【声劇台本】夏への決意

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■概要
人数：5人以上
時間：10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
清二（せいじ）
武士（たけし）
その他（女の子5人）

■台本

清二（Ｎ）「夏。それは人を開放的な気分にさせる。ひと夏の恋なんて言葉もあるくらい、人は夏の開放的な雰囲気に飲まれる。……つまり、夏は彼女が作りやすいということだ。俺は今まで彼女ができたことはなかった。でも、今年は……今年こそは彼女を作って見せる。今年の夏に勝負をかけるために俺は努力することを決意したのだった」

場面転換。

店員「ありがとうございました」

清二が本屋から出てくる。

清二「ふっふっふ。ついに。ついに手に入れたぞ！　恋の完全マニュアル！　これにそって頑張れば、この夏は俺のものだ！」

場面転換。

本のページをパラパラとめくる音。

清二「えーっと、なになに？　人というものは一瞬で変われるものではありません。日々の積み重ねによって、変わることができます。つまり、この本を読んだからと言って、明日からあなたがモテるようになるわけではありません。……なるほど。まあ、確かに本を読んだだけでモテるようになるなら、誰も苦労しないよな。……えっと、読んで満足してはいけません。実行こそが人が変わるための唯一の手段なのです。そして、失敗の積み重ねこそが、成功への道なのです、か。うんうん。いいこと書いてあるな。やっぱり、この本を信頼できそうだな。よし、じゃあ、どう実行していけばいいのかな……？」

パラパラとページをめくる。

清二「あ、あったあった。ここからかな？　えーと、その１。質より量を重視すること。手あたり次第、声をかけること……か。よし、やってみるか」

場面転換。

街中。多くの人が行き交っている。

清二「……くっ！　いざ、声をかけるとなると緊張するな。……けど、実行こそが人が変わる唯一の手段！　いけ、突撃だ！」

清二が走り出す。

清二「あ、あの！」

女の子１「ん？　なに？」

清二「え？」

女の子１「……何の用？」

清二「あー、なんのようなんですかね？」

女の子１「はあ？　人のこと、バカにしてんの？」

女の子１が行ってしまう。

清二「しまった。声をかけたのはいいけど、何を話すかを決めてなかった！」

場面転換。

ページをめくる音。

清二「えーっと、なになに？　女の子を褒める際に、体を褒める、か……。よーし！　行くぞ！」

清二が走り出す。

清二「あのー」

女の子２「はい？　なんですか？」

清二「おっぱい、大きいですね」

女の子２「……」

パンと平手打ちを食らう音。

そして、女の子２がスタスタと立ち去っていく。

清二「え？　なんで？　体のこと褒めたのに……。いや、ここで諦めたらダメだ！　失敗を積み重ねての成功だ！　うおおおお！」

清二が走り出す。

清二「あの！」

女の子３「なに？」

清二「えっと、なんか口元がエロいですね」

女の子３「……死ね！」

女の子３が立ち去っていく。

清二「うっ！　結構、精神的に来るものがあるな。い、一旦、この項目は飛ばそう」

場面転換。

ページをめくる音。

清二「えーっと、なになに？　モテるためには体型も大事と考える。短期間で一気にダイエットする。で、その際、タンパク質は取らずに、極力カロリーを減らして、運動をしない……か。うん。これならできそうだな」

場面転換。

学校のチャイムが響く。

清二「ああ……」

武士「おう、お前、最近元気ないな。どうしたんだ？」

清二「今、ダイエットしてるんだよ。夏に向けて」

武士「へー。随分と気合入ってるな」

清二「まあな」

武士「けど、お前。それ、ダイエットっていうかやつれてる感じだぞ」

清二「え？」

武士「すげー不健康そうだし、なんか、体もヒョロヒョロした感じになってんぞ大丈夫なのか？」

清二「平気、平気。本に書いてあったから。これで、夏に、俺はモテモテになるんだ……」

武士「うーん。モテるためには筋肉付けた方がいいんじゃないのか？」

清二「だーかーら、本に書いてあったの！　運動はしないって」

武士「ふーん。まあ、お前がよけりゃ、それでいいけど……」

場面転換。

ページをめくる音。

清二「えーっと、なになに？　次は……服のコーディネートは自分のセンスを信じて自信をもってやる、か。ふむふむ。よし、じゃあ、持ってる服を全部出して、組み合わせてみよう」

場面転換。

街中。

清二がフラフラと歩いている。

女の子４「ふふっ。なにあれ？」

女の子５「過去からタイムスリップでもしてきたんじゃない？」

女の子４「そうだったとしても、ダサくない？」

女の子５「過去の時代でもダサいって言われてそう」

清二がフラフラと歩いている。

清二「なぜだ？　なんか笑われている気がする。それにしても、腹が減り過ぎて目が回りそうだ……。頭も上手く回らない気がする……」

場面転換。

ページをめくる音。

清二「……やった！　ついにやったぞ！　最後のページだ！　くぅ……。ここまで長かった！　本当に長かった。出かける先々で女の子に笑われ、避けられ、苦汁を飲んできたが、ついに最後のページまで来たぞ！　これで、俺の夏は報われる……」

ページをめくる音。

清二「えーっと、なになに？　以上が、モテない人がやってしまいそうな失敗例です。思い当たる部分があれば、絶対に直しましょう。では、実際に、どういう行動を取ればいいか。それは、別冊の、真・恋の完全マニュアルを購入してください」

しばしの沈黙。

清二「ふざけんなーーーー！」

本を破る音。

終わり。

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