ラブメール
- 2022.07.12
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:2人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
双葉(ふたば)
果歩(かほ)
■台本
教室内。
双葉「……はあ、千明君、格好いいよねー」
果歩「まあ、女子の中でも人気っちゃ、人気だね」
双葉「彼女、いるのかなぁ?」
果歩「んー。どうだろうね。部活命って感じだからいないんじゃない?」
双葉「でもさ、あんなに格好いいなら、絶対、言い寄られてるよ。告白とかされてるかも。で、なし崩し的に付き合ったりとか」
果歩「あー、そうだね。彼女、いるかもね」
双葉「いやー! そんな意地悪なこと、言わないでよ!」
果歩「……なんて言ってほしいのよ。面倒くさいなぁ」
双葉「ほら、こう、もっと応援するような感じとかないの? 親友に対して」
果歩「じゃあ、告白すればいいじゃん」
双葉「いやー! ダメ! 恥ずかしくて出来ない!」
果歩「なんなん? 面倒くさいなー、もう」
双葉「ほら、もっとさ、メル友から始めればとか、そういうアドバイスが欲しいわけよ」
果歩「じゃあ、アドレス交換すりゃいいじゃん」
双葉「いやー、ダメ! 断られたら立ち直れない!」
果歩「……めんどくさ!」
双葉「ってことで、お願い! 千明くんのメルアド、ゲットしてきて! SNSのIDでも可!」
果歩「はあ……。最初からそう言いなよ。遠回し過ぎ!」
双葉「よろしく! 上手くいったら、お昼ご飯奢る!」
果歩「はいはい。……って、メールって言えば、あんた、メルアド変えた?」
双葉「え? あー、うん。なんか、ストーカーメール来るようになったから、変えた」
果歩「ストーカーメール?」
双葉「うん。なんか、突然、好きですとか送って来てさ。気持ち悪くて」
果歩「送り主、覚えあるの?」
双葉「さあ? 知らないアドだし、無視してたんだ。新手の詐欺メールかもしれないしさ」
果歩「あー、なるほど」
双葉「でも、無視したらドンドン、送って来る数が多くなってさ。だから、変えたんだ」
果歩「……変えたなら、教えなさいよ」
双葉「ああ、ごめんごめん。実際、メール使ってないじゃん。大体、SNS使うしさ」
果歩「まあ、確かに。けど、一応、新しいメールアドレス教えておいてよ」
双葉「えーっと、はいはい。……これ」
果歩「……ん? なにこれ? どんな意味があるの?」
双葉「適当。なんか考えるのめんどいし」
果歩「これじゃ、覚えづらいんじゃない?」
双葉「別に使わないし」
果歩「はあ……。まあ、いいけどさ」
場面転換。
教室内。
果歩「はい、これ。千明くんのアドレス」
双葉「きゃー! ありがとう! さすが!」
果歩「昼飯、奢るの忘れないでね」
双葉「ねえ、なんて送ったらいいかな?」
果歩「それくらいは自分で考えなさいよ」
双葉「えーと、えーと! す、き、です。付き合って……ください……と」
果歩「……メル友から始めるんじゃなかったの?」
場面転換。
教室内。
双葉「……」
果歩「……どうしたの? 断られた?」
双葉「ううん。でも、その一歩手前って感じ」
果歩「どういうこと?」
双葉「アドレス変えられちゃった」
果歩「……それ、断れる一歩手前じゃなくて、数歩先じゃない?」
双葉「えー、なんでなんで? どうして、こんなことするのー!?」
果歩「……どんな内容を送ったの?」
双葉「え? 別に普通だよ。ずっと好きでしたとか、ずっと見てますとか、千明くんのためなら死ねますとか、だよ」
果歩「……全然普通じゃないね」
双葉「やっぱり、返信待ってからのほうが良かったのかな?」
果歩「ん? ちょっと、詳しく」
双葉「あのね。まず、好きです付き合ってくださいって送ったのよ」
果歩「うん。まずで送る内容じゃないね」
双葉「だけど、返事がないから、もしかして気づいてないのかなって、返事来る前に何通か送ったの」
果歩「……それで?」
双葉「それでも返事が来ないから、送るペースが増えちゃってさー。昨日、一晩中、送ってたら、朝にアドレス変更されちゃった。ううー、酷いよー」
果歩「……いや、普通だと思うよ」
双葉「ねえ! どうしたらいいかな?」
果歩「……どうしようもなにも、諦めるしかないんじゃない?」
双葉「ええー! だって、まだ告白して、断られてないんだよ! 諦めるのは早くない?」
果歩「んー。断れるよりも確実な事されてるけどね」
双葉「お願い! もう一回、千明くんのアドレス、ゲットしてきて!」
果歩「……まあいいけど、結果は同じだと思うよ……」
場面転換。
教室内。
双葉「お願い! もう一回、千明くんのアドレス、ゲットしてきて!」
果歩「……また? これで何回目よ。ホント、もう諦めたら?」
双葉「いーや! まだ、断れてないもん!」
果歩「……今度、千明くんにちゃんと断るように忠告しておくか」
双葉「え? なんか言った?」
果歩「ううん。なんでもない」
場面転換。
教室内。
果歩「……」
双葉「ねえ、どう? 千明くんのアドレス、ゲットできた?」
果歩「あー、いや、それが……」
双葉「まさか、ついに断られたとか?」
果歩「そうじゃなくて……。千明くん、不登校になったみたいなのよ」
双葉「ええ!? そ、そうなの? 最近、見ないと思ったら……」
果歩「……なんで、好きな人のことを知らないのよ?」
双葉「いやあ。最近はメールを送る方に集中しちゃって。……でも、なんで、不登校になっちゃったんだろ?」
果歩「んー。それが、謎のストーカーに追い回されてるみたいなのよ」
双葉「す、ストーカー!」
果歩「だいぶ前から悩まされてたみたい。……なんかね、やっと相手の気持ちがわかったとか言ってたんだって」
双葉「なにそれ?」
果歩「さあ?」
双葉「それにしても、千明くんにストーカーするなんて、許せない!」
果歩「……それ、あんたが言う? それよりさ、あんた、メールを送っても返事返って来なかったんだよね?」
双葉「うん」
果歩「うーん……」
双葉「どうかしたの?」
果歩「いやさ、色々、情報集めたんだけど、あり得ないんだよね」
双葉「あり得ないって、どういうこと?」
果歩「あんた、脈ありっぽいらしいんだよね」
双葉「ええー! ホント!?」
果歩「うん。男子の中だと、割と有名っていうか、バレバレだったらしい」
双葉「うわー! ホントに? やったー!」
果歩「けど、それだとおかしいのよね」
双葉「なにが?」
果歩「返事がないってところが」
双葉「あ、確かに」
果歩「あんたからメールが来たら、少なくても返事すると思うんだけど。ましてや、アド変なんて、するわけないはずでしょ?」
双葉「……どういうことなんだろ?」
果歩「……ちょっと、今まで送ったメール見せてくれる? もしかしたら、内容でドン引きされたかもしれないし」
双葉「あはは。まさかー。えーっと……はい、これ。今までのメール」
果歩「……2000超えかぁ。これは引くね」
双葉「え? そう?」
果歩「まあ、念のため、最初のメールから見てみるか……」
双葉「どう? 変なことなんて書いてないでしょ?」
果歩「いきなり告白は置いておいて、あんた、逆に書かなきゃいけないこと書いてない」
双葉「え? なになに?」
果歩「……あんた、名乗ってないじゃない」
双葉「……あっ!」
終わり。