【声劇台本】水玉パンツ

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
陸(りく
零(れい)
美羽(みう)

■台本

陸が6歳の頃。

ぽたぽたと水が滴る音。

陸「うう……。雨で濡れちゃった」

そのとき、子供の泣き声が聞こえてくる。

陸「あれ? 泣き声? 女の子が泣いてる」

走り寄る陸。

陸「ねえ、どうして泣いているの? 大丈夫?」

その時、風がビューと吹く。

陸「あっ!」

場面転換。

10年後。

陸(N)「俺の初恋の相手との記憶。女の子が泣いていて、その時の俺は大丈夫かと話しかけた。そして、強風が吹いた。それによって女の子のスカートがめくれ、見えてしまった。……水玉模様のパンツが。10年以上たっている今でも、鮮明に覚えている」

陸と零が歩いている。

零「おい、陸!」

陸「ん? ああ、ごめん。なんだ?」

零「なんだ、じゃねえよ。さっきから全くの無反応決め込みやがって」

陸「なあ、零は初恋って覚えてるか?」

零「は? なんだよ、急に」

陸「いや、ちょっと懐かしいこと思い出してさ」

零「ふーん。……初恋ねぇ。俺はベタだけど、幼稚園の先生かな。大人の女性って感じで、憧れの的だったんだよ」

陸「顔とかも覚えてるか?」

零「当たり前だろ」

陸「だよなぁ……」

零「ん? お前は覚えてないのか?」

陸「いや、実はさ……」

場面転換。

零「あはははははは!」

陸「笑うなよ」

零「いやいやいや。初恋の相手なのに、パンツのことしか覚えてねーって、いくらなんでも最低だろ」

陸「うるせーな」

零「それってさ、その女の子に恋をしたんじゃなくて、単にパンツに欲情しただけだろ」

陸「いや、ちげーって。マジで! これはさ、エロとかじゃなくて、なんつーか、純粋な気持ちなんだよ」

零「パンツに純粋な気持ちって言われてもな―。変態度が高まっただけだぞ」

陸「うっせーよ。あー、くそ、話すんじゃなかった」

零「まあ、誰にだって、トラウマになるようなことってあるよな」

陸「人の初恋をトラウマって言うな。……って、その口ぶりだと、お前、トラウマになるようなことあるのか?」

零「……あー、いや、思い出したくねえ」

陸「そこまで言ったなら言えよ。気になるだろ」

零「いやー、ちょっとな……」

陸「お前な―。人のトラウマ聞いておいて、自分のことは隠すのかよ」

零「お、初恋の思い出をトラウマって、自分で認めたな?」

陸「言葉のあやだよ、あや」

零「……絶対に、内緒だからな」

陸「おう」

零「実は、小さい頃さ……」

パラパラと雨が降り出してくる。

陸「うお、雨だ」

零「傘持ってるか?」

陸「あるわけねーだろ」

雨の勢いが増してくる。

陸「やべえ」

零「俺んちで雨宿りしてけよ。なんなら、傘貸すぞ」

陸「お、サンキュー。そうさせてもらうわ」

零「よし、走るぞ」

二人が走り出す。

場面転換。

零の家。

陸「あー、くそ。結構濡れたな」

零「ほら、タオル」

陸「サンキュー。……って、おい、自分だけ着替えるなんて、ズルいぞ」

零「いや、ズルいって言われてもな。ここ俺んちだし、着替えるだろ」

陸「いいなぁ。俺も着替えてぇ。パンツまで濡れて気持ち悪ぃ」

零「さすがに下着は貸すわけにはいかないからな」

陸「ああ。勘弁だ」

零「だよな。誰かの下着を履くなんて、トラウマ級に嫌だよな」

陸「そういや、お前のトラウマ、聞いてなかったな。なんなんだ?」

零「ああ。まさしく、今の話題のそのままなんだけどさ……」

ドアが開いて、美羽が入って来る。

美羽「ただいまー」

零「おかえり。って、お前も見事にずぶ濡れだな」

美羽「あー、マジムカつく、天気予報アテになんない」

零「早く着替えろよ。風邪ひくぞ」

美羽「そうする……って、あれ?」

陸「おじゃましてます」

美羽「陸さん、来てたんだ?」

陸「あ、うん。雨宿りさせてもらってる」

美羽「ふーん。ごゆっくり」

美羽が奥の方へ歩いて行く。

陸「美羽ちゃん、大きくなったな。何歳だっけ?」

零「7歳。小学1年だよ」

陸「ふーん」

ドタドタと勢いよく美羽が歩いてくる。

美羽「さいてー。洗濯物全部濡れてるんだけど」

零「あー。干してたのか」

美羽「どうしよう? 着替えないんだけど」

零「……あ、そうだ」

零が小走りで走って行く。

場面転換。

零「ほら、これでも履いておけ」

美羽「なに、これ? なんで、兄ちゃんがこんなのもってるわけ? そういう趣味?」

陸「……っ」

零「ちげーよ。昔、無理やり母さんに着せられたやつだ」

陸「零……どういうことだ?」

零「ああ。これがさっき言ってたトラウマの話。実は、うちの親がさ、女の子が欲しかったみたいでさ。小さい頃、なにかと俺に女装させようとしてたんだよ」

陸「……」

零「ずっと嫌がってたんだけどさ、今日みたいに雨で着るものがなくってさ。仕方なくて一回だけ着たんだよな。でも、着てからさ、やっぱり嫌でガン泣きしてさ、家を飛び出したんだよ。あー、くそ、俺の黒歴史だ。思い出したくもねえ」

陸「ち、ちなみに、それ、いつ頃だ?」

零「えっと、10年くらい前かな」

陸「……お前かー! ふざけんなー」

零「は?」

陸(N)「こうして、俺の初恋は見事に砕け散り、代わりにトラウマとなったのだった」

終わり。

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