ツンデレの寝言

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブコメ

■キャスト
勇樹(ゆうき)
明日佳(あすか)
士郎(しろう)

■台本

教室内。

明日佳「あははは。もー、やめてよぉ」

明日佳が楽しそうに話しているのを見ている勇樹。

勇樹「……」

士郎「よお、勇樹。なーに、明日佳ちゃんのこと、ボーっと見てるんだよ?」

勇樹「馬鹿、違うって」

士郎「可愛いよな、明日佳ちゃん。お前が見とれるのもわかる」

勇樹「だから、違うって」

士郎「小学校から同じ学校だったんだっけ?」

勇樹「ん? まあ、な」

士郎「なるほどなぁ。だからか」

勇樹「なにがだ?」

士郎「明日佳ちゃんがお前にだけ、厳しい理由」

勇樹「え? あいつ、俺にだけ厳しい?」

士郎「……気づいてなかったのかよ。大体、あんな笑顔、お前の前でするか?」

勇樹「……うう。なんでだ? 俺、なんか嫌われるようなことしたか?」

士郎「中学の時までは仲が良かったんだろ?」

勇樹「ああー、まあ、普通に。一緒に帰ったり、時々、一緒に映画見たりしたかな」

士郎「それが今では、文句を言われるときくらいしか、話さないと?」

勇樹「なんでだー!」

頭を抱える勇樹。

士郎「まあ、中学生なんて多感な時期だからな。お前、気づかないうちになんか傷つけるようなこと言ったんだろ?」

勇樹「……そんなことはない。……とは言い切れないのがツライ」

士郎「はあ……。ん? 明日佳ちゃん、こっちに気づいたようだぞ?」

勇樹「え?」

顔を上げる勇樹。

明日佳「べー!」

勇樹「うっ……。なんだよ、俺がなんかしたか?」

士郎「あははは。なんか、可愛いな」

勇樹「ま、まあ、否定はしない」

士郎「いや、待てよ……。もしかしたら逆かもしれんぞ」

勇樹「逆?」

士郎「あれだよ。わざと、お前に強く当たってるってやつだ」

勇樹「……なんで、そんなことするんだよ」

士郎「いわゆるツンデレってやつじゃないか?」

勇樹「……んー。けどさ、仮にだぞ? 仮にあいつがツンデレで、俺に対して今はツンだったとしよう」

士郎「うん」

勇樹「けど、それを知ったとろこで、どうしようもなくないか?」

士郎「そんなことないだろ。デレるのを目指して突っ込んでいけばいいじゃねーか」

勇樹「それが通じるのは、確実だったときの場合だけだろ」

士郎「どういうことだ?」

勇樹「……違ってたらどうするんだよ? あいつがツンデレじゃなくて、単に俺のことを嫌ってるって場合はどうなる?」

士郎「問題になるな。最悪、お前が転校になるか、明日佳ちゃんが学校に来なくなる」

勇樹「だろ? だから、現時点で確かめようもないし、どうすることもできないってわけだ」

士郎「んー。……確認できればいいんだろ?」

勇樹「そうだけど、できねーだろ」

士郎「いや、いいこと思い付いた。耳を貸せ」

勇樹「嫌な予感しかしないな……」

場面転換。

放課後の教室。

廊下から教室を覗き込んでいる勇樹と士郎。

士郎「お、やっぱりいた。明日佳ちゃん、木曜はいつもああして、学校に残って本を読んでるんだよな」

勇樹「……なあ、ホントにやるのか?」

士郎「お前は知りたくないのか? 明日佳ちゃんの気持ち」

勇樹「そりゃ知りたいけどさ……薬使うってどうよ?」

士郎「心配するなって。睡眠薬じゃなくて睡眠導入剤なんだから」

勇樹「……けど、都合よく寝言なんて言うか?」

士郎「まあ、言わなかったら言わなかったで、また試せばいいだろ? とにかく、寝言なら本音を言うと思うんだ。聞ければラッキーって感じでさ、やってみたらどうだ?」

勇樹「うーん……」

士郎「もうすぐ文化祭だ。天国になるのも地獄になるのも、お前次第だぞ?」

勇樹「……行ってくる」

勇樹が教室に入っていく。

勇樹「おう、明日佳。何読んでるんだ?」

明日佳「あんたには関係ないでしょ」

勇樹「まあ、そんなこと言うなって」

明日佳「……何、企んでるの?」

勇樹「うっ! べ、別に?」

明日佳「怪しい……」

勇樹「あのさ、明日佳」

明日佳「なに?」

勇樹「ごめん」

明日佳「……なにが?」

勇樹「あー、いや、俺、お前になんかやっちまったかなって思って」

明日佳「……身に覚えないなら、謝る意味ないんじゃないの?」

勇樹「……まあ、そうだな」

明日佳「そういうとこだと思うよ」

勇樹「……そう言われてもな」

勇樹が机にペットボトルを置く。

明日佳「なに?」

勇樹「クリームソーダ。好きだろ、お前」

明日佳「そういうことじゃなくて。貰う意味が分かんないんだけど」

勇樹「あー、まあ、たまにはいいじゃねーか」

明日佳「怪しいし、キモイ」

勇樹「うっ!」

明日佳「まあ、いいけど」

ふたを開けて飲む明日佳。

明日佳「うん。美味しい」

勇樹「なんか、新発売みたいだぞ、それ」

明日佳「ふーん。ま、ありがと」

勇樹「ああ……」

明日佳「……なに?」

勇樹「いや、こうやって2人だけで話すのって久しぶりだよなって思って」

明日佳「あー、まあ、そうかもね」

勇樹「昔はよく一緒に遊んだもんだけどな」

明日佳「小学生のときの話でしょ、それ」

勇樹「なんで、こんなふうになっちまったんだろうな」

明日佳「……さあね」

沈黙になる2人。

場面転換。

机に突っ伏して寝ている明日佳。

明日佳「すーすー」

勇樹「……明日佳?」

明日佳「……」

勇樹「なあ、明日佳。俺たち、昔みたいに戻れないかな?」

明日佳「……」

勇樹「……俺のこと、どう思ってるんだ?」

明日佳「……」

勇樹「ははっ。都合よく、寝言で本音なんて言うわけねーよな」

明日佳「……ん」

勇樹「明日佳?」

明日佳「勇樹……」

勇樹「……」

明日佳「……私」

勇樹「……」

明日佳「あんたのこと……」

勇樹「(ごくり)……」

明日佳「大……」

勇樹「大……?」

明日佳「……嫌い」

勇樹「……っ!」

明日佳「でも……」

勇樹「(かぶせる様に)おい、士郎! くそ、ダメだったじゃねーか!」

涙ぐみながらズカズカと廊下へ歩いていく勇樹。

勇樹「あー、くそ。こんなことなら、聞かなきゃよかったー!」

士郎「お、おい、何があったんだ!?」

勇樹「畜生! 責任取れー!」

士郎「ちょっと待て、落ち着けって!

勇樹「うがあああああ!」

明日佳が顔を上げる。

明日佳「……馬鹿」

明日佳が口を尖らせて、不満そうな顔をする。

明日佳「そういうところがダメだっていうのよ」

大きくため息を吐く明日佳。

終わり。

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