【フリー台本】ミスターパーフェクト

〈前の10枚シナリオへ〉  〈次の10枚シナリオへ〉

〈声劇用の台本一覧へ〉

■概要
人数:2人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
シーザー
ハリス

■台本

ハリス「シーザーくん。世の中に完璧なものが存在すると思うかね?」

シーザー「はい! 先生の計画は完璧……まさにパーフェクトです」

ハリス「ふむ……。そうなのだ。私の作り出すプランは、まさしくパーフェクトなのだ」

シーザー「はい! さすが、ミスターパーフェクトと呼ばれる先生です。一生ついていきます!」

ハリス「ふっふっふ。そうだろうそうだろう」

場面転換。

シーザー「先生。こちらがマネジメントを依頼してきた企業になります」

ドンと書類をテーブルに置く音。

ハリス「ふむ……」

ペラペラとページをめくる音。

ハリス「全部の企業に対して、受けると連絡しておいてくれ」

シーザー「え? ぜ、全部……ですか?」

ハリス「どうした? 不満か?」

シーザー「いえ、その……先生はこれだけの企業を全て立て直せるというのですか?」

ハリス「シーザーくん。私がなんて呼ばれているか、知っているだろう?」

シーザー「ミスターパーフェクトです」

ハリス「そういうことだ。さあ、早く、全部の企業に連絡をするのだ」

シーザー「わかりました!」

場面転換。

ハリス「シーザーくん。この書類を適当に、10社に送っておいてくれ」

シーザー「……これって、事業改善計画書ですよね? 適当な企業でいいんですか?」

ハリス「ああ。依頼が来た順でも、適当に手に取った順でも、どうでもいい。シーザーくんに任せる」

シーザー「い、いいんですか? こういうのは各企業の状況によって、計画を変えるべきじゃないんですか?」

ハリス「長年やっていればわかるんだが、企業の方針の欠点なんて、大体パターンが決まっているのだよ」

シーザー「それなら、やはり企業の状況をしっかり見て、どの企業に、どのパターンが当てはまるか、ちゃんと調べた方が……」

ハリス「シーザーくん。それは理想論だ」

シーザー「は、はあ……」

ハリス「昔は躍起になって、それをしてきたんだけどな。さすがにもう年だ。そう言うのは疲れるのだよ」

シーザー「……疲れる、ですか」

ハリス「とにかく、送っておいてくれ。それと、必ず、送った資料は極秘として、社長のみしか閲覧しないでくれと付け加えておけ」

シーザー「わ、わかりました。……ただ、このプランですが……結構、資金がかかるのではないですか? 企業に寄っては、そもそもこの事業改善計画を実行できない企業もあるのでは……?」

ハリス「おお! なるほどなるほど。シーザー君、君は優秀だな。それでは、これも相手に送付するときに付け加えてくれ。この計画を実行するかしないかは任せる。その代わり、これ以外のプランは出さないと」

シーザー「……」

ハリス「どうした? なにをそんなに心配することがある?」

シーザー「これでは、失敗する企業が出てきます。そうなれば、先生の輝かしい経歴が……ミスターパーフェクトの名が汚れてしまいます」

ハリス「ははは。シーザー君。心配ご無用だ」

シーザー「で、ですが……」

ハリス「シーザー君。うちに依頼してきた企業に提示している条件は覚えているだろう?」

シーザー「は、はい。マネジメントに対して、企業からは先生の名前を出さない……ですよね?」

ハリス「そうだ。その条件がある限り、私はミスターパーフェクトであることは揺るがないのだよ」

シーザー「……?」

場面転換。

シーザー「先生、各企業からの結果になります。……残念ながら、6割の企業は失敗してしまいました」

ハリス「そうか」

シーザー「……え? あの……これで、先生のミスターパーフェクトの名前に傷が付いてしまいました」

ハリス「なぜだね?」

シーザー「……なぜって、6割も失敗したんですよ?」

ハリス「まあ、事業改善なんてそんなものだろう?」

シーザー「ですが、先生が受け持った企業は100パーセント改善させる、それがミスターパーフェクトと呼ばれる所以です」

ハリス「ふっふっふ。シーザー君。事業が改善された企業の名前を、ホームページに記載しておいてくれ」

シーザー「え? 失敗した企業は……?」

ハリス「書く必要はない」

シーザー「し、しかし……」

ハリス「シーザー君。最初に私が企業にたいして出したマネジメントを受ける条件はなんだね?」

シーザー「えっと、先生の名前を企業側からは出さない……あっ!」

ハリス「そういうことだ」

シーザー「ですが、その……100パーセントということで、最後の望みをかけて先生に依頼をした企業もあるのでは?」

ハリス「そんなことは知らないな。私自身は100パーセントとも言っていないし、ミスターパーフェクトの名称だって、周りが勝手に言っているだけだ」

シーザー「……」

場面転換。

シーザー「先生! 失敗した企業の数社から苦情の電話が来ています! 事業改善失敗を世間に公開すると言ってます」

ハリス「……ふむ」

シーザー「やりとしたメールのデータと事業改善計画書のデータも公表すると……」

ハリス「なるほど。その企業にこのファイルを送っておいてくれ」

シーザー「……なんですか、これ?」

ハリス「ふふふ。こういうときのための、切り札……といったところだ」

シーザー「……?」

場面転換。

シーザー「先生。送ったファイルがウィルスで、全てのデータが消えてしまったと苦情の電話が来ています」

ハリス「……その企業と関わった記憶はない。迷惑行為を続けるなら、警察に知らせると言って、切り給え」

シーザー「……」

ハリス「ふふふ。これで、また、ミスターパーフェクトの名前を守れたな」

場面転換。

ハリス「シーザー君。世の中、綺麗ごとでは生き残ってはいけないのだよ」

シーザー「どうか、お体にお気をつけて」

ハリス「……ふう。君のことは高く買っていたのだがな。残念だ」

シーザー「お世話になりました」

場面転換。

電話のコール音。

シーザー「はい……。はい、そうです。そうですか……。先生が刺されて……。いえ、私はもう先生の元からは離れています。はい。もう関わりはありませんので。……はい、はい。失礼します」

電話を切る音。

シーザー「……先生。あなたの望み通り、これでミスターパーフェクトの名前は永遠に守ることができますね」

終わり。

〈前の10枚シナリオへ〉  〈次の10枚シナリオへ〉