続・ラブレター
- 2022.09.19
- ボイスドラマ(10分)
■関連シナリオ
〈ラブレター〉
■概要
人数:2人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
世渡 良治(せと りょうじ)
加賀 雅美(かが まさみ)
■台本
良治(N)「ラブレター。スマホが普及した今、紙ベースの手紙なんて絶滅した、なんて思っている人も多いだろう。だが、実際、メールでラブレターを送るにしても、相手のアドレスを知らなければ送りようがない。かといって、相手のアドレスを誰かから聞いて送ったとしても、相手からしたら、知らないアドレスからのメールなんて、見ないか迷惑メールだと思われるだろう。じゃあ、相手とアドレス交換をすればいい、と考えがちだが、そこまで仲良くなるまでのハードルが高い。というか、ラブレターを送ることで、自分を認識してもらうという大一歩に近い。つまり順番が逆だ。……長々と何が言いたいかと言うと、今でもラブレターは普通に存在するということだ」
ガラガラとドアを開けて、教室に入る良治。
良治「おはよー。……って、さすがに誰もいないか。新学期だからって、張り切り過ぎたか? えーっと、俺の席はどこだ? 左から1、2、3の……1、2……5番目か」
歩いて自分の机に向かう良治。
席に座り、机の中に手を入れる。
ガサガサという紙の音。
良治「ん? 机の中に何か入ってるぞ?」
ガサっと取り出す。
良治「……ラブレターだ。いやいやいや! どうせあれだろ? また、和弥(かずや)に伝えろとかだろ? もう、騙されねーから」
ガサガサと中を開けて読み始める良治。
良治「えーっと、あなたのことが好きです。……え? いきなり? いやいやいやいや。きっと、目がかすんで、そう見えただけだろ?」
ゴシゴシと目を擦る良治。
良治「……うん。間違いなく、あなたが好きです、って書いてある。待て待て待て。一旦、落ち着こう。あなたのことが好きって時点で、果たし状じゃないってことと、他の人が好きとか、そういうことじゃないってことがわかる」
深呼吸する良治。
良治「いいか、落ち着けよ、俺。結局、ぬか喜びして終わるんだから、はしゃぐな。冷静に考えろ。俺にラブレターを書くなんて女がいるか? いいや、いるわけがない。……自分で考えておいて、凹むな。とにかく、まだ喜ぶのは早い。……あっ、まさか!」
ラブレターの裏を見る。
良治「送り主は……加賀雅美(かがまさみ)って書いてある。って、ことは男じゃないってことは確実。最悪は回避したな。……にしても、加賀雅美さん……か。聞いたことないな。けど、俺に好意を寄せてくれるんだから、贅沢言ってられない。感謝しないと、感謝」
もう一度、深呼吸する良治。
良治「とはいえ、まだ喜ぶわけにはいかない。もう少し、読み進めよう」
手紙を開き、再び、読み始める。
良治「いつも、遠くから見てました。違うクラスだから、なかなか、話しかけられなくて……。って、おお、可愛い。奥ゆかしいな。で、次は……。いつもあなたは自分に自信がなさそうにしてましたね。でも、それは違うと思います。確かに、あなたは成績も運動も真ん中よりも少し下くらいです。……完璧、俺のことだ……」
手紙をめくる音。
良治「私はあなたの魅力は勉強とか運動とか、そういうことじゃないと思ってます。どんなときも明るくて、笑っている、そんなあなたのことが好きなんです。いつも、あなたの笑顔に救われているんですよ。……おお。俺、みんなからバカみたいに明るいって言われてるからなー。俺のいいところ、わかってくれてるんだな」
手紙をめくる音。
良治「もしかしたら、私が好きっていうのを、疑ってしまうかもしれませんね。それくらい、あなたは自分に自信がなさそうに見えます。……うっ! 合ってる。すんません。正直、まだ、疑ってます」
手紙をめくる。
良治「私から見ると、あなたは眩しいくらい、素敵な人です。でも、それでもあなたはきっと、疑ってしまうでしょう。だから、直接、私の口で言わせてください。あなたが好きということと、あなたが素敵な人だってこと」
ごくりと唾を飲みこむ良治。
良治「なので、今日の放課後、屋上で待ってます。……ここで、ラブレターは終わりだ。誰かに知らせて欲しいとかじゃなく、俺への手紙だ……」
良治が大きく息を吸う。
良治「よーし! よし、よし! きたー! ついに、俺にも春がきたーーー! ……えーと、今日の放課後に屋上だな」
場面転換。
ガチャリとドアを開き、良治が屋上にやってくる。
良治「あ、あの、お待たせ、加賀さん」
雅美「あ、来てくれた……って、え? 誰、あなた?」
良治「へ? いや……君の手紙をもらったんだけど……」
雅美「え? え? え?」
良治「……?」
雅美「……あっ! そっか! クラス替えで、今日から、教室が変わったんだった!」
良治「……えーっと、ってことは、加賀さんが手紙を出したのは……」
雅美「浩平(こうへい)君。……あなたの前に、そこに座ってた人……」
良治「そんなオチかよ!」
終わり。
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