放課後の居残り

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■概要
人数:2人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、片思い、シリアス

■キャスト
幸也(こうや)
有紀子(ゆきこ)

■台本

放課後の学校の教室。

教室には幸也以外、誰もいない。

学校のチャイムの音。

幸也「……もう、4時かぁ。さすがに来ないかな」

幸也がカリカリと答案に答えを書き込んでいく。

幸也「えーっと、問3は……4かな」

カリカリと答案に答えを書き込んでいく幸也。

そのとき、ガラガラとドアが開く。

幸也「あっ!」

答案に消しゴムをかける幸也。

有紀子「あれ? 幸也じゃん。一人で何してるの?」

幸也「あははは。居残り。この前の国語のテスト、点数悪くてさ」

有紀子が歩いて来て、幸也の前の席に、幸也の方を向いて座る。

有紀子「ふーん。幸也って、他の教科は点数良いのに、国語だけホント、ダメだもんね」

幸也「あははは……」

有紀子「で、どうなの? 問題解けた?」

幸也「いや、それが……」

有紀子「あ、白紙じゃない! 1問も解けないの?」

幸也「……恥ずかしながら」

有紀子「もう、仕方ないなぁ。ここは国語だけはいつも満点の私が教えてあげる!」

幸也「ホント! ありがとう!」

有紀子「どれどれ? えーっと、この漢字は『えいこう』って読むのよ」

幸也「へー。栄光かぁ。有紀子ちゃんはすごいな。こんな難しい漢字、読めるなんて」

有紀子「べ、別に大したことないわよ」

幸也「二問目はわかる?」

有紀子「えーっとね……。って、ちょっと! 全部、私に解かせる気? ちょっとはあんたも考えなさい!」

幸也「あ、そうだね」

有紀子「えっと……」

幸也「……」

有紀子「……ちょっと幸也」

幸也「え? なに?」

有紀子「私の顔見てないで、ちゃんと考えなさいって言ってんの!」

幸也「あ、うん。わかったよ……」

有紀子「……」

幸也「……」

有紀子「……それにしてもさー」

幸也「ん?」

有紀子「放課後の教室って、ホント静かだよね」

幸也「……そうだね。いつもの騒がしい教室と同じなんて信じられないよ」

有紀子「私はみんなでワイワイ、うるさい教室も好きだけど、こうやって静かな教室も好きかな」

幸也「僕もだよ」

有紀子「まあ、あんたはいつも教室で騒ぐことないし、静かだもんね」

幸也「ははは……」

有紀子「あーあ。5年になったら、クラス替えかー。やだなー」

幸也「3年生のときも、同じこと言ってたよ」

有紀子「う、うるさいわね! 私は今のクラスが気に入ってるの!」

幸也「……僕は5年になっても、有紀子ちゃんと同じクラスになりたいな」

有紀子「え? それって……」

幸也「……」

有紀子「5年になっても私に国語を教えて欲しいってこと?」

幸也「うっ! まあ、そうだね……」

有紀子「ダメだよ。そこは私を頼るんじゃなくて、ちゃんと自分で勉強しないと」

幸也「う、うん。わかってはいるんだけどね。でも、有紀子ちゃんの教え方が上手いから、ついつい頼っちゃうんだよね」

有紀子「え? そ、そう?」

幸也「僕はすごい上手いって思うよ。有紀子ちゃん、先生になったら?」

有紀子「あはははは。大げさだって。でも、まあ、考えてみてもいいかなー」

幸也「うんうん。絶対、合ってると思う」

有紀子「……でもなー。他の教科の点数が悪いからなー」

幸也「あー、まあ、そこは……。うん」

有紀子「って、あ! もうこんな時間。帰ってアニメ見たいのに! さっさと終わらせるよ!」

幸也「う、うん」

場面転換。

有紀子「うーん! あと残り2問なのにー」

幸也「これは難しいね」

有紀子「アニメが―! アニメが―!」

幸也「ありがとう、有紀子ちゃん。残り2問は自分で考えるから、有紀子ちゃんは帰ってもいいよ」

有紀子「え? でも……」

幸也「大丈夫大丈夫。何とかするから」

有紀子「そ、そう? ごめんね。じゃあ、頑張って」

幸也「有紀子ちゃん。ホント、いつもありがとね。一緒に問題解いてくれて」

有紀子「ううん。気にしないで。私、国語得意だから」

幸也「あ、あのさ。よかったら、国語を教えてくれたお礼に、僕が違う教科の勉強、教えようか?」

有紀子「え? ホント?」

幸也「うん」

有紀子「えへへ。じゃあ、甘えちゃおうかな。ぶっちゃけ、算数ヤバいんだよね」

幸也「今度、放課後に教えるよ」

有紀子「ありがと! あっ! ごめん、もう行くね」

幸也「うん」

有紀子「バイバイ。また明日ね」

幸也「バイバイ。また明日」

有紀子がカバンを持って、走って教室から出ていく。

有紀子の足音が聞こえなくなる。

幸也「……さてと」

カリカリと問題用紙に回答を書いていく幸也。

幸也「よし、終わり! 僕も帰ろうっと」

立ち上がる幸也。

幸也「……次は一緒に帰ろうって、誘ってみようかな……」

終わり。

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