【声劇台本】生き人形
- 2022.02.03
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ホラー
■キャスト
拓馬(たくま)
智子(ともこ)
健斗(けんと)
男
■台本
男がテレビ番組で怪談話をしている。
男「するとね、今まで肩くらいまでしかなかった髪が延びてるんですよ。ええ。人形のです。延び続ける人形の髪はついに、腰よりも長くなってしまったんですよ」
観客のキャーという声が響く。
場面転換。
拓馬が走って来る。
そして、玄関のドアを開けて、家に入って来る。
拓馬「ただいまー」
健斗「よお、拓真くん。大きくなったねえ」
拓馬「あ、健斗兄ちゃん! 久しぶり。いつ、日本に戻ってきたの?」
健斗「今日だよ。一か月くらい世話になるから、よろしく」
拓馬「うん! ねえ、外国の話、聞かせてよ」
健斗「ああ、いいよ。そうだ、お土産があるから、それ食べながらにしよう」
拓馬「ホント? やったぁ!」
場面転換。
ガラガラと物置を開ける音。
拓馬「えーっと、スキー板、スキー板っと。どこにしまったかな?」
物置を漁る拓馬。
拓馬「ん? ……うわああああああああ!」
場面転換。
勢いよくドアを開けて、家に入って来る拓馬。
拓馬「うああああああああああ!」
健斗「拓真くん、どうしたの?」
拓馬「物置に……物置に!」
健斗「物置?」
拓馬「なんか変なのが……女の人が」
健斗「女の人……? ああ、人形のことか。ごめんごめん。置く場所が無くて、物置に入れさせてもらったんだよ」
拓馬「人形?」
健斗「そう。お人形。ビックリさせちゃったかな」
拓馬「なんだ。人形かぁ。もう、すげービビったじゃん」
場面転換。
拓馬と智子が歩いている。
智子「へー。そんなにおっきかったんだ?」
拓馬「すげー、ビビったよ。だって、俺よりデカいんだぞ」
智子「等身大の人形って感じかな?」
拓馬「とうしんだい?」
智子「大人の人と同じ大きさってこと」
拓馬「うん。そのくらいおっきかったと思う。それに、なんていうか、なんか生きてるみたいでさー」
智子「へー。リアルなんだ?」
拓馬「あんなの、夜に見たらトラウマだって」
智子「ねえ、私も見てみたい」
拓馬「ええー。あんなの不気味なだけだって」
智子「いいの。だって、そんな大きさの人形なんてめったに見れないじゃない」
拓馬「うーん……」
場面転換。
拓馬と智子が歩いている。
拓馬「ただいまー」
智子「おじゃましますー」
健斗「おお、拓馬くん、お帰り」
拓馬「あれ? 健斗兄ちゃん、髪切ったの?」
健斗「ん? ああ。肩くらいまで長かったからね」
拓馬「でも、随分と短くしたね。寒くないの?」
健斗「まあ、少し、スース―するかな」
智子「ねえ、拓馬。早く人形見に行こうよ」
拓馬「うん。そうだね。じゃあね、健斗兄ちゃん」
健斗「ああ……」
場面転換。
ガラガラと物置のドアを開く。
拓馬「そこの奥にあるはずだよ」
智子「えーっと、あ、あれね」
智子が人形に走り寄る。
智子「へー。確かに、すごいリアルね。生きてるみたい」
拓馬「そうでしょ? ……え? ええ?」
智子「なに? どうしたの?」
拓馬「うわあああああああ!」
拓馬が走り出す。
場面転換。
拓馬「はあ、はあ、はあ!」
智子「ちょっと、拓馬! どういうこと? 説明してよ」
拓馬「髪が……」
智子「髪?」
拓馬「人形の髪が昨日と違うんだ」
智子「え? もしかして、長くなってるの? ……私、聞いたことある。生き人形っていうのがあって、その人形って髪が長くなっていくんだって」
拓馬「……ち、違うよ」
智子「違うの?」
拓馬「髪が……短くなってるんだ!」
智子「え?」
拓馬「昨日は腰くらいまで長かったんだ。でも、今は肩くらいまでしかなかったよ」
智子「……き、きっと見間違いよ」
拓馬「そうかなぁ……」
場面転換。
拓馬と智子が歩いている。
拓馬「……」
智子「……ねえ、拓馬」
拓馬「なに?」
智子「そんなに気になるなら、もう一回、見に行こうよ」
拓馬「もう一回?」
智子「そう。昨日と同じなら、見間違いだよ、きっと」
拓馬「そ、そうだね……」
場面転換。
拓馬「ただいま……」
健斗「おお、お帰り」
智子「……あれ?」
拓馬「どうしたの?」
智子「……」
健斗「じゃあ、俺、出かけるから」
拓馬「うん、行ってらっしゃい……」
健斗が行ってしまう。
智子「ねえ、あの人……」
拓馬「ん? 健斗兄ちゃんがどうかしたの?」
智子「髪、長くなってない?」
拓馬「え? そうかな? 見間違いじゃない?」
智子「そうかな……?」
場面転換。
ガラガラと物置のドアを開ける拓馬。
拓馬「……」
智子「大丈夫よ。絶対、見間違いだって。……ほら。……って、きゃあああああ!」
拓馬「うわあああああああああ!」
二人が走って逃げる。
場面転換。
拓馬「はあ、はあ、はあ」
智子「はあ、はあ、はあ」
拓馬「ね? 言ったとおりでしょ?」
智子「うん。すっごく短くなってた」
拓馬「うう……」
智子「やっぱり、あれは呪いの生き人形なのよ……」
場面転換。
健斗が歩いて来る。
健斗「ふふふふーん」
健斗が物置のドアを開けて、中に入る。
人形のとこで立ち止まる。
健斗「さてと、明日はどれにしようかな……」
パサッという音がする。
健斗「うーん。ちょっと不自然かな? こっちかな?」
パサッという音がする。
健斗「うん。よし、これでいこう」
パチンパチンというボタンを止める音。
拓馬「……健斗兄ちゃん。カツラだったんだ……」
智子「……人形に被せて、確認してたのね」
終わり。
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