三匹の豚
- 2023.02.01
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、童話、コメディ
■キャスト
一郎(いちろう)
二郎(じろう)
三郎(さぶろう)
オオカミ
ナレーション
■台本
ナレーション「昔々。あるところに一郎、二郎、三郎という3匹の豚がおりました。その豚たちは家でニートをしていたのですが、ついに母親から家を追い出されてしまったのです」
一郎「急に出てけなんて、ひでーよな」
二郎「まあ、家に三匹も大食らいのニートがいれば当然かも」
三郎「それに母さん、三年前くらいから、働けって怒ってたしね」
一郎「で、どうする?」
二郎「んー。とにかく住む家が必要だよね」
一郎「だな。よし、三郎、頼んだ!」
三郎「嫌だよ! なんでいつも僕ばっかりに押し付けるんだよ」
二郎「まあまあ。俺たちもう大人なんだし、自分のことは自分でするってことでいいんじゃない?」
一郎「……さっきまでこどおじだった俺たちに、ハードル高すぎねーか?」
二郎「そんなこと言っても仕方ないって。戻っても絶対、母さん家に入れてくれないだろうし、下手したらトンカツにされるよ」
一郎「はー。しゃーない。俺は段ボール集めて家作るわ」
二郎「じゃあ、俺は頑張って木で作ろうっと」
三郎「僕はレンガの家を悪い奴から奪い取るよ」
ナレーション「こうして、三匹の豚はそれぞれ自分たちで家を建てました」
場面転換。
ビューという風の音。
一郎「うお。寒ぃ。やっぱ、段ボールの家はレベルが高すぎたか? 下手したら凍死するな」
そこにオオカミの足音が近づいてくる。
オオカミ「豚くん、豚くん。俺を中に入れておくれ」
一郎「うおっ! オオカミじゃん! 無理無理。絶対開けねーよ」
オオカミ「そうかいそうかい。ま、開けてもらわなくても……ていっ!」
オオカミが段ボールの家を蹴り壊す。
一郎「うわっ! 俺の家が!」
オオカミ「段ボールごときで俺から身を守れるとでも思ったのか? じゃあ、いただきまーす」
一郎「うわー! 助けてくれー!」
オオカミ「あっ! 待てこら!」
一郎が走って逃げるのを追うオオカミ。
場面転換。
ドンドンドンと扉をたたく音。
一郎「二郎! 開けてくれ! マジやべえ!」
ガチャリと扉を開ける二郎。
二郎「なに? やっぱり段ボールの家は無理があったの?」
一郎「ある意味正解だけど、とにかく入れてくれ」
二郎「まあ、いいけど」
一郎が家に入る。
一郎「すぐにドア閉めて、鍵を掛けろ」
二郎「え?」
一郎「早く!」
二郎「よくわからないけど、わかった」
ガチャンと鍵が掛けられる音。
一郎「ふう。助かった」
二郎「なにがあったの?」
するとすぐにドンドンドンと扉がノックされる。
オオカミ「豚くん豚くん。俺を中に入れておくれ」
二郎「うわ。この声ってオオカミじゃん」
一郎「俺、危なく食われるところだったよ」
二郎「まあ、段ボールの家なら防衛にはならないよね。てか、逆に火をつけられたら豚の丸焼きが完成だよ」
オオカミ「あ、その手があったか」
一郎「……あいつが馬鹿でよかった」
二郎「……一郎兄さんも人のこと言えないと思うけどね」
オオカミ「豚くん豚くん。入れておくれよー」
二郎「いや、入れるわけないし」
オオカミ「開けてくれたら、フィギュアあげるよ」
二郎「え? マジで!?」
一郎「嘘に決まってんだろ!」
二郎「なんだと! くそ、卑怯な奴め!」
オオカミ「ちっ! ひっかからなかったか」
スタスタとオオカミが去っていく音。
一郎「お? 諦めて帰ったか」
二郎「そうみたいだね」
するとパチパチという音が聞こえる。
一郎「え? 何の音だ?」
二郎「さあ?」
一郎「なんか熱くないか?」
二郎「確かに」
一郎「煙だ……」
二郎「まさか……」
オオカミ「ひひひ。豚の丸焼き完成ってか」
一郎「くそ、家に火を付けやがった!」
二郎「なんて頭の良い奴だ!」
一郎「いや、お前が気づかせたんだけどな」
二郎「とにかく裏口から逃げよう」
一郎「そうだな」
場面転換。
三郎「なるほど。それで僕の家に逃げ込んだと」
二郎「裏口作ってなかったらヤバかった」
一郎「多分、この後、オオカミが来るから絶対に開けるなよ」
三郎「あははは。オオカミだってわかってるのに開けないよ」
ドアがノックされる音。
オオカミ「豚くん豚くん。俺を中に入れておくれ」
二郎「来た!」
オオカミ「入れてくれたら、同人誌あげるよ」
三郎「え? マジで!?」
一郎・二郎「嘘に決まってるだろ! 開けるなよ」
三郎「嘘だったの!? なんて卑怯な奴なんだ!」
オオカミ「ちっ! 引っかからなかったか」
スタスタと歩き去る音がする。
一郎「今度こそ、諦めたか?」
二郎「レンガの家なら火も付けられないし、壊せないし、大丈夫だと思う」
三郎「って、思うでしょ?」
一郎「なんだ?」
三郎「きっと、煙突から中に入ってくるよ」
二郎「なるほど。じゃあ、どうするんだ?」
三郎「ふふふ。煙突の下の暖炉のところにお湯を沸かした鍋を置いておくんだよ。そしたら、そこに落ちて大やけどってわけ」
一郎「おお。三郎、頭いいな」
三郎「じゃあ、さっそく用意するね」
場面転換。
ぐつぐつとお湯が煮たる音。
三郎「これで準備オッケー。あとはオオカミが落ちてくるのを待つだけだね」
するとヒューっとオオカミが落ちてくる音。
オオカミ「うわーーーー!」
三郎「あ、落ちてきた!」
ばっしゃんと鍋の中に落ちるオオカミ。
オオカミ「うぎゃー! 熱いーー!」
二郎「やったぁ! 大成功!」
オオカミ「というと思ったか?」
一郎「へ?」
オオカミ「ばばーん! 平気でしたー!」
三郎「あ、耐熱スーツ!」
一郎「おい! ズルいぞ! そこは火傷して逃げていくところだろ!」
オオカミ「ふふ。いつから自分たちは食べられないと思い込んでたんだ?」
二郎「く、くそ!」
オオカミ「いただきまーす!」
三郎「ふんっ!」
オオカミ「ぐあっ!」
三郎に殴られ吹き飛ぶオオカミ。
オオカミ「な、なんだと!? 強い……」
三郎「いつから豚がオオカミよりも弱いと思い込んでたんだ?」
オオカミ「いや、それはちょっとズルいと思うぞ」
三郎「問答無用」
オオカミ「ぎゃあああーーーー!」
場面転換。
バンと扉が開いて、オオカミが逃げていく。
オオカミ「いつか絶対に食ってやるー! 覚えてろー」
三郎「ふう。これで一件落着かな」
グウと、三匹のお腹が鳴る。
三郎「……家問題は解決したけど」
二郎「食べ物問題は解決してない」
一郎「……しょうがないな」
一郎・二郎・三郎「働くか」
ナレーション「こうして三匹の豚は職安に行き、働くことになりましたとさ。めでたしめでたし」
終わり。