【声劇台本】いきなりラストバトル5

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■概要
主要人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、学園、コメディ

■キャスト

梨沙
茉奈

■台本

蓮(N)「それはもう本当に突然の出来事だった。警戒も予防も全く関係ない、いわば事故のようなものだろう。なんだ? 俺は今年、天中殺かなんかなのか? いや、ホント、マジで勘弁してほしい。普通に静かに学校生活を送りたい。ただそれだけなのに……」

  地面に矢が数本刺さる音。

蓮「うおお! 危ねぇ!」

梨沙「あれを躱すなんて、なかなかやりますね」

蓮「やっぱり、今のは流れ弾とかじゃなくて俺を狙ってたのか」

梨沙「ここは日本ですよ。氷の矢が流れで飛んでくるなんて物騒なことは起こりません」

蓮「命を狙われる方がよっぽど物騒だと思うんだが?」

梨沙「次は外しません。死んでいただきます」

蓮「ちょっと待て! なぜ、俺を狙う? 俺は、勇者の勧誘をしてくるクズの変な団体以外からは命を狙われる覚えはない」

梨沙「……自覚無しときましたか。まあ、いいでしょう。犯罪者は大抵、そんなものです」

蓮「なあ、一つ勘違いしてるかもしれないが、俺は勇者および魔王なんかじゃないぞ」

梨沙「勇者? 魔王? なんの話ですか? そんな厨二な発言は異世界に転生してから言ってください」

蓮「違うのか……。炎に対しての氷だから、もしかしたらって思ったんだがな」

梨沙「ではそろそろお喋りは止めて、死んでもらいます。私も早く帰ってアリバイ作りをしないといけませんから」

蓮「意外と俗っぽいな! ……で? 参考までに聞かせて欲しいんだが、どんなアリバイ工作をするつもりなんだ?」

梨沙「この時間は、家で寝ていたということにします」

蓮「雑だな、おい! 今どき、そんなアリバイが通るわけないだろ。アリバイがないと言ってるようなものだぞ」

梨沙「……ふん、負け惜しみですか。私を動揺させて、命乞いをするつもりなんですね」

蓮「くそ! 頭が良さそうな見た目とは裏腹に、とんだ天然ちゃんキャラかよ!」

梨沙「さあ、裁きの時間です。大人しく天罰を受け入れてください」

蓮「ちくしょう。本当に全く身に覚えがないぞ。誰かと勘違いしてるんじゃないのか?」

梨沙「私みたいな美少女に殺されるなら本望ですよね?」

蓮「そんな台詞を吐くキャラは多いが、俺はそのタイプじゃないし、そもそもその台詞は自分で言ったら台無しだぞ」

梨沙「世界平和のために死んでください」

蓮「悪いが、俺は世界を脅かすほどの人物ではない。これには自信がある。……てか、マジで理由を教えてくれ。なんで、俺を狙ってるんだ?」

梨沙「私の恨みを買いました」

蓮「思いっきり、私怨じゃねーか! 何が、世界平和のためだ!」

梨沙「私という視点で見れば、世界は私そのものです。つまり、私と言う観点からみれば、私が世界の中心であり、私が不快だと思えば、私の世界の平和が揺らぐというわけです」

蓮「……哲学過ぎる。なんだろ? ちゃんと、頭がいいキャラなのか天然なのか、はっきりさせた方がいいと思うぞ。絶対、途中でブレるって」

梨沙「さあ、そろそろ本当に死んでもらいます」

  梨沙がパチンと指を鳴らす音。

  チキチキチキという氷が出現する。

梨沙「先ほどは一本でしたが、今度は十本です。躱しきれますかね?」

蓮「くそ、俺は運動苦手だって言ってるだろ」

  そのとき、蓮の前に何者かが現れる。

茉奈「梨沙ちー、待ちなさい!」

梨沙「茉奈様……」

蓮「神崎!?」

茉奈「安心して、蓮くん。私が来たからにはもう大丈夫だよ」

蓮「そ、そうか。まさか神崎に助けられるとはな」

茉奈「さあ、梨沙ちー。その魔法を解除して」

梨沙「しかし……」

茉奈「言ったよね? 私の彼氏に手を出したらどうなるかって」

蓮「……は?」

梨沙「嫌です! 認めません! 茉奈様が男と付き合うなんて、絶対に許しませんから!」

蓮「ちょ、ちょっちょっちょっと待て! 神崎、どういうことだ?」

茉奈「ん? どういうことだって、どういうこと?」

蓮「いや、なんで俺と神崎が付き合ってることになってるんだよ?」

茉奈「え? 逆になんで付き合ってることになってないの? 蓮くん、前回、私に告白してきたでしょ?」

蓮「お前かー! すべての元凶は! あーあ、やっぱりこんなことだろーとは思ったよ」

茉奈「ん? んー? どゆこと? 説明求む」

蓮「いやいやいや。だからさ、この前のは事件を解決させるための方言って奴だよ。実際、俺からメールなんて来てなかっただろ? 大体、神崎のメールアドレス知らないし」

茉奈「待って待って。じゃあ、なにかい? つまり蓮くんは私の純情を冗談で汚したと?」

梨沙「茉奈様の純情を……?」

蓮「お願い、言葉を選んで! これ以上、あの子の火に油を注がないで!」

茉奈「あはははは。大丈夫だよ。梨沙ちー、氷使いだし」

蓮「誰が上手いことを言えと?」

茉奈「そっかそっか。要約すると、私の勘違いだったってことだね?」

蓮「ああ、そういうことだ。だから、上手い感じであの子に説明してくれ」

茉奈「りょ!」

蓮「……ふう、これで事件解決か」

茉奈「ごめーん、梨沙ちー。誤情報」

梨沙「……」

茉奈「私と蓮くん、まだ付き合ってなかった。付き合うのはこれからだったみたい」

梨沙「……違いがわかりませんが?」

蓮「うおーい! なに言っちゃってんの?」

茉奈「あれ? 違った?」

蓮「なにをどう聞いたら、そうなるんだよ?」

茉奈「もう! 付き合ってるの? 付き合うの? どっちなの?」

蓮「なんで、その二択なんだよ!」

梨沙「わかりました。もういいです。とにかく、その男を殺せばいいわけですね?」

蓮「そっちは、なんでその一択なんだよ!」

梨沙「もうアリバイとかどうでもいいです。殺ってから考えます」

蓮「ダメな奴の典型的なタイプだな」

茉奈「梨沙ちー。悪いけど、私、こんなに早く未亡人になるつもりないから」

蓮「神崎、お前、もう喋るな!」

梨沙「愛の為に死になさい!」

茉奈「蓮くん、下がって! こうなったらやられる前にやれだよ!」

蓮「何か、策があるのか?」

茉奈「ふっふっふ。蓮くん、忘れてない? 私、勇者なんだよ?」

蓮「いや、お前こそ、重要なこと忘れてないか?」

茉奈「勇者、茉奈の名において命ずる、いでよ焔虎! ……って出ない!」

蓮「当たり前だ! 前回は、お前を勇者に勧誘する変な団体から助ける話だったんだからな」

梨沙「はーーー!」

  氷の矢が飛んでくる。

蓮「うわあー!」

茉奈「奥の手、蓮くんガード!」

蓮「お前、最低だな!」

  氷の矢が地面に刺さる音。

蓮「……外れた?」

茉奈「というか、途中で矢の軌道が変わったね」

梨沙「……なるほど、茉奈様を庇ったんですね」

蓮「お前の目は節穴か」

梨沙「これが、愛の力というやつですね」

茉奈「ふふ、ようやく理解したようね」

蓮「……もう、どうにでもして」

梨沙「私、思い知りました。今のままでは、二人の愛の力に勝てません」

茉奈「愛の力は世界を救うんだよ」

蓮「言葉の意図は違うけどな」

梨沙「一つ約束してください。もし、愛の力超えて……この男を殺すことができたら、茉奈様は私のものになってくれますか?」

茉奈「うん、いいよ」

蓮「ディープな話なのに返答は軽いな。それに、何気に俺の命もかかってるのに、俺に了承を得なかったよな?」

梨沙「次はもっと強くなって、二人の前に現れます。待っててください」

  梨沙が立ち去る。

茉奈「ああいうのってさー。大体、後から敵が仲間になる流れだよね」

蓮「バトルものの話にしたくないんだけどなー」

蓮(N)「こうして、危機は何とか回避することができた。今回は世界を救うとかじゃなく、個人的な危機からの回避だった。ただ、さらにいつもと違うのは、今回の事件を根元から解決したというわけじゃないこと。まさか、続く感じなのか? 嫌だ。こんな伏線はいらない。とにかく、俺は平穏無事に過ごしたいだけなのに……」

終わり

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