譲れない勝負

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
凜(りん)
葵(あおい)
真央(まお)
萌(もえ)

■台本

凜(N)「それは突然の出来事だった。……いや、萌の一言から、すべてが始まった」

河原を歩く凜、萌、葵、真央。

萌「あ、BL本だ」
葵「……ふ、ふーん」

凜(N)「萌の言葉に、葵が興味ないっていうジャブを打つ。……声が動揺してるので、意味ないけど」

真央「えー、どこどこ?」

凜(N)「今度は真央がストレートな反応をすることでカウンターを打ってきた」

萌「ほら、あそこ! 橋の下」
凜「よく、ここから見えるな」
萌「えへへ。私、視力10,0だから」
凜「視力としては聞いたことない数字だな」
萌「あれ? 1,0だっけな?」
凜「それだと普通だな」
真央「それより、近くに行って見てみようよ」
葵「……真央、興味あるの?」
真央「葵はないの?」
葵「……」

凜(N)「ふっ。策士策に溺れたな。さあ、どう返す、葵?」

葵「ま、まあ、ちょっとはあるかな。なんていうかな、勉強っていうか、教養? そういう趣味じゃないけど、知っておくべきだよね、女の子としては」

凜(N)「なるほど。そう来たか」

萌「見に行くなら、早く行こうよ」
真央「うん、行く行く」

4人がぞろぞろと橋の下に移動する。

萌「あれ? 一冊だけだね」
真央「ねえ、私が、持って帰っていいよね?」
萌「え?」
葵「ちょ、ちょっと、真央。なんで、当然のようにお前が持っていこうとしてるの?」
凜「そうだ、そうだ。大体、最初に見つけたのは萌だぞ」
萌「じゃあ、私がもらってくね」

凜(N)「しまった! 墓穴掘った!」

葵「あー、いや、こういうのって、初めに見つけたから持ってくって、なんか違わない?」
凜「そうそう。私たち、友達だろ? ここはちゃんと勝負して決めないと」
萌「うん、私たち友達だもんね。勝負して決めよっか」

凜(N)「よし、かかった。話し合いじゃなく、あくまで勝負ということに持ち込めた。これで勝てば、興味がなくても持って帰れるという予防線を張れた」

葵「……そうだね。勝負しようよ」

凜(N)「よし、葵も乗ってきた。表立ってBLに興味を堂々と示しているのは萌と真央の2人。話し合いだと、どっちかにしかならないから、勝負という点では葵にも利がある。乗ってくると思ったぞ」

凜「じゃあ、なんの勝負する?」
真央「第一問! 黒いバスケで、テツとカップリングフラグが立ってないのは、次のうち誰?」

凜(N)「おっと、そうきたか。いきなり問題を出すことで自分のフィールドに無理やり持ち込んだか。勢い的に、これを覆すことはできなさそうだ。……が」

真央「1、水神。2、将太、3、清太郎。4、青田」
凜「4の青田だ」
真央「うえぇ! なんで知ってるのぉ!?」
凜「私の勝ちだな」

凜(N)「ふん。その辺の知識で勝てると思ったんだろうが、甘い。もちろん、私はその辺は確実に網羅している。さらに、私の勝ちを名乗ったことで、真央の蹴落としに成功した」

萌「はーーー! 見て! 吊り橋!」

凜(N)「ほう。萌はあやとりで勝負をかけてきたか。しかし、それも握手だろ」

ババババとあやとりをする凜。

凜「……スカイツリー」
萌「えええ! なに、それぇ!」
凜「ふっ、私の勝ちだな」

凜(N)「今までかくして来たが、私もあやとりは得意なのだ。幼稚園の頃のあだ名が、野比凜だったからな」

凜「……あと一人」
葵「やっぱり、あんたが残ったわね」
凜「葵は誰とも勝負してないけどな」
葵「最後の勝負はこれよ! 最初はグー!」
凜「くっ!」

凜(N)「まさか、ここで、完全に運任せの勝負に来るとは! しかもこの勢いだと待ったをかける隙も無い!」

葵「じゃん、けん、ぽん!」
凜「私の勝ち! なんで負けたか、明日まで考えておけ」
葵「く、くそ……」

葵が膝から崩れ落ちる。

凜「では、賞品は貰っていくぞ」

凜がBL本を手に取る。

萌「えーー! ちょっとだけ、中、見せてよ!」
凜「ま、待て! 引っ張るな、破れるだろ!」
真央「ちょっと待って。これ、変だよ」
凜「なにがだ?」
真央「ほら、見てよ、中身」

パラパラとBL本のページをめくる真央。

凜「あ……」
萌「教科書だ」
葵「え? ってことは、教科書にBL本のカバーをしてたってこと?」
真央「うん。そうみたい」
凜「普通、逆だろ!」

本を地面に叩きつける凜。

終わり。

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