【声劇台本】裸と王様

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、童話、コメディ

■キャスト
大臣
王様
兵士
街の人たち(3人)
子供

■台本

大臣「……」

王様「大臣よ。この時間であれば、人の通りも多いであろう?」

大臣「はい。道行く者達は皆、王の姿に目を奪われることでしょう」

王様「ふふふ。そうであろう、そうであろう。特に今回の服は最高傑作だ。注目されること、間違いなしだ」

大臣「もちろんでございます」

王様「よし、では、行くか!」

大臣「あ、申し訳ありません。もう少々お待ちください。現在、準備しておりますので」

王様「準備? なんの準備だ?」

大臣「あー、いえ、その……。兵士たちのです! 王様に付き添う兵を今、城から呼んでおりますので」

王様「……別に、お供なんぞ、いらんのだがなぁ……」

大臣「はあ……」

場面転換。

兵士「すみませーん! 皆さん、ちょっと、手を止めて、注目していただけますでしょうか」

街の人1「ん? なんだいなんだい、兵士さんがこんな町の中で、何をしようってんだい?」

兵士「このあと、すぐに王様がいらっしゃいます」

街の人2「ええ? もうかい? 先月来たばかりじゃないか」

兵士「ええ。ですが、その……。王様のお気に入りの服が上がってきてしまいまして」

街の人3「全く、あの王様は仕方ないな。じゃあ、みんな、いつも通りに頼むな」

街の人たち「はーい」

兵士「ホント、毎度毎度、すいません……」

場面転換。

王様たちが街中を闊歩する。

王様「どうだ、大臣? みんな、私の方を見ているか?」

大臣「ええ。全員、手を止め、足を止め、王のお姿に見惚れております」

王様「ふふふ。そうであろうそうであろう」

街の人1「王様! その服、最高!」

街の人2「王様! 世界一、格好いい!」

街の人3「王様! こっち向いてください!」

王様「ふふふふ! あはははははは! あーっはっはっはっは!」

大臣「……ふう。今回も無事、乗り切れそうだな」

場面転換。

王様「ダメダメダメだ! こんなのは普通だ!」

大臣「ですが、王。十分奇抜なデザインかと……」

王様「ダメダメ! なんていうかな。奇抜だったらいいってわけじゃないんだよ! こう、奇抜の中にある、テーマというか、本質から変わったものがほしいんだよ!」

大臣「……国一番のデザイナーなのですが……」

王様「別に有名でなくても構わん! 無名でも、腕が確かで、くすぶっている者もいる。そういう者にもスポットを当ててやるのだ! とにかく、こう、私の心を熱くするような、そんなデザインの服を持ってくるのだぞ!」

大臣「……わかりました」

場面転換。

大臣「はあ……」

兵士「随分と大きなため息ですね、大臣」

大臣「そりゃ、ため息をつきたくもなるだろう。あんな無茶難題を押し付けられれば」

兵士「あれさえなければ、良い王なのですが」

大臣「あれで暴君なら、既にクーデターを起こしているさ。それに、国民にも助けられている。王の、あれさえなければ、本当に良い国なのだがな……」

兵士「大臣。私に良い案が……」

大臣「なんだ?」

場面転換。

王様「心が汚れている者には見えない布、だと!?」

大臣「はい。山奥に住む、絹を生産する者がつい最近、開発に成功したとの報告を受けました」

王様「面白い! 面白いぞ! そういうのを望んでいたんだ! すぐにその布で、服を作らせろ」

大臣「はっ……」

場面転換。

王様「ふむ。できたとな? よし、さっそく見せてくれ」

大臣「はっ! では、こちらです!」

バサっと布を取る音。

王様「……」

大臣「……」

王様「……」

大臣「あ、あの……王よ。まさか、見えないということはないでしょうな?」

王様「……へ? ああ、もちろんだ! もちろん見えているぞ! いやあ、こりゃすごい! 凄すぎて、言葉を失ってしまったぞ」

大臣「喜んでいただき、光栄です」

王様「よし! では、さっそくこれを着て、町へ出るぞ!」

大臣「はっ!」

スルスルと服を脱ぐ音。

大臣「王! な、なぜ、服を脱ぐのですか?」

王様「なぜって、服の上から服を着るわけにはいくまい?」

大臣「あ、ああ……た、確かにそうですが……」

王様「ふふふ。着心地が楽しみだな」

大臣「ああっ! 王様! なぜ、パンツまでお脱ぎに?」

王様「私は新しい服は全裸で着るタイプなのだ」

大臣「いけません! それだけは! パンツだけは守っていただきたい! 王としての権威のため、何卒! 何卒!」

王様「ふむ……。まあ、そこまで言うのなら……」

大臣「ほっ……」

場面転換。

王様が町を闊歩する。

王様「どうだ、大臣よ。町の者は皆、私を見ているか?」

大臣「はい。ある意味、今までで一番注目されております」

王様「そうだろう、そうだろう! 私も、今までで一番、心が高揚している。この服は、実にいいものだな」

街の人たちのささやく声。

街の人1「うわあ……。ホントに裸だ」

街の人2「言っちゃダメだぞ。下手をすると大臣の首が飛ぶ」

街の人3「しかし、これはなんてほめたらいいのか、わからないな……」

そのとき、子供の声が響き渡る。

子供「あはははは! 王様、裸だ!」

街の人1「っ!?」

大臣「なっ! バカなっ!」

王様「っ!?」

街の人2「坊や。ちょっと、こっちおいで」

子供「ねえ、なんで、王様裸なの?」

街の人2「いいから、早くおいで!」

子供を連れていく街の人2。

大臣「あ、あの……」

王様「(つぶやくように)子供が見えないなんてことはあるのか? この服は心が汚れた者が見えないはず……。っ! まさか、私は騙されたのか?」

大臣「お、王? これはですね……」

王様「(つぶやくように)そうなると、私は今、裸で町を歩いているということなのか……?」

大臣「あ、ああ、あの……」

王様「いいっ!」

大臣「え?」

王様「凄く心が高揚するぞ! これだ! これこそが、私が望んでいたものなのだ!」

大臣「……王?」

王様「大臣! この服を作った者に、また新作を作るように依頼しろ! すぐにだ! いいな!」

大臣「は、はい……」

大臣がつぶやくように。

大臣「ふう、王が変態で命拾いしたな……」

終わり。

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