私は名探偵 8話

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
ライリー
ティーナ
ビル

■台本

ライリー(N)「私の名前はライリー。名探偵と呼ばれて、早、半世紀が経った。数々の事件を解決し、多くの犯人を逮捕してきた。現在は探偵を引退し、毎日を気ままに過ごしている。……はずなのだが」

部屋の中。

ガチャリとドアを開けてライリーが入ってくる。

ティーナ「あ、先生。ご足労をおかけして、申し訳ありません」

ライリー「ティーナくん。私はもう探偵を引退して、隠居した身だ。事件だと呼び出されても困るのだよ」

ティーナ「どうしても事件の謎が解けないんです。なので、先生に解いていただこうかと思って、お呼びいたしました」

ライリー「……私の話を聞いていたのかね?」

ティーナ「事件は3日前。つまり、土曜日の21時に起こりました」

ライリー「待ちたまえ、ティーナくん」

ティーナ「え? もしかして、これだけの情報で、もう解けたのですか? さすが先生です」

ライリー「いや、日時だけでは無理だよ」

ティーナ「では、続けます。第一の被害者はベン・マッキード。35歳で医者をやっていました」

ライリー「だから、待ちたまえ、ティーナくん」

ティーナ「え? もしかして、これだけの情報で、もう解けたのですか? さすが先生です」

ライリー「いや、被害者の情報だけでは無理だよ」

ティーナ「では、続けます」

ライリー「待ちたまえ」

ティーナ「なんでしょう?」

ライリー「私は君にこういったはずだ。君はもう一人前の探偵だと」

ティーナ「恐れ多いですが、確かにそう言っていただけました」

ライリー「君は私を十分に超えている。君に解けないのであれば、私にも解けんよ」

ティーナ「いえ、そうは思いません」

ライリー「私が言っているのだから、確かだろう?」

ティーナ「私は先生の足元にも及びません」

ライリー「そんなことはないさ」

ティーナ「では、とりあえず、事件の概要を聞いていただけませんか? それでもし、先生にも解けないのであれば、私も諦めます」

ライリー「はあ……。結局、聞くことになるのか。わかった。話しなさい」

ティーナ「ありがとうございます。では、続きを話します。第一の被害者が出た状況は……」

場面転換。

ティーナ「……というのが、一連の事件の概要です」

ライリー「なるほどな」

ティーナ「いかがですか?」

ライリー「やはり、君は私を買いかぶり過ぎだ。私にもさっぱりわからんよ」

ティーナ「……そうですか」

ライリー「恐ろしいことに、私が現役だったころよりも犯罪は高度になっているな」

ティーナ「……はい」

ライリー「おそらく、犯人は我々が知らないような道具を使っているのだと思う。それが何かがわからないうちは、手の施しようがないな」

ティーナ「では、その何かを探すことから始めるべきでしょうか?」

ライリー「いや、それは広い砂漠の中から一粒の砂糖を探すに等しい行為だ。アテもないのに探しても見つかるわけがない」

ティーナ「……探偵はもう、時代遅れということでしょうか?」

ライリー「いや、そんなことはないさ」

ティーナ「といいますと?」

ライリー「探偵と言うものは、事件の犯人さえ見つければいい。どうやったかなどは、警察に任せればいい」

ティーナ「ですが……」

ライリー「まあ、見てなさい」

場面転換。

別室。

ビル「なんだよ、俺だけ、こんなところに呼び出してよぉ」

ライリー「あなたに自首してもらおうと思いまして」

ビル「自首だと?」

ティーナ「先生は全ての謎を解かれたんです」

ビル「な、なんだと?」

ライリー「さあ、諦めて自首しなさい。その方が罪は軽くなる」

ビル「ちょ、ちょっと待てよ。謎を解いただと? 嘘を言うなよ」

ライリー「残念ながら、本当に解いたのです」

ティーナ「事件の概要を話したら、すぐに解いてくれました」

ビル「……じゃ、じゃあ、聞かせてくれよ。犯人がどんなトリックを使ったのかよぉ」

ライリー「いいでしょう。まず、犯人は停電を利用して……」

場面転換。

ライリー「……というトリックです。つまり、これができたのは、あなたしか……」

ビル「……ぷっ!」

ライリー「ん?」

ビル「あははははははははははは!」

ライリー「何がおかしいのかね?」

ビル「違う! ぜんっぜん、違う! 大外れ!」

ライリー「外れ? どういうことかね?」

ビル「そんなトリックじゃないってことだよ」

ライリー「理論的には矛盾しているところはないはずだ。どこがどう違うのかね?」

ビル「え? えっと……あのとき、ハシゴなんかなかったはずだ」

ライリー「だから、それはカーテンの裏に隠したのだと説明したはずだが?」

ビル「いやいや、そんなのバレるって。誰かがカーテンの裏を見たらどうするんだよ?」

ティーナ「ですが、実際にカーテンの裏を見た人はいません。ハシゴがなかったという証拠はないということです」

ビル「あー、いや、そうじゃなくってさー。……例えば、例えばだからな!」

ライリー「うむ。話を聞こう」

ガサガサとポケットを探るビル。

ビル「これ。アラミド繊維っていう、ピアノ線よりも固い糸なんだけど、これを天井の隙間から通して、こうやってひっかければ、ハシゴを使わなくても可能だろ?」

ライリー「なるほど……。確かに可能だが、どうやって通すのかね? あらかじめ用意するのは無理だろう?」

ビル「あー、いや、それは……」

ライリー「それが証明できないのであれば、君の理論は間違えていることになる。やはり、ハシゴを使っての犯行で……」

ビル「こういうのがあるんだよ!」

ビルがステッキを出す。

ライリー「そのステッキがどうかしたのかね?」

ビル「ここをこうやってひねれば、仕掛けが出てくるんだ。で、こうやって、仕掛けにアラミド繊維をセットして……」

バシュッと打ち出す音。

ビル「こうすれば、うまく通すことができるだろ?」

ライリー「なるほど。それを使えば、君がいうことがた正しいと言えるだろうな」

ビル「だろ?」

ライリー「では、ティーナくん。警察に連絡して、引き取りに来てもらいなさい」

ティーナ「はい」

ビル「ちょっと待て! なんでだよ!? あんたのトリックが間違ってるって、ちゃんと証明しただろ?」

ライリー「ええ。ですが、同時にあなたが犯人だということも証明しましたよね?」

ビル「え?」

ティーナ「既に容疑者の荷物検査はさせていただいています。アラミド繊維と仕掛けを持っているのはあなたしかいません」

ビル「し、しまったー!」

場面転換。

ティーナ「お見事でした。まさか、容疑者全員分の偽のトリックを考え出すなんて思いませんでした」

ライリー「そこは経験でカバーしたまでだよ」

ティーナ「犯人ではない場合は、ずっとオロオロして終わりでしたからね」

ライリー「本当の犯人だけだよ、反論ができるのは」

ティーナ「本当のトリックがあるからですね」

ライリー「ああ。自信のあるトリックならなおさら披露したくなるものだ」

ティーナ「なるほどです」

ライリー「探偵だからと言って、謎を解くことだけに固執してはならない。あくまで、犯人を見つけるのが探偵の仕事だ」

ティーナ「勉強になります! また、事件があったときはお願いします!」

ライリー「……いや、私はもう引退した身だし、君の方が探偵としての腕は上で……」

ティーナ「現に先生は私が解決できなかった事件を解決してくれました。やはり探偵として先生の方が上です」

ライリー「……しまった」

ライリー(N)「私の名前はライリー。名探偵と呼ばれて、早、半世紀が経った。数々の事件を解決し、多くの犯人を逮捕してきた。現在は探偵を引退し、毎日を気ままに過ごすはずなのだが……それはいつになるのだろうか」

終わり。

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