私は名探偵 6話

〈前の10枚シナリオへ〉   〈次の10枚シナリオへ〉

〈声劇用の台本一覧へ〉

■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
ライリー
ティーナ
ケリー
男性1~2
女性

■台本

ライリー(N)「私の名前はライリー。名探偵と呼ばれて、早、半世紀が経った。数々の事件を解決し、多くの犯人を逮捕してきた。現在は探偵を引退し、毎日を気ままに過ごしている。……はずなのだが」

洋館の談話室。
パチパチと暖炉の火の音が響く。

ティーナ「先生、どうぞ、コーヒーです」
ライリー「ありがとう、ティーナくん。だが、なにも君が給仕のようなことをしなくてもよいだろう」
ティーナ「いえ。助手として当然のことです」
ライリー「……いや、助手の仕事ではないと思うのだが……」
ケリー「申し訳ありません。本来なら、お招きした私の役目だったのですが」
ティーナ「あ、いえ。すみません、ケリーさん。勝手にキッチンを借りてしまって」
ライリー「ティーナくん。勝手にやったのかね?」
ティーナ「すみません。事件の下調べとして、キッチンを見ていたら先生の好きなコーヒーが置いてあったので……」
ライリー「……ティーナくん。事件の下調べもなにも、事件なんて起こっていないぞ」
ティーナ「起こってからだと、初動に遅れが出ます。凶器に使われそうなものはキッチンに多いのです。何が置いてあるのかは写真に撮ってあるので、証拠として使えますよ」
ケリー「……」
ライリー「ケリーさんも困っているだろう。事件が起こる前提で考えるのはやめなさい」
ティーナ「あ、すみません。こういうところでは、オーナーが犯人だということが多いので」
ケリー「……」
ライリー「……ティーナくん。余計失礼になっているぞ」
男性1「……あの、失礼。もしかして、警察の方ですかな?」
ティーナ「いえ。探偵です。名探偵です!」
ライリー「ティーナくん、やめなさい」
男性1「探偵……ですか?」
ティーナ「ライリーという名前は聞いたことがありますよね?」
ライリー「やめなさいと言っているだろう」
男性1「ええ! ライリー探偵ですか!? あの有名な?」
ティーナ「はい! そのライリー探偵です!」
男性1「すごい! おい、みんなっ! ライリー探偵が来ているぞ」
ライリー「あ、あの……」

ぞろぞろと招待客が集まってくる。

女性「まあ、ライリー探偵。噂は聞いておりますよ。解けなかった事件はなかったとか」
ライリー「いやいや、それは大げさ……」
ティーナ「はい! 先生に解けない謎はないんです!」
男性2「へー。あの、よろしければ、今まで担当した事件のお話を聞かせてくれませんか?」
ライリー「あ、いや……」
ティーナ「はい! いいですよ! 先生、どうぞ! サンシャイン事件のこととかどうですかね?」
ライリー「はあ……。まったく、君は」
男性2「是非、お聞かせ願いたいです」
ライリー「わかりました。……あれは」

場面転換。

ライリー「というわけで、執事が犯人だったというわけです」
男性1「なるほど。すごいですな」
女性「ええ。小説なんかよりも、よっぽど奇抜な事件だったんですね」

ケリーがお盆にたくさんのカップを載せてやってくる。

ケリー「どうでしょうか。少し、休憩されては。お茶をお持ちしましたよ」
男性1「おお! ちょうど、喉が渇いていたんですよ」
女性「私も」
ティーナ「私も、恥ずかしながら……」
ケリー「どうぞどうぞ」

みんなに紅茶を配るケリー。

男性2「(飲みながら)他には、どんな変わった事件があったんですか?」
ライリー「そうですな……。これはなんと小学校で起きた事件なのですが……」

場面転換。
周りからスース―という寝息が聞こえてくる。

ライリー「……」
ケリー「どうやら、みなさん、寝てしまったようですね」
ライリー「そのようですな」
ケリー「……ライリーさんは眠くならないのですか?」
ライリー「ん? そうですなぁ。言われてみると眠くなってきたような気がします」
ケリー「どうぞ、用意した部屋でお休みください。みなさんは私がお部屋に案内するので」
ライリー「そうですか。では、失礼して……」

グッと服を掴む音。

ティーナ「先生……。逃がしませんよ」
ライリー「ティーナくん。夢の中まで私を拘束するのはやめたまえ……」
ケリー「ティーナさんも、私が後で部屋にご案内するので……」
ライリー「いえ。もう少し、ここにいることにします。……助手を面倒を見させるわけにもいきません」
ケリー「そ、そうですか……」
ライリー「そういえば、ケリーさんはなぜ、私を招待されたのですか?」
ケリー「あー、いえ。大した理由はありませんよ。ただ、有名な探偵のライリーさんに会いたかっただけです」
ライリー「……そうですか」
ケリー「あの……こんなことを聞くのもなんですが、ライリーさんが難解だと思う事件はどんな事件ですか?」
ライリー「そうですなぁ。……やっぱり単純な事件でしょうか」
ケリー「単純な……ですか?」
ライリー「綿密な計画を練れば練るほど綻びは出るものです。ですが、単純な事件であればあるほど、犯人のミスがなく考える意味がなくなってしまうのですよ」
ケリー「そうですよね! やっぱり、そうでしたか!」
ライリー「……というと?」
ケリー「あー、いや、私、ずっと思ってたんですよ。犯人がなぜ、あんな凝った計画を立てるのかと。……もっと簡単にやって逃げればいいんじゃないかって」
ライリー「ははは。確かにそうですな」
ケリー「名探偵もそう思いますか! ははは。やっぱり、私は間違っていなかったんだ! 私は……がっ、ごほごほ!」
ライリー「大丈夫ですか? 冷えてしまったのですが、私の紅茶をどうぞ」
ケリー「す、すいません」

ケリーが紅茶を飲み干す。

ケリー「ふう」
ライリー「落ち着きましたか?」
ケリー「はい。……あれ? この紅茶って」
ライリー「ええ。さきほど、あなたに出された紅茶ですが」
ケリー「……ライリーさんは飲んでなかったということですか?」
ライリー「はは。ティーナくんがコーヒーを淹れてくれたのでそれを飲んでたのですよ」
ケリー「……」
ライリー「どうしました? 青い顔をして」
ケリー「……あー、いえ。なんでも……」
ライリー「ケリーさん? どうしました?」
ケリー「……」
ライリー「……寝てしまった? 随分と、急だな……」
ティーナ「……先生、置いていかないで……ください……」
ライリー「ふふふ。どこにもいかないさ」

場面転換。

ティーナ「申し訳ありません、先生。助手の分際で先に寝るなんて失態を」
ライリー「いや、別に気にすることじゃないさ。それより、なぜ、ケリーさんは警察に連れて行かれたんだ?」
ティーナ「えっと、招待客に睡眠薬を盛ったらしいです。それと、部屋から凶器らしきものが見つかったようです」
ライリー「……」
ティーナ「一応、殺人未遂というか計画があったのじゃないかと取り調べをするようです」
ライリー「……そうか」
ティーナ「それにしても、先生は凄いです」
ライリー「なにがだ?」
ティーナ「私が寝ている間に、事件を未然に防ぐなんて」
ライリー「……偶然さ」
ティーナ「では、私も警察の調書の手伝いをしてきます」

ティーナが部屋から出ていく。

ライリー「はあ……やれやれ。いつになったら私は探偵を引退できるんだ?」

ライリー(N)「私の名前はライリー。名探偵と呼ばれて、早、半世紀が経った。数々の事件を解決し、多くの犯人を逮捕してきた。現在は探偵を引退し、毎日を気ままに過ごしている。……はずなのだが」

終わり。

〈前の10枚シナリオへ〉   〈次の10枚シナリオへ〉