子供になりたい
- 2022.10.23
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブコメ
■キャスト
光希(こうき)
沙紀(さき)
将司(まさし)
子供1~3
男
■台本
光希(N)「子供になりたい。……とはいっても、別にピーターパン症候群ってわけじゃない」
幼稚園の裏庭。
洗濯ものを干している光希。
光希「ふう。洗濯終わりっと!」
光希が歩いていく。
光希「沙紀さん、洗濯終わり……」
子供と遊んでいる沙紀。
沙紀「偉いね。そんな将司くんに、ご褒美のちゅーだ」
チュッと将司の頬にキスする沙紀。
将司「へへへ。沙紀先生に、チューしてもらっちゃったー!」
光希「……」
沙紀「あれ? 光希くん、どうしたの?」
光希「あ、いや、その洗濯物終わったから……」
沙紀「そう。ありがと」
光希「ね、ねえ、沙紀さん」
沙紀「ん?」
光希「俺にご褒美ないの?」
沙紀「……光希くんが無償でって言ったんじゃなかったっけ?」
光希「うっ……」
子供1「沙紀せんせー、あっちで蓮くんが泣いてるよ」
沙紀「あらあら。すぐ行くわ。知らせてくれてありがとう」
子供1「えへへ」
沙紀が子供1と歩いて行く。
光希(N)「沙紀さんは俺にだけ冷たい。……っていうより、子供が好きなんだ。子供であれば、無条件で沙紀さんに好きになってもらえる。だから俺は、子供になりたい」
場面転換。
幼稚園の運動場。
子供2「あはははは! 光(こう)兄ちゃん、こっちだよー」
光希「待てー!」
子供3「きゃはははは」
子供たちと追いかけっこをしている光希。
光希がバタリと倒れる。
光希「はあ、はあ、はあ。もうダメ。走れない」
子供2「光にいちゃん、情けないぞー」
子供3「そうだそうだ」
光希「く、くそ……」
そこに沙紀がやってくる。
沙紀「情けないって言われてるわよ?」
光希「うっ! そう言われても、もう走れないよ……」
沙紀「そう」
大きく息を吸う、沙紀。大声で子供たちに言う。
沙紀「みんなー、そろそろお昼ご飯にしよっか。手を洗って、教室に入ってー」
子供たち「はーい!」
ゾロゾロと子供たちが園の中に入っていく。
光希「沙紀さん、俺は?」
沙紀「お弁当持ってきてるの?」
光希「……ないです」
沙紀「じゃあ、食べれないわね」
飴玉を渡して、沙紀が園に入っていく。
光希(N)「大学の講義が急に休講になって、散歩のつもりで歩いていたら、この幼稚園を見つけた。そして、そこで働いている保母の沙紀さんに、俺は一目惚れをした。それで無理を言って、手伝わせてもらっているのだ」
場面転換。
幼稚園内の教室。
沙紀「それじゃ、みんな、いただきます、しようね」
子供たち「いたーだきます!」
みんながお弁当を食べ始める。
そこに光希が入って来る。
沙紀「あら、光希くん。動けるようになったの?」
光希「まだ横っ腹が痛いけど」
沙紀「……大学の講義は?」
光希「休みだよ」
沙紀「……大学はサボらないっていうのが条件だったと思うけど?」
光希「やだなぁ。本当に休みなんですってば」
沙紀「そう」
そのとき、グーっと光希のお腹が鳴る。
光希「あっ!」
沙紀「(ため息をついて)……はい。お弁当」
光希「え? これって……?」
沙紀「いつも……手伝ってくれてるから」
光希「これ、愛妻弁当ってことでいいの?」
沙紀「……やっぱりあげない」
光希「じょ、冗談だって! ありがたく食べさせていただきます」
沙紀「勘違いしないでよ。本当に、手伝ってくれてるお礼だからね」
光希「うう……」
光希(N)「本当に、沙紀さんは俺にだけ冷たい……」
場面転換。
道路を走っている光希。
光希「くそー、教授め。雑用なんか押し付けやがって! 沙紀さんに会える時間が少なくなっちまったじゃねーか」
そのとき、幼稚園の敷地内から声が聞こえる。
男「下がれ! このガキがどうなってもいいのか?」
将司「うえーん! 沙紀せんせー助けてー」
沙紀「お願い、乱暴しないで!」
男「うるせえ! 金だ! 金を持ってこい!」
沙紀「そう言われても……園にはそんなにお金ないわ」
男「ガキどもの親に持ってこさせろ!」
沙紀「……そんな」
男「いいから、早くしろ!」
将司「うわーん!」
沙紀「やめて!」
光希「うおおおおおお!」
光希が走って来る。
男「ん? なんだ、お前……うわあ!」
光希の体当たりで男が倒れる。
光希「沙紀さん、早く警察に!」
沙紀「う、うん!」
男と光希が組み合っている。
男「うおおお! どけっ!」
光希「離すもんかー!」
男「くそー!」
場面転換。
パトカーの音が遠ざかっていく。
光希「ふう。ドキドキしたー」
沙紀「……光希くん、ありがとう」
光希「え? あ、うん。子供たちに怪我がなくてよかったね」
沙紀「……光希くんのおかげだよ」
光希(N)「ん? あれ? これって、いい雰囲気じゃね? 今なら、いけるんじゃないのか?」
光希「さ、沙紀さん! あの、次の日曜なんだけど、デートしてくれない? 助けたお礼ってことで」
沙紀「……ダメ。それとこれとは話は別」
光希「ええー、そんなぁ……」
沙紀「でも、遊びに行くならいいよ」
光希「え?」
沙紀「デートじゃなくて、一緒に遊びにいくなら、行ってあげる」
光希「ホント!? うん、遊びってことでいいよ! よっしゃー!」
沙紀「……勘違いしないでよ。友達、として行くんだからね?」
光希「……は、はい……」
光希(N)「やっぱり、沙紀さんは俺には冷たい。……はあ、子供になりたい」
終わり。