよな。大体、チョコが貰えたからってなんだってんだよ。チョコで男の価値が決まるもんじゃないよな」
湊「そうだよなー。知ってるか? 女がチョコを男に渡すのって、日本だけなんだってよ。ったく、チョコレート屋の戦略にまんまとひっかかってんじゃねーぞ」
そこに颯真と春がやってくる。
春「光喜、湊、おはよう」
蒼真「んだよ、朝っぱらから男二人で登校なんてよ。モテねー男の典型だぞ」
湊「蒼真、お前、人のこと言えんのかよ。そっちだって春と一緒じゃねーか」
春「ははは。蒼真ってさー、昨日から、すごく気合入ってるんだよ。今年こそ、チョコをもらうぞーって。髪もジェルなんかつけちゃってさ」
蒼真「おまっ! 春! そういうことバラすなよ!」
湊「いやいや。蒼真。お前、チョコ貰うために、今日から髪型変えても遅いだろ。せめて一週間前から動けって」
蒼真「うっ! うるせーな」
春「はー。今年も母さんから一個かなぁ。湊はどう?」
湊「俺なんか、かーちゃんからも貰えねーよ」
蒼真「おい、光喜、なに暗い顔してんだよ。お前も0だから、絶望してんのか?」
光喜「別に。0って決めつけんなよ」
蒼真「なに? お前、貰えると思ってんの? 無理無理! 鏡見ろって」
湊「だから、お前も人のこと言えんのかって」
蒼真「いーや、今年の俺は違うね。絶対、最低2個は貰えるね」
湊「どこからそんな自信が出てくるんだよ。アテでもあんのか?」
蒼真「いや、ねーけど、今年はなんか、モテてる感じがするんだよ。女子とけっこー話すこと多いし」
湊「お前、それ、去年も言ってたぞ」
蒼真「よーし、じゃあ、掛けをしようぜ。チョコを一番多くもらった奴に、全員、1000円を奢るってどうだ?」
湊「ああ? 1000円もかよ? それに、そんなの春が勝つにきまってるじゃねーか」
蒼真「いやいや、かーちゃんからの一個はノーカンだろ」
春「それじゃ、みんな引き分けで終わるんじゃない?」
蒼真「だーかーら! 俺は絶対、貰えるっつーの!」
湊「はいはい。けど、みんからってことは買った奴は3000円か。……ガチャ回せんな」
春「あー、今回の10連、最高レア確定でしょ? 引きたいな―」
光喜「っ!?」
湊「ん? どうした、光喜?」
光喜「あー、いやーなんでもない」
場面転換。
学校の玄関。
蒼真「じゃじゃーん! さあ、結果発表の時間がやってまいりました。下駄箱のオープンです!」
湊「いや、下駄箱に入ってるとは限らねーだろ。教室の机の中とかもあるし」
蒼真「ちっちっち。教室で堂々と渡してくる女子がいると思うか? しかも、俺たちに、だ。俺達にチョコを渡したなんて言ったら、周りにバカにされるだろ。となったら、チャンスは下駄箱しかない。ここなら机と違って入れるときに誰に入れたかとか誤魔化せるからな」
湊「それ、自分で言ってて悲しくならないか?」
ガパと下駄箱を開く湊。
湊「……」
蒼真「はーい! 湊は0!」
湊「だから、最初から0って言ってただろ」
蒼真「次、春」
春「入ってるわけないと思うよ」
ガパと下駄箱を開く春。
春「ほらね」
蒼真「よーし! それじゃ、最後は、真打、俺の結果発表だ! 刮目して見よ!」
湊「光喜もまだだろ」
蒼真「いや、光喜は見るまでもなく、0だろ。いくぞーーー! オープーン!」
勢いよく下駄箱を開く蒼真。
蒼真「……」
湊「楽しかったか? さ、みんな行こうぜ」
光喜「……」
湊「ん? どうした、光喜」
春「……あーーーー!」
蒼真「なんだよ、春」
春「は、は、は、入ってる」
蒼真「なにがだよ?」
春「光喜の下駄箱にチョコが入ってるー!」
蒼真「な、なんだと!」
湊「マジか! 見せろ、光喜」
光喜「あっ!」
湊「おおおー。本物だ」
蒼真「そ、そんな……バカな……」
春「ねえ、誰から? 誰から?」
湊「んー。見たところ、何も書いてねーな」
蒼真「う、嘘だ……」
春「ただ、入れるっていうのもおかしくない? 開けてみれば? 中になんか入ってるかもよ」
湊「そうだな」
光喜「ちょ! ちょっと待てって!」
蒼真「そ、そんなわけない……」
光喜「俺が貰ったんだから、お前が開けんなよ」
湊「ああ、そうだな。すまんすまん。ほら」
蒼真「俺が光喜に負けた……」
光喜「ん」
ガサガサとチョコをしまう光喜。
湊「おーい! 何しまってんだよ?」
光喜「なにがだよ?」
湊「開けて見ろって」
光喜「あー、いや、こういうのは後で一人で見るから」
春「ええー! 僕たち友達でしょー。こういうのはみんなで見ないと」
光喜「……」
蒼真「俺が光喜より下……」
光喜「いや、でもさ」
春「なーに? なんか、後ろめたいことでもあるの?」
光喜「い、いや、無いって!」
ビリビリと袋を破って開ける光喜。
光喜「ほら」
湊「んー。見たとこ市販のチョコだな」
光喜「どうせ、義理チョコだよ、義理チョコ。そんなに気にすることねーって」
蒼真「……」
春「でも、待って。これ、結構、高いチョコだよ」
湊「マジか?」
春「うん。少なくても、義理で渡すようなものじゃないと思うけど」
湊「増々、誰か気になるな」
光喜「待てよ! 考えて見ろって! いいか、俺になんかチョコを渡したんだぞ」
春「……ん? うん」
光喜「さっき、蒼真も言ってたけど、これを俺の下駄箱に入れるって、相当勇気が必要だと思うんだ。……で、あて名がないってことは、密かに思ってる、このことを俺に伝える気はないってことだろ」
春「確かに……そうなるね」
光喜「だから、そっとしておいてやりたいんだ。もちろん、あっちから言ってきたら、お前たちにも報告する。それじゃ、ダメか?」
湊「……すまん、光喜。お前とその子のこと、考えてなかった」
春「僕も……。ごめんね、光喜」
光喜「ううん。いいんだ。俺もチョコを貰って舞い上がってた」
湊「よし、それじゃ教室に行こうぜ。ホームルームに遅れちまう」
春「そうだね。……って、蒼真、いつまで放心状態なの? 行くよ!」
蒼真「俺が0で、光喜が1……」
春「ほら、しっかりして」
春、湊、蒼真が歩いて行く。
光喜「言えない……。自分で入れたなんて言えない……」
終わり。
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