無能社員

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
秀夫(ひでお)
田代(たしろ)
崎村(さきむら)
川上(かわかみ)

■台本

工場内。

機械が動く音。

秀夫「いいか。今日も、しっかりミスなしで作業しろよ。部品を組み合わせるだけの簡単なお仕事だ。そんなのもできないやつは、わかってるな? お前らの代わりなんていくらでもいるんだぞ。肝に銘じておけよ」

場面転換。

パソコンのキーボードを打つ音。

手を止める秀夫。

秀夫「……うーん。納品数が減ってるなぁ。あいつら、サボってんじゃねーだろうな」

そのとき、電話が鳴り、受話器を取る秀夫。

秀夫「はい。第三工場事務所です。……あ、部長。……はい。……ええ。……はい。納品数は、なんとかしてあげます。……はい。ええ。……はい。申し訳ありません。確認します。……それでは失礼します」

ガチャンと勢いよく受話器を置く。

秀夫「……ちっ!」

立ち上がって歩き出し、ドアを開けて部屋を出ていく秀夫。

場面転換。

工場内。

秀夫「工場長! 工場長! いるか!?」

田代「……はい。なんでしょうか」

秀夫「最近、納品数が落ちてるんだが、どういうことなんだ?」

田代「欠勤者が多いからだと思います」

秀夫「欠勤者が多いだぁ? なんでだよ?」

田代「インフルエンザが流行りまして……。かかった者には念のため、1週間は休ませてます」

秀夫「1週間? 休ませ過ぎだ! 1日でいいだろ!」

田代「……そんなことして、感染が拡大したら、工場自体を止めなくてはならなくなりますよ」

秀夫「……じゃあ、人員を補充したらどうなんだ?」

田代「……予算オーバーしますよ。納品数を多くしても、人件費がそれ以上に増えて、赤字になります」

秀夫「じゃ、じゃあ、休んでる奴をクビにすればいいだろ」

田代「……労基に訴えられたら、負けますよ」

秀夫「……なんとかしろ! 工場長だろ!」

田代「……あの、工場の責任者は、あなたですよね?」

秀夫「そ、そういうのは、ちゃんと相談しろよ。そうすれば、俺も手を打ったんだから」

田代「……あの、毎日、報告してましたが」

秀夫「……」

田代「どうします? 今日も一人、休んでますが」

秀夫「……お、俺が入る」

田代「え? できるんですか?」

秀夫「あんなの、誰でも出来るだろ」

田代「……」

秀夫「休んだやつの担当の場所に案内しろ」

場面転換。

田代「では、このEエリアをお願いします。ここから流れてくる部品に、ここの……」

秀夫「ああ、いいよ、説明しなくて。簡単だからさ」

田代「いえ、ここで間違うと……」

秀夫「間違わないって。逆にどうやったら、間違うんだよ。間違うようなやつは、クビだろクビ。このくらい、完璧にやってやるよ」

田代「……忠告はしましたからね」

場面転換。

機械音。

カチャカチャと作業する音。

秀夫「……つまらん仕事だな。誰でもできるし、専門性もない。こんなのを一日中やれる神経がわからん」

カチャカチャと作業する音。

秀夫「ん? 部品が足りなくなったぞ? ……なんだよ、ちゃんと数を揃えておけよな。ったく、取り行くか……」

場面転換。

事務所。

パソコンのキーボードを打つ音。

秀夫「えーっと、在庫の数が……」

ガチャリとドアが開く。

秀夫「……誰だ? まだ休憩の時間じゃ……って、部長!」

秀夫が立ち上がる。

秀夫「部長が、どうしてここへ?」

崎村「昨日、本社から苦情があってな」

秀夫「苦情……ですか?」

崎村「不良品が多く納品されてたらしくてな」

秀夫「不良品!?」

崎村「一体、どうなってるのかね? 納品数も下がってる、不良品も多い。どう責任をとるつもりだ?」

秀夫「すぐに担当者を特定して、クビにします」

崎村「いや、そういうことでは……」

秀夫「あんな簡単な作業もろくにできないやつは我が社にはいりません。いい機会です。最近、休みも多かったみたいですし」

崎村「……」

場面転換。

工場内。

田代「……あの、工場を止めてまで、なにをするんですか?」

秀夫「昨日、本社から不良品が納品されたことで苦情が来た」

工場内がざわつく。

田代「まさか……」

秀夫「実際に苦情が来たんだから、受け入れろ。お前らはミスをしたんだ」

田代「どの部分についてが問題だったんですか?」

秀夫「あー、いや、それは……」

崎村「報告書だ」

田代「失礼します」

紙を受け取る田代。

田代「……Eエリアの場所だな」

川上「え?」

秀夫「お前が担当者か?」

川上「あ、その……はい」

秀夫「お前、クビだ」

川上「え?」

田代「ちょっと待ってください。こんな簡単なミスをするとは思えません」

秀夫「思えないも何も、実際、ミスしてるんだよ。その責任をとるのは当然だろ?」

川上「……」

秀夫「じゃあ、すぐに荷物まとめろ。工場長、すぐに補充の人員の募集をしろ」

田代「ちょっと待ってください」

秀夫「うるさいな。……部長。担当者に責任を取らせましたので」

崎村「……」

田代「これ、昨日、苦情が来たんですよね?」

崎村「そうだ」

田代「ということは、2日前に作ったものです」

秀夫「それが?」

田代「こいつは、2日前は休んでました」

秀夫「え?」

崎村「本当か?」

川上「……はい」

秀夫「じゃ、じゃあ。その日、誰がそこの担当者だったんだ? そいつをクビにしろ!」

田代「……あなたですよ」

秀夫「え?」

田代「……2日前、あなたがEエリアの担当をしましたよね?」

秀夫「……」

崎村「なるほど」

秀夫「いや、ちょっと待て。お前が、ちゃんと説明しないのが……」

田代「こんな簡単な作業、間違える方がおかしいんですよね?」

秀夫「あ、いや……」

崎村「あんな簡単な作業もろくにできないやつは我が社にはいらないんだったな」

秀夫「そ、その……。私が抜けると向上を管理する人間が……」

山崎「大丈夫だ。お前の代わりはいくらでもいる」

秀夫「そ、そんなー!」

終わり。

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