【声劇台本】最後の一瞬まで

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、シリアス

■キャスト
アレン
エリー
親方
町長

■台本

平原に寝転がっているアレン。

穏やかな風が吹いている。

そこにエリーがやってくる。

エリー「アレン、またこんなところでサボって」

アレン「エリー。君もどうだい? 今日は風が気持ちいいんだ」

エリー「早く戻らないと、親方に怒られるんじゃないの?」

アレン「大丈夫さ。今日は素材集めの日だからね。もう集め終わってる」

エリー「はあ……。アレンってホントに優秀なんだかぐうたらなんだかわからないわね」

アレン「仕事は仕事。休むときはしっかり休む。これが僕のやり方さ」

エリー「アレンは休んでいることの方が多いけどね」

アレン「そうだ、エリー。僕、ようやく親方に合格を貰えそうなんだ。自分の店を持てるかもしれない」

エリー「ホント!? おめでとう。……でも、大丈夫? アレンってお店もってもサボってばかりな気がする」

アレン「ははは。さすがに自分の店ならしっかりと働くさ」

エリー「ホントかしら?」

アレン「それでさ、エリー。もし、独立できたら、僕と一緒になってくれないか?」

エリー「え?」

アレン「エリーの言う通り、僕にはサボり癖があるからさ。傍でしっかりと支えてくれる人が必要なんだ」

エリー「……う、うん」

アレン「ホント? 受けてくれるんだね?」

エリー「で、でもね……」

そのとき、竜の咆哮が空から響き渡る。

アレン「竜? それもあんなに……」

エリー「アレン! 早く、町に戻らないと!」

アレン「ダメだ! 竜は町に向かってる! 返って危険だ」

エリー「で、でも……。ううっ!」

エリーが倒れる。

アレン「どうした? エリー? エリー?」

場面転換。

アレンが店内に入ってくる。

アレン「親方、ただいま」

親方「アレンか。どうだった? エリーの容体は?」

アレン「熱が下がらないんだ。医者の話では流行り病ではないらしいんだけど……」

親方「そうか……。町が酷い状況の中、大変だな。アレン、しばらく店のことはいいから、エリーについててやれ」

アレン「ありがとう、親方。……でも、どうして急に町に竜がきたんだろう? どこからか、やってきたってことなのかな?」

親方「いや。昔、じいさんから聞いた話じゃ、町から少し離れたところに山があるだろ? あそこに竜が住んでいるらしい」

アレン「あの山に? でも、それなら逆にどうして今まで町に来なかったんだろう?」

親方「さあな。俺にもわからん。だが、何かしら手を打たないと、また襲われたら、今度こそこの町は終わりだ」

アレン「……」

場面転換。

町長「すまないな、エリー」

エリー「……はい」

町長「では、3日後に迎えにくるからな」

エリー「わかりました」

ドアが開き、アレンと町長が入れ替わるようにして部屋から出入りする。

町長「おっと、失礼」

アレン「あ、どうも。……エリー。容体はどうだい?」

エリー「アレン。来てくれたのね。ありがとう。大分、よくなったわ」

アレン「ねえ、エリー。体調がよくなったら、結婚式を挙げないか?」

エリー「え?」

アレン「親方がさ、こんなときだからこそ、早く一緒になった方がいいって」

エリー「アレン……。あのね」

アレン「ん?」

エリー「……昨日の……結婚の話はなかったことにしてほしいの」

アレン「え? どうして……?」

エリー「ごめんなさい。王都に住む、貴族との縁談が決まったの。3日後にこの町を出るわ」

アレン「ま、待ってくれよ! そんな急に」

エリー「ほら、さっき、町長が来てたでしょ。その話をしていたの」

アレン「断ればいいじゃないか」

エリー「ふふ。相手は貴族よ。断ることなんてできないし、裕福な生活が送れるの。断るなんてもったいないわ」

アレン「一生懸命働く。君に絶対に苦労はさせない! だから……」

エリー「お願い、帰って。もうここには来ないで欲しいの」

アレン「そんな……」

場面転換。

アレン「……エリー。どうして」

ドアがノックされ、ドアは開く。

親方「アレン」

アレン「親方」

親方「なあ、アレン。エリーのこと、本気で愛しているか?」

アレン「愛してる。世界中の誰よりも」

親方「……世界を敵に回しても、エリーを選ぶことができるか?」

アレン「……うん。エリーは僕の全てだ」

親方「そうか。実はさっき、町長を締め上げたんだが……エリーは竜への生贄に選ばれたんだ」

アレン「え? 生贄?」

親方「ああ。どうやら、この町は竜と契約しているらしい。100年に一度、生贄を捧げる代わりに、町に繁栄をもたらせるっていう契約をな」

アレン「そんなことが……。でも、どうしてエリーが生贄に?」

親方「あの高熱……。竜に選ばれた証が体に浮き上がる際に出るらしいんだ」

アレン「じゃあ、エリーが言っていた貴族との縁談は……」

親方「嘘だな」

アレン「……」

親方「もし、お前がエリーを連れて逃げたら、この町はもちろん、竜は国自体を亡ぼすだろう。……それでも、エリーと逃げる覚悟はあるか?」

アレン「国が……滅ぶ……」

親方「アレン。俺はな。いくら世界を救うためと言って、女の子一人を見殺しにすることが気に入らなねえ。一人に全部、押し付けて、めでたしめでたしっていうのが許せねえ」

アレン「親方……」

親方「お前らにだって幸せになる資格はある。……だが、その両肩には世界の崩壊という責任がかかる。……お前も一緒に背負ってやれ」

アレン「……親方、僕、行くよ」

親方「アレン。元気でな」

アレン「お世話になりました」

場面転換。

竜の咆哮が響く。

その前で震えるエリー。

エリー「アレン……。お願い。私に勇気をちょうだい……」

そこにアレンがやってくる。

アレン「エリー!」

エリー「アレン! どうして、ここに!」

アレン「話は全て聞いた。……一緒に逃げよう」

エリー「え?」

アレン「ここで逃げたら、世界が滅ぶかもしれない。その罪を一緒に背負う。だから、僕と一緒に逃げて欲しい」

エリー「……アレン。ありがとう。でも、私は逃げないわ」

アレン「どうして……?」

エリー「私、アレンを愛してる。でも、町の人たちも好きなの。私を育ててくれたあの町を見捨てて逃げることはできないわ」

アレン「……ふう。やっぱりね。エリーならそう言うと思ったよ」

エリー「だから、アレン。あなただけは逃げて。……そして、私の分まで幸せになってほしいの」

アレン「ねえ、エリー。僕がエリーのことがわかるように、エリーも僕のこと、わかってるんじゃない?」

エリー「……バカ。私なんかのために死ぬことないのに……」

アレン「エリー。愛してる。最後まで一緒にいさせてくれ」

エリー「アレン。私も愛してる」

エリーとアレンがキスをする。

同時に竜が咆哮を上げ、二人に牙を向ける。

終わり。

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