怪盗バッドボーイズ

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
田城 春馬(たしろ はるま)
鏑木 環(かぶらぎ たまき)
真下(ました)

■台本

職員室。

環「はあ……」

春馬「鏑木先生、どうされました?」

環「田城先生、またやられましたよ。ほら」

ペラリとテスト用紙を晴馬に渡す環。

春馬が受け取って。

春馬「……テストの答案用紙? すごい、3人とも100点じゃないですか!?」

環「だから、問題なんですよ」

春馬「というと?」

環「問4の記述の回答を見てください」

春馬「……えーと」

ペラペラとテストを見ていく晴馬。

春馬「え? 全部同じ?」

環「そうなんです。3人とも、一字一句、まったく同じ文章なんです」

春馬「……どういうことです? あっ! カンニング!?」

環「なら、まだいいんですけど」

春馬「違うんですか?」

環「この子たち、事前にテストの問題用紙を盗んでるんです」

春馬「ええ? どういうことですか?」

環「つまり、テストの問題を手に入れて、その回答を頭に入れてテストに臨んでるってわけです」

春馬「……確かにカンニングよりタチが悪いですね。ただ、カンニングではなく、事前にテストを盗まれたと思う理由はなんですか?」

環「これです」

一枚のカードを出す環。

春馬「……テストの問題はいただいた。怪盗バットボーイズ?」

環「問題を盗んだ時は必ずそのカードを置いていくんですよ」

春馬「……随分とふざけてますね。罰として0点にしてやればいいんじゃないですか?」

環「そうしたいんですけど……」

春馬「できない理由があるんですか?」

環「証拠がないんです。その3人がやったって」

春馬「……でも、記述が同じなんて」

環「確率はかなり低いですけど、まったく0というわけではないですよね?」

春馬「ですが、天文学的な数字ですよ。一字一句、3人が同じ文章を書くなんて」

環「ですが、それが盗んだ証拠っていうのは弱いです。その証拠にわざわざ、同じにしてるんですから」

春馬「……あ、確かに。問題がわかっているなら、普通は3人とも少し文章を変えますよね」

環「だけど、あえて同じにしてるってことは、これも挑発なんです。あの子たちからの」

春馬「教頭に相談はしたんですか?」

環「こんなこと相談したら、たるんでるって怒られるだけですよ」

春馬「確かに……」

環「波風立たないようにするには、放っておくしかないんですけど、なんか悔しくて……」

春馬「問題をパソコンで作って、当日までプリントしないっていうのはどうですか?」

環「……それ、やってるんですけど、ダメでした」

春馬「え? まさか、パソコンのロックも外してくるってことですか?」

環「そうなんです。何回、パスワードを変えても突破されて……」

春馬「ある意味、凄い技術と情熱ですね」

環「……もっと違う方向に、その情熱を使って欲しいんですけど」

春馬「家のパソコンで作って、こっちに送るのは……あー、禁止されてるからダメですよね」

環「正直、そのルールはあってないようなものですけど、それをやると負けた気がして」

春馬「鏑木先生的には、一泡吹かせたいと?」

環「……できるなら」

春馬「なるほど。……では、いい考えがあるので、次のテストのとき、私に任せてくれませんか?」

環「え? ええ、いいですけど……」

春馬「えっと、怪盗バットボーイズは真下、桜木、田中の3人ですね」

環「はい」

春馬「ふふふ。一泡吹かせてやりますよ」

場面転換。

廊下を歩く晴馬。

そこに真下が歩み寄ってくる。

真下「ねえ、田城先生」

春馬「ん? どうした、真下」

真下「次の、うちのクラスの社会のテスト、先生が作るんでしょ?」

春馬「おお、耳が早いな」

真下「……もしかして、先生、鏑木先生と付き合ってるの?」

春馬「ははは。邪推しすぎだ。単なる罰ゲームだよ、罰ゲーム」

真下「罰ゲーム?」

春馬「そ。負けた方が、テストを作るって勝負だったんだ」

真下「ふーん。じゃあ、次のテストの問題は田城先生のパソコンに入ってるんだね?」

春馬「ああ。そうだ。実はもう、作ってあるんだぞ」

真下「……そうなんだ。仕事早いね」

春馬「間に合わなかったら洒落にならんからな」

真下「ありがとう、じゃあ、俺、帰るわ。じゃあね」

春馬「ああ。気を付けて帰れよ」

真下が走っていく。

春馬「……さてと。これで動き出すな」

場面転換。

ガラガラとドアを開けて春馬が入ってくる。

環「お疲れ様です」

春馬「お疲れ様です。……早速ですけど、真下が探りを入れてきましたよ」

環「え? 今回、田城先生が問題を作るって、バレたんですか?」

春馬「うーん。凄い、情報網ですよね。子供とは思えない」

環「えっと、どうしましょう? 私、今日からテストの日まで泊まり込みで、先生のパソコンを見張ってましょうか?」

春馬「あははは。いやいや、いいですよ。そんなことしなくても」

環「でも……」

春馬「まあ、見ててください」

場面転換。

ガラガラとドアを開けて職員室に入ってくる晴馬。

春馬「……俺が一番か」

席に座って、ノートパソコンを開く。

春馬「お、凄いな。もう、忍び込んだのか」

そこにドアが開いて、環が入ってくる。

環「おはようございます」

春馬「あ、おはようございます」

環が席に座る。

春馬「あいつらやりますね」

環「え?」

春馬「もう、問題用紙、取ってったみたいです」

春馬がカードをピッと出す。

環「あ、怪盗バットボーイズのカード……」

春馬「うーん。結構、パソコンにガード掛けたんだけどなぁ。一晩で解くなんて、凄いな」

環「……今回のテスト、中止にしましょうか?」

春馬「いえいえ。大丈夫ですよ。それより、前に渡してあったテストをそのまま使ってください」

環「わ、わかりました……」

場面転換。

廊下を歩く晴馬。

そこに真下が歩み寄ってくる。

真下「田城先生、今回はやられたよ」

春馬「おお、真下」

真下「まさか、パソコンに入ってたのは偽物だったなんてね。テストを見た時、ビビったよ」

春馬「はははは。俺が作るから俺のパソコンに入ってるって先入観を利用したんだよ」

真下「今回は俺たちの負け。次は勝つからね!」

真下が走っていく。

春馬「……次は、か」

場面転換。

ガラガラとドアを開けて春馬が入ってくる。

春馬「あ、鏑木先生、どうですか、テストは?」

環「見てください! 記述問題、3人とも文章が違います」

春馬「よかった。さっき、真下から負け宣言されましたよ」

環「でも……」

春馬「なんですか?」

環「……これ」

テストの答案用紙を渡してくる環。

春馬「……え? 3人とも100点?」

環「はい。普通に解いて、100点満点です」

春馬「……勝負に勝って、テストで負けた感じだな」

環「……普通に頭いいですからね、あの3人」

春馬「……普通にテスト、受けろよ」

終わり。

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