高度な恋バナ
- 2023.03.13
- ボイスドラマ（10分）
■概要
人数：5人
時間：10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
彩芽（あやめ）
旭（あさひ）
有希（ゆき）
咲良（さくら）
岬（みさき）
■台本
有希「じゃじゃじゃじゃーん！ さあ、やってまいりました！ 語りの時間でーす！」
咲良「ちょっと、有希、声大きいって！ 先生来ちゃうよ」
有希「おっと、そうだった。じゃ、みんな部屋の真ん中に寄って寄って」
岬「なにするの？」
有希「修学旅行の夜なんて、することと言ったら一つじゃない」
岬「え？」
有希「恋バナよ、こ、い、バ、ナ！」
岬「ええー。私、恋バナなんてできる程、恋してないよー」
有希「はいはい。岬が大野君といい感じなのは知ってるから」
岬「ええっ！？」
有希「ってことで、彩芽さんもこっちきて」
彩芽「わ、私はいいよ」
有希「ダメ―。これは強制ですー。この班に入れられたことを呪うのね」
彩芽「ちっ！」
彩芽が枕を持って、部屋の中央へやってくる。
有希「じゃあ、開始するわよ。言い出しっぺの私からね……」
場面転換。
岬「って、大野君が言ったの……」
有希「ぷっ！」
咲良「あははははは。くっさーい！ よくそんなこと言えるよねー」
岬「ええー、いいじゃん！ 私はすごく刺さったんだよ」
有希「うんうん。恋愛も人それぞれだもんね。じゃあ、最後は彩芽さんね」
彩芽「……つっても、私、みんなほど、甘い感じじゃないぞ」
有希「いいのいいの。旭くんとのこと聞かせて」
彩芽「なっ！？ なんで、そこで旭がでてくるんだよ！？ あいつはただの小さい頃からの知り合いだっての！」
咲良「で？ どうなの？ キスとかした？」
彩芽「だーかーらー！ そういうんじゃないって！」
有希「まあまあ。とにかく、旭くんとのこと、聞かせてよ」
彩芽「……別に大した話はないぞ」
場面転換。
公園。ズルズルと彩芽が旭を引きづってくる。
旭「ちょっと、彩芽ちゃん、離してよ」
彩芽「うるさいな！ いいから、ちゃんと歩けよ」
旭「ど、どこに連れて行く気？」
彩芽「あれだ」
旭「あれ？」
犬の唸り声が聞こえてくる。
旭「あ、あの犬がどうかしたの？」
彩芽「旭。お前は気弱過ぎる。だから、少しは鍛えないと」
旭「鍛えるって？」
彩芽「あの犬とガン飛ばし合うんだ。ひるんだら襲い掛かってくるぞ」
旭「むむむむ無理だよー！」
彩芽「いいからやれっての！」
彩芽が旭を犬の前に放り出す。
犬が唸り出す。
旭「う、うう……」
彩芽「いいか、目を逸らすなよ」
旭「こ、怖い……」
犬が吠える。
旭「うわあああ！」
逃げた旭に犬が追ってくる。
旭「彩芽ちゃん、助けてー！」
彩芽「ったく、しょうがねーな。……犬！ どっか行け！」
犬がキャンと鳴いて逃げていく。
彩芽「こんな感じだよ」
旭「……彩芽ちゃん、凄い」
彩芽「ん？ そうか？（照れて）」
場面転換。
彩芽「……あの時、旭が私に抱き着いて来てさ。ブルブル震えてたんだよ。可愛かったなぁ」
岬「……」
咲良「……」
彩芽「ん？ どうかしたか？」
有希「えっと、他にはない？」
彩芽「他？ そうだなぁ……」
場面転換。
リビング。
ドンと彩芽が皿を置く。
旭「えっと、彩芽ちゃん。これなに？」
彩芽「なにって、料理だよ料理」
旭「……食べ物なんだ、これ」
彩芽「あー、ほら、なんだ。男ってさ、女の手料理は嬉しいもんなんだろ？」
旭「う、うん……。そういう人もいるみたいだね」
彩芽「もちろん、旭も嬉しいよな？」
旭「え？ あー、いや、どうだろう……？」
彩芽「う、れ、し、い、よな！？」
旭「うん。嬉しいよ」
彩芽「よし、じゃあ、食べてみてくれ。私の人生の初の料理だ。言うなれば、料理の……処女ってやつだな。お、お前に……やるよ。ありがたく思え」
旭「いや……料理は、ちゃんと練習してからの方がいいと思うけど……」
彩芽「ほら、あーん！」
旭「あ、あー……ん」
彩芽が料理を旭の口に入れる。
旭「おふっ！ ごはっ！」
彩芽「おい！ 何吐いてるんだよ！」
旭「ご、ごめん……」
彩芽「食い終わるまで帰さないからな」
旭「そ、そんな……」
場面転換。
彩芽「なんだかんだ言ってさ、あいつ、私の料理全部食べたんだ。あれは嬉しかったなぁ。まあ、次の日、あいつは腹痛で入院したけど」
岬「……」
咲良「……」
彩芽「ん？ どうした？」
有希「えっと、もっと、違う方向の話ない？ 例えば、旭くんの方から、何かしてくれたみたいな」
彩芽「んー。……あ、あるある。とっておきの話が」
場面転換。
彩芽の部屋。
彩芽が布団で寝ている。
彩芽「はあ、はあ、はあ……」
旭「大丈夫？」
彩芽「よ、余裕だよ。……このくらいの風邪」
旭「やっぱり、病院行った方がいいよ」
彩芽「病院は怖いから嫌だ」
旭「もう、子供じゃないんだから」
彩芽「うるさい。嫌なもんは嫌なんだ」
旭「でも、ドンドン熱が上がってるよ」
彩芽「大丈夫だって。薬も飲んだし、寝てれば治るから」
旭「……」
彩芽「うう……」
旭「彩芽ちゃん！」
彩芽「はあ、はあ、はあ……。旭。もし、私が死んだら……」
旭「ちょっと、縁起の悪いこと言わないでよ」
彩芽「あ、ごめん。そうだな」
旭「……ねえ、彩芽ちゃん。確か、野草の図鑑持ってたよね？」
彩芽「ん？ あ、その本棚にあるよ」
旭が本棚から本を取り出す。
旭「あった……。ちょっと借りるね」
旭が部屋から出ていく。
場面転換。
バタンとドアが開き、旭が入ってくる。
旭「はあ、はあ、はあ……。彩芽ちゃん、この薬草を煎じて飲めば、熱は下がる……って、あれ？」
彩芽「おう、旭、どこ行ってたんだ？」
旭「……彩芽ちゃん熱は？」
彩芽「もう下がったよ。言っただろ？ 寝てれば治るって」
旭「は、はははは……」
彩芽「それにしても、旭はなんで、そんなにボロボロなんだ？」
旭「な、なんでもない……」
場面転換。
彩芽「その後、旭を問い詰めたらさ、解熱効果がある薬草を採ってきたんだってよ。けど、あいつ、運動神経ヤバいから、何度も転がり落ちたらしいんだよ」
岬「……」
咲良「……」
彩芽「旭は無駄骨折ることが多いんだよな。失敗ばかりっていうか、意味ないことやっちまうって言うか。……まあ、そういうところも可愛いんだけどな」
有希「……」
彩芽「どうした？ まだダメか？ なら、もう一つ、凄いのあるけど」
有希「あ、いや、もういいよ」
彩芽「へ？ なんでだ？」
有希「……ちょっと彩芽さんの恋バナ、高度過ぎてついていけない」
岬・咲良「うん、うん」
彩芽「そうか？ 普通だと思うんだけどなー」
終わり。
