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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス

■キャスト
片岡 大智(かたおか だいち)
女神
寛人(ひろと)
小和(こより)
和泉(いずみ)
村人1~2
おじいさん
桃太郎
シンデレラ
王子
民衆1~2

■台本

部室内。

大智、寛人、小和が机で向かい合っている。

机の上には小説がプリントされた紙が広げられている。

大智「……ここさ、主人公の心情をもっと表現した方がいいんじゃないかな?」

寛人「あー、なるほどな。けど、そうなると文字数が規定から超えるんだよな」

小和「それなら、ここのシーンをカットしたら?」

寛人「うーん。そこかー、切りたくないんだよなー」

そのとき、バンとドアが開いて、和泉が入ってくる。

和泉「見てください! 片岡先輩、佳作に選ばれましたよ!」

大智「……」

寛人「マジか! やったな、大智」

小和「すごーい!」

寛人「まさか、あのバッドエンドが受けるなんてなー。すげーな」

大智「……」

寛人「なんだよ? 嬉しくないのか?」

大智「……いや、もちろん、嬉しいよ」

場面転換。

大智の部屋。

大智がベッドに寝転がる。

大智「……賞、辞退しようかな」

大智が目を瞑る。

場面転換。

周りは暗闇。その中にポツンと大智が立っている。

大智「あれ? どこだ、ここ?」

そこに女神が現れる。

大智「うわ! ビックリした!」

女神「……私は物語の神です」

大智「……ぷっ! あははははは」

女神「……」

大智「なんか、ベタベタな感じだな」

女神「驚かないのですね」

大智「だって、これ、夢だろ? なら、そんなに驚くこともないさ」

女神「そうですか……。それより、あなたは先ほど、賞を辞退するようなことを言ってましたが?」

大智「ん? ああ。そうだな。なんて言って辞退しようかな」

女神「賞を取ったことは嬉しくないのですか?」

大智「……半々かな」

女神「半々?」

大智「あ、やっぱり、7、3かな。嬉しいのが3」

女神「……それなら、なぜ、賞に出したのですか?」

大智「こういうのってさ、応募しているのが楽しいんだよ。お祭りが準備までが楽しいのと一緒で」

女神「……そうなのですか?」

大智「んー。伝わりづらいかな? そういえば、君って物語の神って言ってたよね?」

女神「はい」

大智「物語っていうのは、めでたしめでたしで終わるときが最高潮ってことだよ」

女神「……どういうことです?」

大智「物語が終わった後は、落ちていくだけさ」

女神「……そうでしょうか?」

大智「君は物語の神だから、物語が終わったあとのことは考えないみたいだね」

女神「あなたは物語が終わった後、登場人物は不幸になるといいたいのですか?」

大智「そこまでいうと大げさだけど、まあ、おおむねは合ってるかな。特に昔話なんてそうじゃないかな」

女神「では、見に行きましょうか?」

大智「え?」

場面転換。

村の中。

大智「……ここは?」

女神「桃太郎の物語が終わった後の世界です」

大智「ふーん……。結構、リアルだな」

村人1が家の扉を叩く。

村人1「おい、開けてくれ! 頼む!」

すると中からおじいさんが出てくる。

おじいさん「おやおや、どうしたんだい?」

村人1「頼む! お金、貸してくれ」

おじいさん「ええ? またかい?」

村人1「頼むよ。絶対、今度返すから」

おじいさん「悪いが、桃太郎が持ち帰った財宝はほとんど村のために寄付したんだ。私たちが残した置いた分も、もうなくなってしまったよ」

村人1「けっ! なんだよ、使えねーな!」

唾を吐いて、ズカズカと歩き去っていく村人1。

大智「ああいうのは、どの時代にもいるな。……それにしても、この村……なんか、閑散としてないか?」

女神「桃太郎が鬼を退治し、財宝を持って帰った後、村人たちは喜び宴を開きました。膨大な財宝があったせいで、村人たちは働くことを忘れ、堕落してしまいました」

大智「……」

そこに桃太郎がイノシシを背負って帰って来る。

桃太郎「ただいま、おじいさん。山でイノシシがいたから取ってきたよ」

おじいさん「……すまないな、桃太郎。本来なら、お前はもっと楽に生きられるはずなのに」

桃太郎「いいんだよ。狩りは好きだしね」

おじいさん「……」

それを遠くから見ている大智と女神。

場面転換。

村の中。

村人2が犬を追いかけている。

村人2「おい、待て! くそ! 逃げられた」

大智「……ここは?」

女神「花咲かじいさんの物語の後の世界です。みんな、桜を咲かせるための灰を手に入れるために犬を狩っているみたいですね」

大智「……最低だな」

女神「あ、見てください。おじいさんとおばあさんが、犬のお墓の前で手を合わせてます」

大智「……」

場面転換。

城の外。

民衆1「どこの誰かもわからない人間が王女なんて冗談じゃない!」

民衆2「この結婚は反対! 王子は騙されてるのよ!」

ワーワーと騒ぎ立てる民衆。

場面転換。

部屋の中。

椅子に座って、悲しそうな顔をしているシンデレラ。

シンデレラ「……」

そこに王子がやってくる。

王子「シンデレラ。そんなに落ち込まないでくれ。君の良さはきっと、民衆たちにも伝わるさ」

シンデレラ「王子様……。私、やっぱり、家に帰ります」

王子「シンデレラ。私は君を愛している。もし君が城を出るというのなら、私も一緒に出て行こう」

シンデレラ「王子様……」

それを遠くから見ている大智と女神。

大智「……シンデレラもか。白雪姫や、他の姫も結局はみんな、民衆からは不満が出ている」

女神「そうですね。民衆というものは、血筋を求めるものなのかもしれません。どこの誰かわからないものを王女と認めるのには時間がかかるでしょう」

場面転換。

暗闇の世界。

大智「な? 俺の言ったこと、わかっただろ? 結局、物語なんていうのは、終わりが一番いいところなんだ。それ以降はただの下り坂だよ」

女神「……だから、あなたは賞を取ってしまうと終わりだと?」

大智「ああ。俺が賞を取ったら、仲間たちとは今までのような関係は保てない。きっと、ギクシャクする。それならいっそ賞を辞退した方が……」

女神「本人は変わっていませんでした」

大智「え?」

女神「桃太郎たちは鬼を退治してからも生活を変えていませんでした。花咲かじいさんも、犬の死を悼み続けていて、新たな灰を作ろうとはしていませんでした。シンデレラもそうです。民衆から受け入れられませんでしたが、王子とシンデレラの愛は変わっていませんでした」

大智「変わってしまったのは周りだけ、か」

女神「あなたの仲間はあなたが賞を取ったら、変わってしまう人たちなのですか?」

大智「……それは」

場面転換。

部室内。

ガラガラとドアを開けて、大智が入ってくる。

大智「おはよ……」

寛人「おっす」

小和「片岡くん、これ、昨日、短編書いたんだけど、見てくれる?」

大智「あ、うん。いいよ」

和泉「んー。次はどんなネタがいいですかね?」

寛人「そうだなー。この案3とかいいんじゃねーか? な? 大智?」

大智「え? あ、うん……」

寛人「おい、大智、今日、なんか変じゃねーか?」

小和「次の賞が近いんだから、気合入れてよ?」

大智「え? でも、俺、賞取ったし……」

寛人「おいおい。自分が取ったらもう終わりか? 俺たち仲間だろ? これからも一緒にやってくれるんじゃないのか?」

大智「……あ、そ、そうだな」

小和「私も続くからねー!」

和泉「全員で賞を取りましょー!」

寛人「おう!」

大智「……考え過ぎか」

寛人「なんか言ったか?」

大智「いや、何でもない、それよりさー……」

終わり。

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