【フリー台本】深い森の奥に
- 2022.04.06
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
涼真(りょうま)
桔平(きっぺい)
陽菜乃(ひなの)
女子(×2人)
■台本
昼休みの教室内。
桔平「なあ、今度の連休は何するんだ?」
涼真「んー。別に、予定なんてねーけど。お前は?」
桔平「まあ、俺も特には」
涼真「どっか、遊びに行くか?」
桔平「お前とか? 休みまで一緒は暑苦しーな」
涼真「だよなー」
そこに女子たちの声が聞こえてくる。
陽菜乃「見て見て! この記事。ここ、山奥なんだけど、天然の温泉が出てるんだって」
女子1「へー。でも、こういうところって、高いんじゃない?」
女子2「温泉行きたいけど、安い所がいいなー」
陽菜乃「ふふふ。見て、ここ。天然温泉なんだけど、無料なんだって」
女子1「え? うっそ。無料? なんで?」
陽菜乃「えーっと……元々はレジャー施設だったんだけど、潰れちゃったんだって。で、今でも温泉だけは出てるから、そのまま入れるようになってるんだって」
女子2「それって、放置されてるってことでしょ? 荒れてるんじゃない?」
陽菜乃「なんか、ボランティアの人たちが掃除だけはしてるんだってさ」
女子1「えー、いいじゃん!」
陽菜乃「あー、でも、混浴なんだって」
桔平「っ!」
涼真「っ!」
女子2「あー、混浴かぁ」
女子1「でもでも、温泉いいね。行きたい」
陽菜乃「じゃあ、今度の連休に行こうよ!」
女子2「いいね! 行く行く!」
女子1「私もー!」
桔平「……」
涼真「……」
場面転換。
バスの中。ガタンガタンとバスが揺れる。
涼真「……おい」
桔平「あん?」
涼真「お前、連休は予定なかったんじゃねーのかよ」
桔平「予定ができたんだよ。お前こそ、なんで、バスに乗ってるんだよ?」
涼真「俺も、ちょっと予定ができたんだよ」
桔平「ふーん……」
涼真「……」
桔平「なあ、一時、休戦……いや、手を組まねーか?」
涼真「俺もそれを提案しようと思ってたところだ」
桔平「下手に争って、全部ぶち壊しになったら、意味ねーしな」
涼真「そうだな。……って、あとどのくらい着くんだ?」
桔平「2時間ってとこだな。結構、遠いはずだぜ」
涼真「ふーん。……にしても、このバス、俺達以外、誰も乗ってねーな」
桔平「変に男が乗ってくるより、いいだろ」
涼真「だな。他に男がいたら、陽菜乃に警戒されちまうからな」
桔平「そうそう。下手したら、温泉に入らないで帰っちまう可能性があるからな」
涼真「それは困るな」
桔平「だろ? 他に女の人がいれば尚よしだけど、期待し過ぎるとろくなことねーしな」
涼真「だな。それより、どんな作戦で行く?」
桔平「作戦?」
涼真「ほら、いくら混浴だって言ってもさ、陽菜乃が見るなー、って石とか投げてくるかもしれないだろ?」
桔平「……そんな状況なら石ぐらい平気だけど、下手したら目を潰される可能性もあるかなら。確かに作戦は必要か」
涼真「俺、考えたんだけどさ。後から入ろうとするのはダメだと思うんだ。すぐに気づかれちまうからさ」
桔平「なるほど。先に入っておけば、あっちがやってきた、ってことでそこまでキレられることもないってわけか」
涼真「そうそう。それに、先に入ってれば、隠れることもできるだろ? 万が一、見つかっても、マズいと思って、隠れて出ようとしてたとか言い訳言えるし」
桔平「……お前、天才だな」
場面転換。
山道を歩く桔平と涼真。
涼真「はあ、はあ、はあ……。結構な山道だな」
桔平「ああ。そりゃ、バスには誰も乗ってなかったわけだ」
涼真「ふう……。めっちゃ汗かいた」
桔平「けど、おかげで、ついたときの風呂はめっちゃ気持ちいいと思うぞ」
涼真「だな……。もう少しだ、頑張ろうぜ」桔平「ああ」
場面転換。
風呂に入る音。
桔平「ふう。あー、いい湯だ」
涼真「うん。思ってたより、すげーいいとこだな」
桔平「ただ、まあ……」
涼真「……そうだな」
桔平「サルしかいねえのが悲しいな」
涼真「まあまあ。気長に待とうぜ。もうすぐ陽菜乃たちが来るはずだ」
桔平「そうだな」
場面転換。
桔平「……はあ、はあ、はあ」
涼真「お、おかしいな。あいつら、いつなったら来るんだ?」
桔平「もう暗くなってきたぞ! ここに宿泊施設はないんだから、泊まれないはずだ。どうするんだよ」
涼真「それに、山道は明かりがないからな。そもそも、ここまで辿り着いているかも疑問だ」
桔平「……まさか、遭難したか?」
涼真「……助けに行こう!」
ザバッと風呂から上がる音。
場面転換。
涼真「……まずは携帯で連絡してみよう。つながる可能性は低いけど」
携帯のコール音。
涼真「頼む、出てくれ」
通話が繋がる音。
陽菜乃「もしもし? なに?」
涼真「あ、繋がった! 陽菜乃、大丈夫か?」
陽菜乃「へ? あ、う、うん。大丈夫だけど……どうかしたの?」
涼真「心配したぞ!」
陽菜乃「え? なんで?」
涼真「まあいいや。今どこだ? すぐに迎えに行ってやる」
陽菜乃「迎え? 何言ってんの……? あっ! なに? 私たちに混じろうとしてる? ダメダメ! 今日は女子会なんだから」
桔平「女子会って……。お前ら、今、遭難してるんじゃないのかよ?」
陽菜乃「遭難? さっきから、何の話?」
女子1の声「陽菜乃―。ご飯食べにいこー!」
涼真「へ? ご飯? いや、ホント、お前らどこにいるんだよ?」
陽菜乃「旅館だよ。名前は教えない」
涼真「……え?」
桔平「いやいやいや! 陽菜乃、お前ら、山奥の温泉に行くって言ってたじゃねーかよ!」
陽菜乃「は? いいねー、とは言ってたけど、行くとは言ってないよ」
涼真「は?」
桔平「は?」
陽菜乃「あ、もう行くから、切るよ」
プツっと通話が切れる音。
涼真「……」
桔平「……」
涼真「……帰るか」
桔平「そうだな」
涼真(N)「そして、俺達は、この後遭難したのだった」
終わり。
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