【フリー台本】偉人になる方法

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
哲太(てった)
巧(たくみ)
その他(子供、少年、タレント)

■台本

哲太「……」

テレビを見ている哲太。

タレント「人は誰でも生まれたすぐには立てません。話せません、何もできません。生まれたときから偉人なんて人はいないのです。偉人とは今を頑張り、その努力を続けた人がなれるのです。つまり、努力さえすれば、人は偉人になれます! そして、その努力のやり方を書いた、偉人になる方法、絶賛、発売中です!」

プツっとテレビを消す音。

哲太「……偉人になる方法か。確か、前に買った気が……」

がさがさと本棚を漁る音。

哲太「あ、あったあった」

ペラペラと本をめくる音。

哲太「……うーん。いい本だ。けど、今からやるって言ってもなぁ。せめて、あと10年早く、この本と出合いたかった」

そのとき、電話が鳴り、通話ボタンを押す。

哲太「もしもし?」

巧「できたぞー! ついにできたー!」

哲太「……落ち着け、何ができたんだ?」

巧「タイムマシンだよ、タイムマシン! ちょっと、今からきてくれ! すぐ来いよ!」

ブツっと電話が切れる音。

哲太「……」

場面転換。

巧「おお、来たか。遅いぞ」

哲太「お前なぁ。せめて、予定ないか、聞けよ」

巧「いや、お前に予定が入っていたためしないだろ」

哲太「そうだけど……。なんかムカつくな」

巧「それより見てくれ! タイムマシンだ」

哲太「お前さぁ、40歳にもなって、なにやってんだよ。いい加減、変な発明とか止めろよ、恥ずかしいなぁ」

巧「40歳のニートに言われたくないな」

哲太「うっ……」

巧「じゃあ、ちょっと乗って見てくれ」

哲太「なんだよ、実験体になれってか? 自分でやれよ」

巧「やだよ。危ないもん」

哲太「危ないもんを人にやらせんなよ」

巧「……3千円、出す」

哲太「……死んだりはしないだろうな?」

巧「大丈夫だ! 多分……」

哲太「ここに乗ればいいのか?」

巧「ああ、そうだ。ただ、このタイムマシンは過去にしかいけないんだ。どのくらい前に行きたい?」

哲太「うーん。分かりやすく、俺が小学生のときくらいかな」

巧「おっけー!」

ダイヤルを回す音。

哲太「……なあ、過去の俺に会っても大丈夫かな?」

巧「大丈夫だと思うぞ。知らんけど。じゃあ、行くぞ」

ガシャコンという音がすると、妙な音に包まれる。

哲太「うわあああああ!」

場面転換。

哲太「はっ!? 夢……? いや、違う。ここは小学のときによく遊んだ、空き地だ」

そこに、足音がする。

哲太「……ん? あ、あれは……」

哲太が走り出す。

哲太「おい、ちょっと待て!」

子供「……おっさん、誰?」

哲太「お、おっさん……。俺はまだ40歳だ!」

子供「おっさんじゃん」

哲太「くっ! 自分じゃなければ殴りたいところだ」

子供「で? なに?」

哲太「お前さ、もう少し頑張れよ。いまのままじゃろくな大人にならないぞ」

子供「……ろくでもなさそうなおっさんに言われてもなぁ。大きなお世話だよ」

哲太「うっ! いいか! 俺は未来のお前だ! こんなふうになりたくなかったら、ちゃんと勉強しろ! いいな!?」

子供「はいはい。わかったから、おっさんは病院行けよ」

哲太「なんて、生意気なガキなんだ……。全然信じやしねぇ。……あ、そうだ! これを見ろ!」

バッと本を出す。

子供「なに、その本?」

哲太「これが、俺が未来から来た証拠だ。ほら、ここに本の発売日が書いてあるだろ」

子供「あ、ホントだ。30年以上先の年が書いてある」

哲太「この偉人になる方法の本はお前にやる! だから、この通りに実行しろ! そうすれば、お前は偉人になれる!」

子供「……俺が? そんな才能なんてないよ」

哲太「いいか? 生まれたときから偉人なんて人はいないんだ。偉人とは今を頑張り、その努力を続けた人がなれるんだ。つまり、努力さえすれば、人は偉人になれる!」

子供「……おお! よくわからないけど、すごいいいこと言ってる気がする……」

哲太「だろ? お前ならできる! 絶対だ」

子供「うん!」

そのとき、妙な音に包まれる。

場面転換。

哲太「……はっ!? ここは?」

巧「おお、戻ってきたか。……大体、5分ってところか」

哲太「……本がない。やっぱり、俺は過去に行ってたんだな?」

巧「おお、その通りだ! 成功したぞ」

哲太「なあ、俺は偉人か?」

巧「お前はニートだ」

哲太「成功してね―じゃねーか!」

巧「何を言ってんだ、お前?」

哲太「おい! さっき行った時間から、一年後に飛ばしてくれ」

巧「え? あ、ああ、いいぞ」

妙な音に包まれる。

場面転換。

哲太「おい! お前、なにやってんだよ!」

子供「うわ! あのときの、変なおっさん」

哲太「お前、俺が渡した本に書いてあったこと、ちゃんとやってんのかよ?」

子供「え? ああ、あれね。読んだよ、読んだ。難しかったけど、いいこと書いてあった」

哲太「読むだけじゃダメなんだよ! 実行しなきゃ、実行!」

子供「わ、わかったよ。今度はちゃんと実行するよ」

哲太「よし!」

妙な音に包まれる。

場面転換。

哲太「おい、俺は偉人か?」

巧「お前はニートだ」

哲太「もう一回だ! 次は5年後!」

妙な音に包まれる。

場面転換。

哲太「お前さ、なんでやらないわけ? ホントにヤバいぞ。将来、ニートだぞ、無職だぞ」

少年「あのさ、思ったんだけど、なんでおっさんは、自分でやんねーの?」

哲太「え? いや、だって、俺、40だし。遅いだろ」

少年「あの本にはさ、5年で大きく人生を変えれるって書いてあったぞ」

哲太「それがどうした?」

少年「あんた、今、40ってことは5年後は45だろ?」

哲太「そうだな」

少年「十分、働き盛りじゃん。確か、定年って60歳くらいだっけ? とにかく、おっさんが今から5年頑張ったとしても、残り、15年もあるんだからさー、全然、遅くなくない?」

哲太「お前……過去の俺なのにいいこというな」

少年「大丈夫だって。おっさんならできる。俺が保証するよ」

哲太「……俺は、今、猛烈に感動している」

少年「ほら、本は返すよ。頑張れよ」

哲太「ああ、俺はやってやるぜ!」

妙な音に包まれる。

場面転換。

哲太「なあ……俺は偉人か?」

巧「お前はニートだ」

哲太「そうだな。けど、これから偉人になる」

場面転換。

哲太「よーし! 俺はやるぞ! 絶対に偉人になってやる!」

ぺらりと本のページをめくる。

哲太「…………」

どさっと、横になる音。

哲太「よし、明日から頑張ろう」

終わり。

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