あの星を見上げて
- 2022.11.03
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:2人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
美月(みづき)
碧人(あおと)
■台本
ガチャリとドアを開けて美月が部屋に入って来る。
ドサリとベッドに倒れこむ。
美月「あー。疲れた……」
寝返りを打つ、美月。
美月(N)「仕事……辞めたいなぁ。私、なんで頑張ってるんだろ」
美月「あっ!」
起き上がって、カバンからスマホを出す。
操作して。
美月「……メールなし、か」
また寝転がる美月。
美月(N)「はあ……。もう3ヶ月か。最後に連絡来たの。まあ、あいつなら、珍しくはないんだけど」
美月「……ご飯食べなきゃ。……でも、面倒くさいなぁ」
美月(N)「あいつの卵焼きが食べたい。丸くて、月のような卵焼き……。笑っちゃうほど甘くて、びっくりするほどフカフカ」
美月「バカ。……寂しいぞ」
美月(N)「何がすぐ戻るよ。何が寂しい思いはさせないよ。今、めちゃくちゃ寂しいよ。……碧人」
起き上がって、ベランダの窓を開けて、外に出る。
美月「……」
美月(N)「なにが、寂しいときは星を見ろよ。見たから、なんだっていうの」
そのとき、スマホの着信音がする。
美月「え? 碧人?」
スマホの通話ボタンを押す。
美月「碧人!?」
碧人「よお、美月」
美月「……なんか、用?」
碧人「あー、いや、お前が寂しがってるかなーって思って」
美月「……バカ。そう思うなら、もっと、メールとかしなさいよ」
碧人「俺って、文字打つの苦手だから」
美月「苦手って……。それで、彼女に寂しい思いをさせてもいいっていうの?」
碧人「だから、今、電話してんじゃねーか」
美月「……ギリギリだよ、ギリギリ。もう、別れようかって頭を過ったんだから」
碧人「すまんすまん。でも、美月なら少しくらい連絡しなくても大丈夫かなって思ってさ」
美月「3ヶ月よ、3ヶ月!」
碧人「だから、ごめんって。……それより、美月」
美月「なに?」
碧人「……こっちに来るか?」
美月「……ううん。もう少し頑張ってみる」
碧人「そっか」
美月「うん」
碧人「……」
美月「ねえ、碧人」
碧人「ん?」
美月「ありがとね」
碧人「なにが?」
美月「……ううん。なんでもない」
碧人「美月、覚えてるか。どんなに遠くにいても、同じ星を見ることができるって」
美月「うん。覚えてるよ」
碧人「同じ星を見ると、どんなに離れててもお互いの気持ちが通じるんだ」
美月「……なにそれ。嘘くさい」
碧人「おいおい。せっかく、人がロマンチックな事言ってるのに」
美月「クサイ台詞はあんたらしくないわよ」
碧人「そっか」
美月「でも……離れてるのに、同じ星を見るなんて、ちょっと素敵だね」
碧人「ああ……」
そのとき、キラっと流れ星が流れる。
美月・碧人「あ、流れ星!」
碧人「……あはは」
美月「……ふふ」
碧人「……なあ、美月」
美月「大丈夫だよ、碧人。ちゃんと、通じた」
碧人「……そっか」
美月「……私の想いも通じてるよね」
碧人「もちろん」
美月(N)「碧人。大好きだよ」
終わり。