心の洗濯

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
加賀野 研信(かがの けんしん) 20歳 大学生
くるみ 20歳
萌音(もね) 19歳 研信の幼馴染
女将 51歳

■台本

部屋の中。
研信が膝を抱えて座っている。

研信「……」
萌音「あんたねえ、いつまでしょげてるのよ。女の子にフラれたからってなによ。いつものことじゃない」
研信「うるせー……。今回は本気だったんだよ」
萌音「……前回も同じこと言ってなかった?」
研信「……」
萌音「はあ……。ねえ、少し、気晴らしに行って来たら?」
研信「気晴らし?」
萌音「旅よ、旅。一人旅。ゆっくり心の洗濯でもしてきなさいよ」
研信「一人旅か……。夏休みに入るし、丁度いいかもな」
萌音「そうそう。いつまでもしょげてても時間が勿体ないって」
研信「そうだな。ありがとう。行ってくるよ」

場面転換。
電車の揺れる音。

研信(N)「こうして幼馴染に勧められて、俺は一人旅に出たのだ」

研信「しっかりと心の洗濯して、すっきりして帰るか」

場面転換。
旅館のドアを開け、研信が入ってくる。

研信「すみませーん」

女将がやってくる。

女将「いらっしゃいませ」
研信「あの、予約していた加賀野ですけど」
女将「はい、加賀野研信様ですね。どうぞ」

場面転換。
客室の扉が開く音。
女将と研信が入ってくる。

女将「こちらの部屋でございます」
研信「うわあ。広い部屋ですね」
女将「まだ観光シーズン前なので、お客様がすくないんですよ。ですから、どうぞ、このお部屋をお使いください」
研信「ありがとうございます」
女将「夕飯までお時間がありますので、どうぞ、温泉にでも入ってください」
研信「はい。そうさせていただきます」

場面転換。
廊下を歩く研信。

研信「ふう。いい湯だったぁ。お風呂も貸し切りだったし、この時期に、来てよかったな」

研信がピタリと立ち止まる。

研信「おおー。瓶のコーヒー牛乳だ」

歩いて行って、自販機で瓶のコーヒー牛乳を買う。
ポンと蓋を開けて、ごくごくと飲む。

研信「ぷはー。うん。風呂上がりのコーヒー牛乳は格別だな」
くるみ「え? ホント? 一口ちょうだい」
研信「うわああ!」
くるみ「あはははは。そんなにビックリすることないじゃん」
研信「えっと、あの……」
くるみ「私、くるみっていうんだ。この旅館に泊まってるんだ」
研信「そうなんだ」
くるみ「君もでしょ? 彼女と一緒とか?」
研信「ううん。一人だよ。いわゆる一人旅ってやつ」
くるみ「えー、ホント? 私と一緒だ」
研信「くるみさんも?」
くるみ「くるみでいいよ。あ、コーヒー一口、もーらい!」

パッと瓶を奪って、飲むくるみ。

くるみ「うん! 美味しいね。ありがと」
研信「あ、うん……」
くるみ「さてと、私もお風呂入ってこようかな」

スタスタと行ってしまうくるみ。

研信「……」

瓶をジッと見た後、残りのコーヒー牛乳を飲む。

場面転換。
食堂。

研信「うわー。おいしそう。食事も豪勢だなぁ」

そこにくるみがやってくる。

くるみ「ねえねえ。一緒に食べない? なんか、一人だと寂しくって」
研信「え? あ、うん。いいよ」
くるみ「ホント!? わーい! やったー!」

向かい側に座るくるみ。

くるみ「ここの旅館の料理ってね、すっごい美味しいんだよ」
研信「へー、そうなんだ」
くるみ「あ、このお刺身とトマト、交換しよっか?」
研信「いやいや、釣り合ってないよ」
くるみ「んー。じゃあ、お味噌汁もつける!」
研信「……お味噌汁はおかわり自由だから」
くるみ「なにさー、ケチー」
研信「あははは。仕方ないな。はい」

研信が刺身をくるみの皿に置く。

くるみ「え? いいの?」
研信「その代わりに、こっちのお肉、貰い!」
くるみ「あー、ズルいー!」

場面転換。
卓球場。
研信とくるみがピンポンをしている。

くるみ「えいやー!」
研信「ほ!」
くるみ「えい!」
研信「おっと!」
くるみ「もらったー!」

くるみのブンっという空振りの音。

くるみ「ああー! スカッたー!」
研信「あはははは」
くるみ「ううー……。これで3連敗だー」
研信「もう一回する?」
くるみ「当たり前だよー!」

場面転換。
研信の部屋。

研信「ふう。……疲れたけど、楽しかったな」

するとコンコンとノックの音。

研信「ん? はーい」

ガチャリと開ける音。

くるみ「えへへ。着ちゃった」
研信「いや、来ちゃったって」
くるみ「一人じゃ寂しくってさ。入っていい?」
研信「あ、ああ。うん」
くるみ「おじゃましまーす」

くるみが入ってくる。

くるみ「あー、こっちの部屋、ひろーい」

場面転換。
二人が寝転がって、話している。

くるみ「あはは。それで、フラれちゃったんだ?」
研信「女はわからないよ」
くるみ「私なら、放っておかないのにな」
研信「え?」
くるみ「あははは。なんでもない。おやすみ!」

ガバっと布団をかぶるくるみ。

研信「……」

場面転換。
朝。

研信「……ん? あれ? くるみちゃん? 部屋に戻ったのかな?」

起き上がって歩く研信。

研信「……あれ? 置手紙?」

広げて読む研信。
手紙の内容のイメージ。

くるみの声「どう? 可愛い女の子と1日、恋人気分を味わった感想は? じゃあ、サービス料はいただいていくね。毎度あり」

研信「っ!?」

慌てて財布を開く、研信。

研信「……お金が抜かれてる」

場面転換。
部屋の中。
研信が膝を抱えて座っている。
ドアが開く音。

萌音「やっほー! どうだった? 一人旅。心の洗濯、できた?」
研信「……余計汚れた」
萌音「へ?」

終わり。

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