【フリー台本】代々伝わる料理

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
勇樹(ゆうき)
美緒(みお)
母親
部族男×2

■台本

勇樹「……はあ」

母親「なによ。ため息ついて。あんたの好きなカレーなのに」

勇樹「いや、これ、豆腐のやつじゃん」

母親「いいじゃない。豆腐カレーは幕末から代々、うちに伝わる料理なんだから」

勇樹「幕末って……。何回聞いても、嘘くせえ」

母親「何言ってるのよ。私たちの先祖のおじいちゃんは、この豆腐カレーを世界に伝えたんだから」

勇樹「余計、嘘くさいから。大体、母さんが肉買い忘れただけでしょ? 育ち盛りなんだから、肉食わせてよ、肉!」

母親「ないものはないんだから、しょうがないじゃない。さっさと食べちゃって」

勇樹「はあ……」

勇樹(N)「小学校のころ、カレーに入れるものっていう質問で、豆腐と答えた俺は、当時、変わってるとバカにされたものだ。ただ、今は、ダイエットしているときの食べ物として、豆腐にカレーをかけて食べるなんてことを見かけることはある。……でも、やっぱり、肉が食べたい」

場面転換。

美緒「ねえ、勇樹。卒業旅行はアマゾンのジャングルで大丈夫だよね?」

勇樹「……全然、大丈夫じゃねえよ。なんだよ、アマゾンのジャングルって。そこはハワイとかグアムとかだろ」

美緒「えー。だって、そんなの普通過ぎて面白くなくない?」

勇樹「いや、普通でいいだろ。普通で」

美緒「じゃあ、ジャングルトレッキング、3泊4日ね」

勇樹「聞けよ、人の話! てか、ジャングルで3泊もするのかよ!?」

ガチャリとドアが開く音。

母親「あら、美緒ちゃん、いらっしゃい」

美緒「あ、おばさん、こんにちは」

母親「このパンフレットは、大学の卒業旅行の?」

美緒「うん。アマゾンのジャングルにしたんだ」

勇樹「母さん、止めてくれよ。マジで行こうとしてるんだよ、こいつ」

母親「いいじゃない、ジャングル。私たちの先祖のおじいちゃんも、ジャングルに冒険に行ったんだから」

勇樹「いやいやいやいや」

美緒「へー! じゃあ、勇樹の中には、冒険家の血が流れてるんだね!」

母親「そうそう。だから、意外とジャングルは肌に合うかもしれないわよ」

場面転換。

ジャングル内。鳥や虫の鳴き声。

勇樹「合わねーよ!」

美緒「わっ! どうしたの、急に?」

勇樹「いや、あのさ、美緒。やっぱり、もう帰らねえ?」

美緒「何言ってるのよ。まだ2日目じゃない」

勇樹「暑いし、虫に刺されるし、歩きづらいし、腹減ったし、もうジャングル、嫌になってるんだけど」

美緒「あ、勇樹、見て! 綺麗な鳥!」

勇樹「聞けよ、人の話!」

美緒「もう少し奥に行ったら、おっきなアナコンダとかワニとか見れるかもしれないんだってさ」

勇樹「え? なんで、楽しみみたいな感じで言ってんの? マジで帰るぞ! アナコンダとかワニとかは動物園で見せてやるから」

美緒「……ねえ、勇樹。私ね、ずっと黙ってたことがあるんだけど」

勇樹「ん? なんだよ、急に」

美緒「実は道に迷ってるんだよね」

勇樹「へ? え? マジで? いつから?」

美緒「3時間くらい前からかなー?」

勇樹「なんで言わねーんだよ!」

美緒「だって言ったら、怒るでしょ?」

勇樹「言わない方が怒るよ!」

美緒「まあ、今、言ったし、ね?」

勇樹「ね? じゃねえ! とりあえず、謝れ! 俺に!」

美緒「ごめんね。生きて帰れないかも」

勇樹「思ったより、深刻だった!」

美緒「でも大丈夫だよ。私の巻はあっちだって言ってるから」

勇樹「いや、お前のその勘のせいで迷ったんだろうが」

美緒「んー。じゃあ、誰かに聞いてみようか」

勇樹「……こんなところにいる人間なんて、俺達と同じく迷ってるか、未開の地の部族とかだろ。……できれば会いたくないな」

美緒「……遅いかも」

勇樹「へ?」

部族の男1「――――!」

勇樹「うわっ!」

美緒「きゃああー!」

場面転換。

美緒「ねえ。帰り道、教えてくれると思う?」

勇樹「……縛り上げられてる時点で、それはないと思う」

美緒「……どうなると思う?」

勇樹「考えたくないな……」

部族の男1「――――――」

部族の男2「~~~~~!」

美緒「なんだろ? 何か言い争ってるみたいだね」

勇樹「俺たちの処分について、話し合ってるのかもな」

美緒「私たちは無害ですよー! ロープ、解いて下さい―!」

勇樹「……いや、それで解いてくれたら苦労はないって」

ぶちぶちぶちとロープを切る音。

勇樹「え?」

美緒「……解いてくれたね」

勇樹「な、なんで?」

部族の男1「―――――」

部族の男2「~~~~~」

美緒「なんか、謝ってる感じだね」

勇樹「俺に……だよな? どうして?」

部族の男1「―――――」

美緒「あ、写真だ。凄い古いね」

勇樹「……」

美緒「この写真に写ってる人、なんか勇樹に似てない?」

勇樹「やっぱり? 俺もそう思った。じゃあ、なんか勘違いしてるのかな?」

場面転換。

音楽が流れ、人々の楽しそうな声。

美緒「……なんか、宴会が始まっちゃったね」

勇樹「歓迎してくれてるのかな?」

部族の男1「―――――」

勇樹「あ、どうも……」

美緒「何の料理だろ? ……これ、カレー?」

勇樹「うん、カレーみたいだな。しかし、ジャングルの奥地の村にカレーが伝わってるなんて、凄いな」

美緒「あっ! これ、見て!」

勇樹「ん? ……あ」

美緒「豆腐だ。豆腐入ってるカレーなんて、珍しいね」

勇樹「……」

場面転換。

勇樹(N)「あの後、俺達は解放されただけでなく、人が通る道まで案内もしてもらった。現地の人に聞いてみたところ、村の奥に住む部族は、外部の人間を受け入れたりはしないらしい。だが、かなり昔に、一人の日本人の冒険家が村に入って行き、飢饉になっているところを救ったという伝説があるとのことだ」

回想。

母親「豆腐カレーは幕末から代々、うちに伝わる料理なんだから」

母親「私たちの先祖のおじいちゃんは、この豆腐カレーを世界に伝えたんだから」

母親「私たちの先祖のおじいちゃんも、ジャングルに冒険に行ったんだから」

回想終わり。

勇樹「……本当だったのか。ありがとう、先祖のおじいちゃん。おかげで助かったよ」

終わり。

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