【声劇台本】ウサ耳メイドにご注意を!4話

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■概要
人数:4人
時間:10分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、異世界、コメディ

■キャスト
宇佐美 冥土
アリア(店長)
ルナ

■台本

冥土「いってらっしゃませ、ご主人様」

アリア「お帰りをお待ちしております」

  カランと音が鳴り、ドアが閉まる。

冥土「ふう……」

アリア「お疲れ様、宇佐美くん」

冥土「店長、後はやっておくから、帰って休んでくれ」

アリア「ううん。大丈夫。宇佐美くんの方が何倍も仕事をこなしてくれたんだから、宇佐美くんの方こそ先に……」

  ガタンと音立てて、ヨロけるアリア。

  それを受け止める冥土。

冥土「店長! ……大丈夫か?」

アリア「ありがとう……。ちょっと眩暈がしちゃって……」

冥土「店員命令だ。少し座って休んでいろ」

アリア「ふふ。店長が店員に命令されちゃった」

冥土「お茶でも淹れるから、座って待ってろ」

アリア「ありがとう」

  アリアがカウンターに座り、冥土がお茶の準備を始める。

アリア「宇佐美くん、随分と板に付いてきたね」

冥土「そうか? 同じお茶なのに、店長の味にはまだまだ届かないんだがな」

アリア「そんなことないよ。この調子なら、私なんてすぐ追い抜いちゃうと思うな」

冥土「……確かにお茶の淹れ方は慣れてきたかもしれない。だが、給仕としては、本当にまだまだだ」

アリア「そう?」

冥土「ああ。これじゃ、メイドじゃなく、ただのウェイターだ」

アリア「うーん……。それって、どう違うの?」

冥土「癒しだな。ウェイターというのは、サービスを提供するものだ。お客様が有意義な時間を過ごすための手助けをする。いうなれば、お客様の時間に極力干渉せずに、陰ながらおもてなしをするんだ。もちろん、その仕事だって誇り高い仕事だし、極めるのも大変だ。だが、俺がやりたいのは違う。積極的に、お客様……ご主人様を癒していきたいんだ。昔、俺にそうしてくれたように……」

アリア「へー。メイドって奥が深いんだね。私もまだまだ修行が足りないなぁ」

冥土「そんなことないさ。店長の笑顔は多くのご主人様を癒している。最近の忙しさがその証明だ」

アリア「ありがとう。お世辞でも、宇佐美くんにそう言ってもらえるのは嬉しいよ」

冥土「悪いな、店長。俺は致命的に嘘が下手なんだ。前の世界ではそれで仕事を失敗していた。鏡花さんに、よく警察は嘘を付くことも仕事のうち、と怒られてたな」

アリア「へー。大変な仕事だったんだね」

冥土「もちろん、メイドにもある程度の嘘は必要だと、最近、わかった」

アリア「え? そうなの?」

冥土「ああ。そのせいで、何人もご主人様を激怒させて、出て行ってしまったからな」

アリア「はは……。そりゃ、『汚ねえ手で店長に触るんじゃねえ、デブ』なんて言えば、誰でも怒るよ」

冥土「ふう……。まだまだ修行が足りないな。お止めください、デブ野郎。出禁にさせていただきますよ、ゴミ野郎。……落ち着いていれば、ちゃんと言えるんだがな」

アリア「うーん……。それでも結果は変わらなかったと思うな」

  冥土がティーカップをアリアの前に置く。

冥土「ハーブティーだ。疲れが取れる」

アリア「ありがとう」

  アリアがハーブティーをすする。

アリア「あ、美味しい」

冥土「よかった」

  冥土もハーブティーをすする。

アリア「ねえ、宇佐美くん」

冥土「ん?」

アリア「私はね、癒してもらってるよ。宇佐美くんに」

冥土「……」

アリア「宇佐美くんがいなかったら、私、とっくにこのお店を閉めてたと思う。だから、宇佐美くんが来てくれたことに、本当に感謝してるんだよ」

冥土「店長にそう言ってもらえると、お世辞でも嬉しいな」

アリア「えー。私も嘘を付くのは不得意だよ?」

冥土「確かにな。プロポーズしてくるご主人様に、異性として興味がありませんと、心を完全に折ってるからな。ある意味、すごい」

アリア「え? ダメだった?」

冥土「大体、そういうときは濁して、躱すものなんだがな」

アリア「そっか……。じゃあ、次からは、ご主人様のメイドでいさせてほしいです。正直、恋人としては無理です。って答えるようにするね」

冥土「言われた方は、再起不能になるだろうな。……それより、この状況をなんとかしないと」

アリア「この状況?」

冥土「ご主人様が増えた分、一人一人へのサービスが減ってしまっている」

アリア「確かに、トークタイムで利益は上がったけど、その分、話せるご主人様の人数は減ってるもんね」

冥土「そうなんだ。この店へ来るご主人様は店長に会いたいという目的だからな。もう少し店長に触れあうような方法があればいいんだが……」

  場面転換。

  店が賑わっている。

客「おーい、アリアさんとのトークタイム、まだ?」

冥土「申し訳ありません。あと、30分後です」

アリア「宇佐美くん、3番のご主人様がご注文みたい」

冥土「はい、喜んでー」

  そのとき、バンとドアが開く。

ルナ「冥土お兄様―! ルナ、会いに参りましたわよー」

冥土「お帰りなさいませ、ご主人様。正直、今は迷惑です」

ルナ「はあ……。いいですわ。お兄様の、そのイラっとした表情……ああ、たまりませんわ」

冥土「ルナお嬢様、そこの角に座って、自分で水を汲んで飲んでてください」

ルナ「はい、ですわー」

  ルナが席に座る。

ルナ「お兄様―。ルナとトークタイムをお願いいたしますわ」

冥土「ちっ! 今は忙しいんだ。見て気づけ」

ルナ「えー、でも、ご主人様の要望を叶えることもメイドのお仕事なんじゃありませんの?」

冥土「ぐっ! 正論を吐きやがって……」

ルナ「ということで、トークタイムをお願いしますわ」

冥土「わかりました。ただ、俺……私のお願いを聞いてくださいませんか?」

ルナ「お兄様からのお願い! なんですの!?」

冥土「私が働いている姿を、ルナお嬢様に見ていて欲しいのです」

ルナ「いいですわ!」

  働く冥土。

冥土「ご主人様、ランチセット、お待たせしまた」

客「おーい、冥土くん、追加注文いいかな」

冥土「はい、喜んでー」

ルナ「いい! いいですわ! この放置されている感じ! 新鮮でたまりませんわ!」

冥土「……うるさいな。にしても、構ってやれない分、ルナには後でトークタイム分の無料ポイントを付与しておくか」

  パシャパシャとシャッターを切る音。

ルナ「いい! いいですわ! 働いているお兄様の姿! 家でもお兄様の姿を楽しめるなんて、色々捗りますわ!」

冥土「捗るってなんだ……。ウザいからしばらく出禁にするか……。ん? おい、ルナ!」

ルナ「へ? なんですの?」

冥土「それって、人の姿を記録できるんだよな?」

ルナ「ええ、そうですわ」

冥土「写真……いや、画像をカード化することは可能か?」

ルナ「ええ、可能ですわ」

冥土「よし! ルナ、お願いがあるんだが」

ルナ「なんですの?」

  場面転換。

  にぎわう店内。

客「次、ボクもアリアさんのチェキ、お願い!」

冥土「はい、よろこんでー。店長、6番のご主人様からチェキの依頼をいただきました」

アリア「はい、ありがとうございますー」

  パシャリと写真を撮る音。

冥土「ご主人様、お待たせしました、店長の仕事の画像です」

冥土(N)「ルナの協力を得て、店長の写真を撮るチェキと、録画しておいた店長の画像を見るサービスを追加した。それは大成功で、トークタイムが入れないご主人様でも満足して帰っていただける。これで、なんとか当面の危機は乗り越えられそうだ」

終わり

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