死亡フラグ

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■概要
人数:3人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ

■キャスト
レイク
ジーク
サラ

■台本

魔王の城内を走る勇者一行。

レイク「サラ、大丈夫か?」

サラ「うん、このくらい、全然平気」

ジーク「にしても、さすが魔王の城ってところか。魔物がうじゃうじゃしてやがる」

レイク「いちいち戦ってたら、こっちの身が持たない。極力、魔物は避けて進もう」

サラ「そうね。やっとここまで辿り着いたんだもん。絶対に、魔王を倒そうね」

レイク「ああ、もちろんだ」

サラ「……あのさ、レイク。この戦いを無事に終えたら……」

ジーク「おーっと。そこまでだ、サラ。そういうのは死亡フラグって言うらしいぞ」

サラ「え? そ、そうなの?」

ジーク「変な約束なんかしなくたって、魔王を倒した後はどうするかなんて、決まってるだろ、レイク?」

レイク「へ? あ、ああ。もちろんだ」

ジーク「ってことだ。サラ、お前は生き延びることさえ考えてればいい。後は、俺とレイクで何とかする」

サラ「もう! 私だって、仲間なんだから、しっかり役に立ちますぅ!」

ジーク「おっと、そうだったな。すまん、すまん。がははは」

レイク「ジーク。あんまり、気を抜くなよ。ここは魔王の城なんだ。いつ、何が起きても不思議じゃ……」

周りから魔物の咆哮が飛び交う。

レイク「なっ!」

サラ「な、なに、この魔物の数……」

ジーク「ちっ! すっかり囲まれちまったな」

レイク「くそ、こうなったら、俺が活路を見出すから、二人は逃げてくれ」

ジーク「おーっと。そいつは違うな、レイク」

レイク「ジーク?」

ジーク「先に進むのは、お前とサラだ。俺がこの場に残る」

レイク「な、何言ってんだ!」

ジーク「魔王は勇者の血を引く、お前しか倒せない。ここで死ねば、世界は終わる」

レイク「だが!」

ジーク「がはははは。心配するな。俺だって死ぬ気はねーよ。すぐに追いつく。先に行ってな」

サラ「ダメよ、ジーク」

レイク「……サラ、行こう」

サラ「え? で、でも……」

レイク「俺たちの使命はなんだ? 魔王を倒すことだ」

サラ「……」

ジーク「そういうこった。ほら、さっさと行け」

レイク「ジーク。すまない」

サラ「ジーク……」

ジーク「じゃあな。しばらくのお別れだ」

サラ「ジーク! ジーク!」

レイクとサラが走り出す。

ジーク「うおおおおお!」

魔物たちに向かっていく、ジーク。

場面転換。

レイクとサラが歩いている。

レイク「くそ。お前が死亡フラグ立てて、どうするんだよ、ジーク」

サラ「私、ジークにいっぱい助けてもらったのに、何も恩返しできなかった……」

レイク「それは俺も同じだよ。あいつがいなかったら、とっくに俺たちは全滅してた」

サラ「うん……」

レイク「あいつは、損な役割ばっかやってたな。それでも、いつも笑ってた」

サラ「豪快で、強くて、デリカシーがなくて……そして、優しかった」

レイク「俺はずっと、ジークのこと、親父のように思ってたんだ」

サラ「私も……だよ。だから、私の花嫁姿、見せたかった……」

レイク「……」

サラ「……ジーク」

二人が立ち止まる。

レイク「……俺たちに出来ることは、魔王を倒し、あいつの死を無駄にしないことだ」

サラ「……そうだね」

レイク「よし、行こう!」

サラ「うん!」

そのとき、こちら側に走って来る足音がする。

ジーク「おーい! レイク、サラ!」

レイク「……え? ジーク?」

サラ「な、なんで?」

ジーク「なんでって……追いつくって言っただろ?」

レイク「いや、そうだけどさ……」

ジーク「がははは。よーし! じゃあ、魔王のとこへ行くぞ!」

レイク「……」

サラ「……」

ジーク「おっと! お前ら、ここからはむやみに死亡フラグ、立てんじゃねーぞ」

レイク「……いや、お前だよ」

終わり。

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