桃太郎は平穏に暮らしたい
- 2022.09.17
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、童話、コメディ
■キャスト
桃太郎
おじいさん
おばあさん
犬
猿
キジ
鬼
鬼の大将
■台本
桃が川を流れる音。
桃太郎(N)「俺の名前は桃太郎。今、桃の中に入って、川を流れている。……ん? まだ生まれてないから、名前を付けられてないだろうって? いいんだよ、そんな細けぇことは。それより、問題は、この後、俺は鬼退治をさせられるってことだ。今どきさー、親が子供の将来を決めるって、あり得なくないか? 時代遅れだよ、時代遅れ。……まあ、今は、昔の話なんだけど。とにかく、俺は親が作ったレールの上を走るつもりはない。だから、精いっぱい、足掻いてみようと思う」
桃が川を流れる音。
おばあさん「おや、まあ! 川から大きな桃が流れてきたわ!」
桃太郎(N)「来た。最初のポイント。ここでばあさんに拾われてしまうから、鬼退治なんてさせられるんだ。ここは、ばあさんの手が届かないように川のアウトコースを流れることにしよう。俺は、もっとボンキュッボンのエロいおねーさんに拾われるんだ」
桃が川を流れる音。
おばあさん「逃がすかっ!」
バサっと桃に服が絡みつく音。
桃太郎(N)「なにぃ! 洗濯物を繋ぎ合わせて、網を作っただと! うわー、やめろー」
桃がおばあさんに回収される。
場面転換。
おじいさんとおばあさんの家。
おじいさん「これは立派な桃だな。では、さっそく、包丁で桃を割るとするか」
桃太郎(N)「……第二ポイント。ここで桃から生まれなければいい」
おじいさん「とりゃー!」
ガキンと桃が包丁を弾く。
おじいさん「な、なんじゃと! 桃が開かん! くそ! 中から割れないように抑えておる! ばあさん! 無理やり開けるぞ」
おばあさん「はいさ!」
ぎゅうぎゅうと桃を引っ張る、おじいさんとおばあさん。
桃太郎(N)「うおおお! 負けるか! 俺は絶対に、桃から出ねえぞ!」
引っ張るのを止める、おじいさんとおばあさん。
おじいさん「……焼き桃が食いたくなったな」
桃太郎(N)「……」
パカッと桃が開き、赤ん坊の泣き声が響く。
場面転換。
縁側でお茶を飲む桃太郎。
桃太郎「はあ……。今日もいい天気。お茶がうめぇ」
そこにおじいさんがやってくる。
おじいさん「のう、桃太郎や。そろそろ、鬼退治に行ったら、どうかのう?」
桃太郎「あー、いや、うん。明日、明日行くよ」
おじいさん「一年前から、ずーっと、そう言ってるじゃろ」
桃太郎「いやいやいや。俺、まだ8歳だよ? 鬼と戦うなんて、無理無理! てか、こんなの幼児虐待じゃね?」
おじいさん「……」
桃太郎の喉元に包丁を突き付けるおじいさん。(キランという、包丁が光る音)
おじいさん「ワシにやられるのと、鬼を退治に行くのと、どっちがよいのじゃ?」
桃太郎「い、いきます……」
場面転換。
おばあさん「じゃあ、これ、きび団子。たっぷり用意したから、いっぱい仲間を引き連れて行くのよ」
桃太郎「……行ってきます」
おじいさん「お宝、楽しみにしておるからな」
桃太郎「……」
場面転換。
森をズンズン歩く桃太郎。
そこに犬が歌いながらやってくる。
犬「もーもたろさん、ももたろさん、お腰に付けた、きび団子! 一つ、私にくださいな」
桃太郎「ヤダ」
犬「……」
スタスタと歩き去って行く桃太郎。
次に、猿がやってくる。
猿「もーもたろさん、ももたろさん……」
桃太郎「そういうの、いいから」
猿「……」
スタスタと桃太郎が歩き去って行く。
そこにバサバサとキジがやって来る。
キジ「もーも……」
スタスタと無視して歩く桃太郎。
キジ「無視、すんなや!」
場面転換。
桃太郎が漕ぐ船が鬼ヶ島に着く。
桃太郎「ふう。鬼ヶ島に着いた」
船から降り、島に降り立つ桃太郎。
桃太郎「……よし! やあやあ、我こそは桃太郎! 鬼を征伐に来たぞ! いざ、尋常に勝負!」
刀を抜いて、振り回す桃太郎。
刀の空を切る音。
桃太郎「うわー! やられたー!」
ドサリと倒れる桃太郎。
桃太郎「こうして、桃太郎は鬼にやられてしまったのでした。めでたし、めでたし」
起き上がる桃太郎。
桃太郎「……さてと、帰るか。さすがに鬼に負けたって言えば、じいさんたちも諦めてくれるだろう」
その時、後ろから肩を掴まれる。
鬼「お前、何やってんだ?」
桃太郎「……えーっと、観光に……?」
鬼「ほう?」
桃太郎「ゴートゥートラベルで……」
鬼「ちょっと来い」
鬼に引きずられて連れて行かれる桃太郎。
桃太郎「ぎゃー! 鬼―」
鬼「おう」
桃太郎「人さらいー!」
鬼「おう」
桃太郎「泥棒―!」
鬼「おう」
桃太郎「見逃して」
鬼「ダメだ」
場面転換。
鬼の大将の前に突き出される桃太郎。
鬼の大将「よう、俺らのこと、退治しに来たんだってな?」
桃太郎「め、めっそうもございません。家来にしてもらおうと思って。へへへ」
鬼の大将「ほう?」
桃太郎「あ、これ。つまらないものですが……」
鬼の大将「……」
場面転換。
おばあさんが走ってやってくる。
おばあさん「おじいさんや! 桃太郎が帰ってきたよ! 鬼を家来にして!」
おじいさん「おお!? なんか、思った展開とは違うが、まあいいじゃろ!」
場面転換。
桃太郎がやってくる。
おじいさん「桃太郎や、でかしたぞ!」
おばあさん「よくやったねぇ、桃太郎。あんたは本当に凄いよ」
桃太郎「……いや、凄いのは、ばあさんのきび団子だよ」
おばあさん「へ?」
桃太郎(N)「……まあ、終わりよければすべてよしってことで。これからは、のんびりさせてもらおう」
終わり。
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