お願い事

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
母親
幹人(みきと)
美奈(みな)

■台本

母親「幹人。この短冊にお願いを書くの。そしたらね、織姫と彦星がそのお願いを叶えてくれるのよ」

幹人「ふーん。お願いかぁ。どんなのでもいいの?」

母親「そうねぇ。叶いそうなお願いの方がいいかな。体育で二重丸を取るとか、100点を取るとかだと、織姫と彦星でもお願いを叶えるのは、ちょっと難しいかもね」

幹人「そっかぁ。じゃあ……美奈ちゃんとデートができますように! っと!」

母親「ええ! それもちょっと難しいと思うんだけど……。変えた方がいいんじゃない?」

幹人「えー。だって、もう、書いちゃったよ」

母親「そっか……。しょうがないわね。じゃあ、美奈ちゃんとデートできるように、頑張らないとね」

幹人「え? 織姫と彦星が叶えてくれるんでしょ? 僕が頑張らなくてもいいんだよね?」

母親「……もう、誰に似たのかしら」

場面転換。

家の前を掃き掃除している母親。

母親「(鼻歌)ふふふーん」

そこに美奈が歩いて来る。

美奈「あ、幹人くんのお母さん、おはようございます」

母親「あらあら、美奈ちゃん、おはよう。……こんな早くから学校に行くの?」

美奈「はい。私、生き物係なんです。ウサギ小屋の掃除と、エサをあげるので、いつもこの時間なんですよ」

母親「……いつも? 偉いわね―。うちの幹人なんて、まだ寝てるわよ」

美奈「あははは。幹人くんは、いつも遅刻ギリギリですもんね。それじゃ、失礼します。お掃除頑張ってください」

母親「はい、行ってらっしゃい。気を付けてね」

美奈「ありがとうございます」

美奈が歩いて行く。

母親「はぁー。美奈ちゃんはホントいい子ねぇ。うちにお嫁に来てくれると嬉しいけど……相手が幹人っていうのは、ちょっとねぇ」

場面転換。

ガチャリとドアが開く音。

母親「ほら、幹人! 早く起きなさい! 遅刻するわよ!」

幹人「ううー。あと、10分……」

母親「30分前に、そう言ったでしょ!」

幹人「ううー。今日、学校休む―」

母親「バカ言ってんじゃないの!」

場面転換。

母親と美奈が歩いている。

母親「悪いわね、荷物持ってもらっちゃって」

美奈「いいえ。これ、軽いですし、変える方向も同じなので」

母親「ホント、美奈ちゃんはいい子ね。お母さんの育て方がいいのかしら?」

美奈「あははは。そんなことないですよ」

母親「あ、着いたわ。ありがとうね」

美奈「いえ。また何かあったら言ってくださいね」

母親「……ねえ、美奈ちゃん、ちょっと寄って行かない? 荷物持ってくれたお礼したいから」

美奈「……はい、じゃあ、お邪魔します」

場面転換。

家の中。

美奈「うわー! すっごい美味しいです! このクッキー、幹人くんのお母さんが作ったんですか?」

母親「そうよ。秘伝のレシピなの」

美奈「あ、あの……このクッキーの作りから、教えてくれませんか?」

母親「ええ、いいわよ。じゃあ、材料をそろえておくから、明日、またいらっしゃい」

美奈「はい、ありがとうございます」

場面転換。

家の中。

母親「そうそう。そこで、少しだけ塩を入れるの」

美奈「へー。塩ですか」

母親「うんうん。美奈ちゃんは料理の才能もあるかもね、とっても上手」

美奈「あはは。……なんか、ちょっと照れちゃいます。褒められるの、慣れてないので」

母親「あら、そうなの? 美奈ちゃん、とっても素敵な子だから、いつも褒められてるのかと思った」

美奈「そんなことないですよ。お母さんは、いつも厳しくて……」

母親「そっかー。じゃあ、その分、おばさんがいっぱい褒めちゃう!」

美奈「えへへ。ありがとうございます」

場面転換。

家の中。

美奈「……というわけで、喧嘩しちゃったんです」

母親「そっかー。うんうん。美奈ちゃんも大変だったわね」

美奈「……」

母親「でも、美奈ちゃんはその、響子ちゃんと仲直りしたいんでしょ?」

美奈「はい……」

母親「じゃあ、美奈ちゃんの方から謝ってみたら?」

美奈「え? で、でも……」

母親「うん。わかるわ。美奈ちゃんは全然悪くないのは。でもね、人の感情って言うのは簡単じゃないのよ。その子も、謝りたくても、意地になって謝れないってこともあるのよ」

美奈「……」

母親「響子ちゃんが好きなら、ちょっと我慢して、謝ってみて」

美奈「……わかりました」

場面転換。

家の中。

美奈「響子ちゃんと仲直りできました!」

母親「美奈ちゃんから謝れたんだね。偉い偉い」

美奈「響子ちゃんも、ごめんねって謝ってくれました!」

母親「うんうん。響子ちゃんもいい子ね」

美奈「はい! ……お母さんは何でも、知ってるんですね」

母親「え? 今、お母さんって……」

美奈「はい。お母さんは、私の第二のお母さんです」

母親「美奈ちゃん!」

母親が美奈を抱きしめる。

母親「美奈ちゃんはホント、いい子ね。あーあ、美奈ちゃんが本当に私の子供だったらなぁ。毎日が楽しいのに」

美奈「えへへ。あの、私、毎日、遊びに来ます。……いいですか?」

母親「もちろん!」

場面転換。

家の中。

母親「幹人! ゲームばっかりやってないで、宿題しなさい!」

幹人「これ終わったら、やるー!」

母親「ダメ! 今すぐ!」

幹人「……今日は宿題ないんだ」

母親「嘘言うんじゃないの! ったく、少しは美奈ちゃんを見習ってほしいわね」

場面転換。

母親「幹人! 早くお風呂入りなさい!」

幹人「今日はいいや。面倒くさい」

母親「何言ってるの! ダメに決まってるでしょ!」

場面転換

母親「幹人! いつまで寝てるの!」

幹人「休みなんだから、寝かせてよ」

母親「はあ……」

場面転換

美奈「本当にいいんですか?」

母親「うん。美奈ちゃんの誕生日プレゼント。前から欲しがってたでしょ」

美奈「ありがとうございます! 大切にします」

母親「うんうん。喜んでもらえて嬉しいわ」

美奈「あの……お礼ってわけじゃないですけど、お母さん、何かしてほしいことありますか?」

母親「え? いやいや、いいのよ。気にしないで」

美奈「お願いです。何かお母さんの為にしたいです」

母親「うーん。うーん。……あ、あのね?」

美奈「なんですか?」

母親「一回だけでいいから……幹人とデートしてみてくれない?」

美奈「え?」

母親「あー、いや、ごめんね。忘れて」

美奈「いいですよ」

母親「へ?」

美奈「お母さんの頼みなら、私、頑張ります」

母親「無理しなくていいからね。嫌だったら途中で帰っていいからね」

美奈「だ、大丈夫です。……多分」

場面転換。

幹人「やったー! お母さん! 美奈ちゃんからデートに誘われた!」

母親「そ、そう……よかったわね」

幹人「短冊のお願いが叶った! さすが織姫と彦星! いい仕事するなぁ」

母親「……」

場面転換。

幹人「えへへ。待ちに待った七夕! 次の短冊のお願いは……美奈ちゃんと結婚させてください! だね」

母親「ダメ。美奈ちゃんはお嫁にはいかせません」

幹人「へ? なんで?」

終わり。

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