甘い顔
- 2022.10.29
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
結城 柊(ゆうき しゅう)
結衣(ゆい)
優愛(ゆあ)
男子生徒
女子生徒
女性
■台本
教室。
柊「お、おい、ちょっと待てよ!」
男子生徒「待てって言われて、待つ奴がいるかよ」
柊「いい加減に……」
柊が走ると腕が花瓶にぶつかり、花瓶が落ちて割れる。
柊「あっ……」
優愛「あーあ。やっちゃったね、結城。こりゃ、結衣に怒られるんじゃない?」
男子生徒「俺、しーらね」
男子生徒がピューと逃げていく。
柊「……やっぱ、怒られるかな?」
優愛「だって、この花、昨日、結衣が持ってきたんだよ。しかも、割れた花瓶も結衣が気に入ってたし」
柊「……」
そこに結衣が歩いて来る。
結衣「みんな。どうしたの? そんなところに集まって?」
柊「あっ……」
優愛「結衣。結城が花瓶割っちゃったのよ。ふざけて走り回って」
結衣「……うそ」
柊「結衣……。ごめん。俺……」
結衣「はあ……。まあ、仕方ないわよ」
柊「え?」
結衣「ロッカーから、ホウキと塵取り取ってきて。片付けないと先生に怒られちゃうよ」
柊「お、おう……」
柊が歩いて行く。
優愛「相変わらず、結衣は結城に甘いんだから。幼馴染だからって、甘すぎるんじゃない?」
結衣「そんなことないよ」
優愛「もしかして、幼馴染ってだけじゃなくて、他にも理由があったりして」
結衣「もう、止めてよ! 私だって、花瓶が割れたの、滅茶苦茶ショックなんだから!」
優愛「あ、そっか。そうだよね。ごめん」
結衣「ううん。それより、今日の帰り、新しいの買いに行くの付き合ってくれる?」
優愛「それはいいけど……」
場面転換。
教室内。
男子生徒「おーい、柊、カバン投げてくれ」
柊「行くぞー」
男子生徒「おう!」
柊がカバンを投げる。
男子生徒「げっ! どこ投げてんだよ!」
ドンと女子生徒に当たる。
女子生徒「きゃっ!」
柊「あ、ごめん! 手が滑って……」
女子生徒「結城―! あんたねー! いつもうるさいのよ! 人に迷惑かけないと気が済まないの!?」
柊「そういうわけじゃ……」
女子生徒「ったく! 今度から気をつけなさいよ」
柊「え? もう終わりか?」
女子生徒「なにが?」
柊「……ほら、もっと文句言っても罰は当たらないっていうか、そんなに簡単に許していいのか?」
女子生徒「いや、別にそこまで痛くなかったし。あんたが、反省してるならそれでいいわよ」
柊「もっと、文句言ってもいいんだぞ」
女子生徒「だーかーら。もう、いいってば」
柊「そうか……」
場面転換。
教室内。
柊がカリカリと必死に、ノートを写している。
男子生徒「おい、柊! 早くノート貸せって!」
柊「まだ、写してるんだから、待てって」
チャイムが鳴る。
男子生徒「もう授業始まるだろ! 早く、ノートよこせって」
柊「もう少し!」
男子生徒「何言ってんだよ、俺が怒られるだろ」
男子生徒がノートを引っ張る。
柊「ちょ、待てって!」
柊がノートを渡さないように引っ張ると、ビリビリとノートが破れる。
柊「あっ!」
男子生徒「ああっ!」
そこに結衣と優愛が教室に入って来る。
結衣「授業始まるから、ノート返して……」
優愛「ああっ! 結衣のノートが……」
男子生徒「わ、悪い……」
結衣「はあっ!」
男子生徒「ぶべっ!」
バチンと男子生徒の頬にビンタをする結衣。
結衣「あんたねぇ! 宿題やってないっていうから、特別サービスでノート見せてあげたのに、破くってなんなの!?」
男子生徒「だ、だから謝ってるじゃねーか」
結衣「謝ればいいってわけじゃないでしょ!」
バチンバチンと頬を叩く結衣。
男子生徒「ぶべ! だから、ごめっ! ぐあっ!」
結衣「ったく!」
柊「な、なあ、結衣。俺も……その、悪いんだ」
結衣「……はあ。もう、先生来るから。散らばったノート拾い集めて」
柊「あ、ああ……」
柊がノートを拾い集める。
柊「ほら」
結衣「ありがと」
優愛「……」
場面転換。
結衣と優愛が並んで歩いている。
優愛「ねえ、結衣」
結衣「なに?」
優愛「あんたさー。結城のこと、好きなの?」
結衣「はああ? な、な、なんでそんなことになるの?」
優愛「いや、だって、ほら。結衣って、妙に結城に甘いじゃない。だから、好きなのかなーって」
結衣「……ああ、そのこと」
優愛「理由があるんでしょ?」
結衣「それは……」
そのとき、遠くから柊の声が聞こえてくる。
柊「お願いだ! もっと俺をなじってくれ!」
女性「ちょっと止めてってば!」
それを遠くから怪訝に見る優愛。
優愛「……結城だ。あいつ、何やってんの?」
結衣「はあ……」
女性「汚い手で触らないで!」
柊「もっと! もっと、きつい言葉で!」
結衣「あいつさー。超ドMなんだよね」
優愛「……」
結衣「だから、怒ったら、逆にご褒美になっちゃうのよ」
優愛「だから、逆に甘い顔してるの?」
結衣「そう」
優愛「じゃあ、結城のことは……?」
結衣「どっちかって言うと嫌いだよ」
優愛「……そっか」
終わり。