腐りきった世の中

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、コメディ

■キャスト
ディラン
フルーレティ
サミュエル
ルーシー
子供

■台本

部屋でガタガタ震えているサミュエル。

サミュエル「うう……。僕の中から出て行ってくれ」

フルーレティ「ふふふ。あははは! 貴様はこのフルーレティのものだ。貴様の魂ごと、いただくぞ」

サミュエル「やめろ! やめてくれ!」

バンとドアが開く。

ディラン「そこまでだ!」

フルーレティ「な、なんだ、貴様は?」

ディラン「貴様を祓いに来た」

フルーレティ「なんだとぉ?」

ディラン「覚悟しろ! 俺はエクソシストだ」

フルーレティ「エクソシストだと? ふん、生意気な! こいつよりも先に、貴様から葬ってくれる! があああああ!」

ディラン「消え失せろ! フルーレティよ!」

フルーレティ「ぐああああああ!」

シューっと消え失せる音。

ディラン「ふう。……終わった」

サミュエル「あ、あの……。あなたは?」

ディラン「エクソシストのディランだ。君の両親から依頼されてね。もう大丈夫だ。悪魔は去った。君はもう自由だよ」

サミュエル「ありがとうございます!」

ディラン「礼なんて言わないでくれ。これが俺の仕事なのだから」

スタスタスタと歩き出すディラン。

サミュエル「……本当だ。僕の中から悪魔が消えている。……やったぁ!」

飛び上がった時に、何かを踏む。

サミュエル「あれ? なんだろ? ロザリオ? ディランさんのかな? 届けなくっちゃ」

場面転換。

外。ディランを探しているサミュエル。

サミュエル「ディランさんは……あ、いた! ……って、え?」

遠くでディランの話声が聞こえる。

ディラン「よくやったな、レティ」

フルーレティ「ケケケ! あんなの朝飯前よ。それより、今回はどのくらい儲けたんだ?」

ディラン「ふふふ。20万ドルだ。あの両親、ポンと出したよ」

フルーレティ「ひゃー! こりゃまた、ぼろ儲けだな。……おい、約束は守れよ」

ディラン「わかってるって。仔牛だろ? 3頭くらい買ってやるよ」

フルーレティ「5頭だ!」

ディラン「はー。しゃーねーな」

サミュエル「……」

場面転換。

街の中を歩いているディラン。

立派な家の前で立ち止まる。

ディラン「……レティ。この家はどうだ?」

フルーレティ「ちょっと見てくる」

スイーっと家の中へ入っていくフルーレティ。

しばらくして、フルーレティが帰って来る。

フルーレティ「ダメだダメだ。立派なのは外見だけで、家の中はボロだ」

ディラン「んー。残念。次に行くか」

サミュエル「……」

場面転換。

再び、立派な家の前で立ち止まる。

ディラン「ここはどうだ?」

フルーレティ「よし、見てくる!」

数分後、フルーレティが帰って来る。

フルーレティ「ビンゴだ! めちゃめちゃ金持ち! しかも7歳くらいのガキがいるぞ」

ディラン「よし! じゃあ、とり憑いてくれ!」

フルーレティ「おうよ!」

ディラン「じゃあ、3日後にな」

フルーレティ「暴れまくってやるぜ!」

サミュエル「……」

場面転換。

家の中から子供が飛び出してくる。

子供「あああああああああああああ!」

周りを歩いている人間が立ち止まり、子供を見る。

子供「殺してやる殺してやる殺してやる! 皆殺しだー!」

子供がナイフを振り回す。

周りの人たちが悲鳴を上げる。

子供「があああああああああああああ!」

それを遠くから見ているサミュエル。

サミュエル「……」

場面転換。

遠くから家を見ているサミュエル。

サミュエル「……来た!」

ディランがやってきて、家に入っていく。

サミュエル「やっぱり来た。くそ、僕はあいつらに騙されたんだ……」

ルーシー「……噂は本当だったようね」

サミュエル「うわっ! ビックリした」

ルーシー「あ、ごめんなさい。私、ルーシー。エクソシスト教会の人間よ」

サミュエル「エクソシスト教会?」

ルーシー「ええ。あなたのように、悪魔にとり憑かれた人間を助ける、悪魔祓いの組織よ。でも、中にはああやって、悪魔と手を組むエクソシストもいるのよ」

サミュエル「そんなの……許されるんですか?」

ルーシー「そんなわけないでしょ! ああいう奴がいるから、エクソシストが誤解されるのよ。インチキとか高額の金だけを取っていく無能とかね」

サミュエル「……」

ルーシー「安心して。あいつを捕まえてみせるから」

サミュエル「うう……。お願いします。僕、こんなの……許せません……」

ルーシー「うん。任せておいて」

場面転換。

街の外れ。

ディラン「いやー、今回もお手柄だったな、レティ」

フルーレティ「ケケケ。ま、俺様の演技力あってこそだ」

ディラン「これからも頼むぞ」

ルーシー「いえ。あんたたちの企みもこれまでよ」

ディラン「な、なんだ、貴様!」

ルーシー「執行部の者よ」

ディラン「ちっ! 教会の犬か!」

ルーシー「随分と悪さが過ぎたわね。覚悟しなさい」

ディラン「くそ! レティ、行け!」

フルーレティ「うおおおお!」

フルーレティがルーシーに襲い掛かるが、ルーシーがロザリオを出す。

ルーシー「消え去りなさい」

フルーレティ「ぎゃあああああ!」

フルーレティが消え去ってしまう。

ディラン「レティ!」

ルーシー「人の……いや、悪魔の心配をしてる場合?」

ルーシーがディランの目の前に飛び込み、腹にパンチを入れる。

ディラン「うっ……くそ」

ディランが倒れる。

ルーシー「ふう」

そこのサミュエルが出てくる。

サミュエル「ありがとうございました」

ルーシー「こいつは私が然るべき場所に送り、罰を与えるわ。だから安心して」

サミュエル「お願いします」

サミュエルが深々と頭を下げる。

場面転換。

ディランを抱えたルーシーが歩いている。

そして、立ち止まり、ディランを降ろす。

ルーシー「ったく、なにやってんのよ」

ディラン「すまんすまん。油断してた」

ルーシー「一度悪魔にとり憑かれた人間は悪魔が見えるようになるんだから、気を付けなきゃダメじゃない」

ディラン「……はい」

ルーシー「レティ、あなたも」

スーッとフルーレティが現れる。

フルーレティ「さーせん」

ルーシー「でも、ま、これであの少年も騒がないでしょ」

フルーレティ「ケケケ。まさか、教会の裁く側もグルだなんて、夢にも思わないだろうな」

ディラン「ま、世の中、そんなもんさ」

フルーレティ「だな」

ディラン「あ、これ、今回の見逃し料」

ルーシー「毎度あり。それじゃ、あんたらはさっさと違う町に行きなさい」

ディラン「はいはい。また、何かあったら頼むな」

ルーシー「何かないようにしなさい」

ディラン「へいへい……」

フルーレティ「ったく、腐りきったの世の中だぜ」

ディラン「悪魔に言われたら終わりだな」

フルーレティ「ケケケケケ!」

終わり。

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