【フリー台本】スタート地点

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■関連シナリオ
〈心を入れ替えて〉

■概要
人数:2人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
雅人(まさと)
仁志(ひとし)

■台本

本のページをめくる音。

雅人「ああー。なるほど……」

ノックの後にドアが開く音。

仁志「よお、調子はどうだ?」

雅人「あれ? おじさん。どうしたの? なんか、諦めたって言ってなかったっけ?」

仁志「いや、それよりもお前、どうしたんだ?」

雅人「ん? ああ、この本のこと? いや、前にさ、おじさんに好きなことを仕事にすればいいって言われたでしょ?」

仁志「そうだな」

雅人「だから、好きなことを見つけるために、色々と本を読んでみてるんだ」

仁志「えらい!!」

仁志が泣き始める。

仁志「正直、おじさんは、お前は死ぬまでニートじゃないかって諦めてたんだ」

雅人「ははは……。しょうがないよ。俺だって、そう思ってたんだからさ」

仁志「で? 好きなことは見つかりそうか?」

雅人「うん。俺って、ゲームが好きなんだけど、やるだけじゃなくて作るのも面白そうだなって思って」

仁志「へー、いいんじゃないか?」

雅人「それで、プログラミングの本を読んでるんだ」

仁志「うんうん! いいぞ! その心意気は、すごくいい! 成長したな!」

雅人「大げさだよ。まだわからないことが多くて、全然、進まないんだ」

仁志「それでいいんだ。最初は誰だって、わからないところからスタートするもんさ。諦めずに続けることが大事だぞ」

雅人「そうだね。少しずつだけど、毎日、読むようにしてるよ」

仁志がまた泣き始める。

仁志「う、うう……。本当に、本当に成長したな。おじさんは感激で涙が止まらない」

雅人「だから、やめてってば」

仁志「あ、そうだ! お前、パソコン持ってなかっただろ? プログラミングにはパソコンが必須だ。買ってやるぞ」

雅人「ありがとう。でも、いいや」

仁志「……え? なんでだ?」

雅人「だって、まだ勉強を始めたばかりだもん。パソコンはまだ早いよ」

仁志「そ、そうか……。必要になったら、すぐに言えよ。買ってやるから」

雅人「ありがとう」

場面転換。

本のページをめくる音。

雅人「……」

ノック後にドアが開く音。

仁志「よお、今日も勉強頑張ってるみたいだな」

雅人「ああ、おじさん、いらっしゃい」

仁志「なあ、そろそろパソコン欲しいだろ? 勉強初めてから3ヶ月以上経ってるもんな」

雅人「いや、まだ早いよ。ようやく、本の内容がぼんやりとわかるようになったくらいだから」

仁志「……勉強も大切だと思うが、実戦も大事だと思うぞ」

雅人「いや、この本にも準備は大事って描いてるよ」

仁志「準備は大切だ。そこは否定しない。だが、やってみて、初めて気づくことだってあるんだぞ」

雅人「でも、まだ早いよ」

仁志「……こういう話がある。昔々、遥か昔、年も体の大きさも運動能力も同じ男が2人いたんだ」

雅人「何の話?」

仁志「まあ、最後まで聞け。その2人は商人で、あるとき砂漠の果ての黄金郷の噂を聞いたんだ。そこに行けば大金持ちになるっってな」

雅人「うん」

仁志「一人はとりあえず出発することにした。そして、もう一人はしっかり準備しないと砂漠は乗り越えられないと言って、準備を始めたんだ」

雅人「うん」

仁志「そして、十年の月日が経った頃。出発した男は苦労の果て、ようやく黄金郷に辿り着くことができたんだ」

雅人「……もう一人は?」

仁志「もう一人は出発すらしていなかった。ずーっと、準備ばかりしていて、一歩も踏み出していなかったんだ」

雅人「なるほど……」

仁志「この2人の男の話を聞いて、どう思った?」

雅人「やっぱり、準備って必要だよね」

仁志「え?」

雅人「だって、辿り着いた人は10年も苦労したんでしょ? なら、しっかり準備してから行けば、苦労しないで済むかもしれないじゃない」

仁志「……」

雅人「よーし! やる気出て来た! 勉強、もっと頑張るぞー!」

仁志「……ダメだ、こりゃ」

終わり

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