夢を守ろう

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■概要
人数:3人
時間:15分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
アリア 8歳
ネイサン 36歳
グレース 36歳

■台本

アリア(N)「私のお父さんとお母さんは本当のお父さんとお母さんじゃない。でも、そんなことは関係ない。私はお父さんとお母さんの元に来れたことを幸せに思っている」

場面転換。
家の中。ネイサンとグレースがヒソヒソ話をしている。

ネイサン「そろそろクリスマスだな。アリアには何が欲しいか、聞いてあるのか?」
グレース「多分、お人形か、水彩セットだと思うんだけど……」
ネイサン「前みたいにサンタへの手紙を書いてもらうっていうのはどうなんだ?」
グレース「それが……去年、バレそうになったでしょ?」
ネイサン「ん? ああ、俺がサンタだってことか?」
グレース「そうそう。それからなんか遠慮しちゃったみたいで……」
ネイサン「遠慮って……まだ8歳だぞ。そんな年じゃないだろ」
グレース「もう、8歳よ。そのくらいの年になれば、色々と賢くなるものだわ」
ネイサン「そうなのか……」

そこのアリアがやってくる。

アリア「ねえ、お母さん」
グレース「どうしたの、アリア」
アリア「サンタさんに、今年は家に来てくれなくても大丈夫って言っておいてほしいの」
ネイサン「……ど、どうしてだ? アリアは良い子なんだから、サンタさんにプレゼント貰わなくっちゃ」
アリア「いいの」
グレース「アリア。欲しい物があるんでしょ? サンタさんなら、きっと用意してくれるわ」
アリア「サンタさんにはゆっくり休んでほしいの。最近、忙しそうだし……」
ネイサン「いや、年に一回しか働かないんだから気にしないでいいんだぞ」
アリア「……でも、世界中の子供たちにプレゼントを渡すんでしょ? きっと疲れちゃうよ」
グレース「そんなことないわ。サンタさんは凄いんだから」
ネイサン「そうだぞ、アリア。サンタさんは凄いんだ」
アリア「サンタさんには、私の家に来る時間があったら、家族と過ごして欲しいな」
ネイサン「……アリア」
アリア「私はね、クリスマスはお父さんとお母さんと過ごせればそれで幸せなの。だから、お父さんにはゆっくり休んで欲しいし、プレゼントもいらないから」

そして、スタスタと行ってしまう。

ネイサン「……どう思う?」
グレース「完全に、サンタの正体があなただって知ってて話してたと思うわ」
ネイサン「……やっぱりか。それらしい理由を付けてたけど……」
グレース「ね? アリアもちゃんと考えられる子になったのよ」
ネイサン「そうだな。俺が考えてるより、アリアはずっと大人だった。けど、それだからこそ、アリアにはまだ夢を持っていて欲しいんだ」
グレース「どういうこと?」
ネイサン「サンタは本当にいるってところさ」
グレース「でも、バレてるわよ? サンタの正体があなただって」
ネイサン「ふふふ。逆に言うと、サンタの中身が俺じゃないってことを見せれば、サンタがいるって信じるんじゃないのか?」
グレース「……そうかもしれないけど、どうやって?」
ネイサン「同僚に頼んでみるよ。サンタをやってくれないかって?」
グレース「でも、顔でバレるわよ」
ネイサン「顔? まさか、はは(そんなわけないという笑い)」
グレース「去年、アリアがなんて言ったか覚えてないの?」
ネイサン「……あっ!」
グレース「サンタさんってお父さんにそっくりだねーって言ってたでしょ。それからよ。サンタの中身があなたじゃないかって思い始めたの」
ネイサン「じゃあ、顔を見せないようにして……」
グレース「そんなの怪しすぎるでしょ」
ネイサン「そっか……。じゃあ、どうしようかな……」
グレース「やっぱり、普通にプレゼント渡したら?」
ネイサン「……でもなー。アリアにはサンタを信じていてほしいんだ。あの子の夢を守りたい」
グレース「あなた……」
ネイサン「……あっ! いいこと思い付いたぞ!」
グレース「なに?」
ネイサン「ちょっと検証と練習が必要になるけど、これなら、俺がサンタだって思わなくなるはずだ」

場面転換。
クリスマスイブ。

ネイサン「メリークリスマス!」
アリア「メリークリスマス!」

そこにグレースもやってくる。

グレース「ケーキも用意できたわよ」
アリア「うわー! 美味しそー」
ネイサン「よし、さっそく切り分けようか。お皿とフォークはあるか?」
グレース「あ、忘れちゃった。取って来るわね」
ネイサン「いや、俺が行くよ」

ネイサンが歩いていく。

グレース「アリア、どの部分が食べたい?」
アリア「私はお父さんとお母さんの残りでいいよ」
グレース「もう、またそんなこと言って。せっかくアリアの大好物のいちごがたくさん乗ったケーキなのに」
アリア「でも、お母さんもイチゴ好きだよね?」
グレース「そうだけど……」

そのとき、ピンポーンとインターフォンが鳴る。

グレース「誰かしら? ちょっと待っててね」

グレースが行った後、今度はサンタの格好をしたネイサンが入ってくる。以降、サンタはネイサンが声色を変えている状態。

サンタ「メリークリスマス!」
アリア「あれ? サンタさん? ……今年は来なくていいって言ったのに」
サンタ「アリアが良い子にしてたから、プレゼントを渡しにきたんだよ」
アリア「……でも」
サンタ「あ、しまった。プレゼントが入った袋を玄関に忘れてしまったぞ。ちょっと待っててくれ」

サンタが部屋を出て行く。

アリア「……」
グレースの声「アリア―、ちょっと来てくれる?」
アリア「え? あ、はーい!」

アリアが、声がした方向へ歩く。
そして、その後ろからネイサンが声を掛ける。

ネイサン「あれ? アリア、どうしたんだ?」
アリア「え? お父さん?」
ネイサン「ん?」
アリア「今、サンタさんが来てて……」
ネイサン「ホントか? どこだ?」
アリア「玄関にいる」
ネイサン「そっか。じゃあ、見に行ってみるか」
アリア「え?」

ネイサンとアリアが玄関へ行く。

ネイサン「あ、いた。袋の中からプレゼントを探してるみたいだぞ」
アリア「ホントだ……」
ネイサン「じゃあ、リビングに戻って待ってような」
アリア「うん……」

リビングの方へ歩いていくアリアとネイサン。

ネイサン「な? サンタはちゃんといただろ?」
アリア「う、うん……」
ネイサン「あ、しまった。皿を持ってくるの、忘れてた。先にリビングに戻っててくれ」
アリア「うん。わかった」

ドアを開けてアリアがリビングに入る。

アリア「……」

ガチャリとドアが開いて、グレースが入ってくる。

グレース「あれ? お父さんは?」
アリア「お皿を取りに行ってる」
グレース「そう」

また、ドアが開く。

サンタ「お待たせ! これがアリアへのプレゼントだ」
アリア「あ、ありがとう……」
サンタ「それじゃ、私はこれで失礼するよ」

サンタがリビングを出て行く。

グレース「お見送りしよっか」
アリア「え? あ、うん」

グレースとアリアも廊下に出る。

グレース「あの、サンタさん、ありがとうございました」
サンタ「ああ」

すると後ろの方からネイサンの声がする。

ネイサンの声「ありがとうございました」
サンタ「いやいや。いいんだよ。それじゃ、メリークリスマス、アリア」
アリア「め、メリークリスマス」

場面転換。
次の日。

グレース「ふう。疲れたわ」
ネイサン「でも上手くいっただろ?」
グレース「そうね。多分、大丈夫だと思うわ」

そのとき、ドアが開く。

アリア「ねえ、お父さん、お母さん」
ネイサン「ん? どうしたんだ?」
アリア「サンタさんって本当にいたんだね」
グレース「そうね」
ネイサン「だから言っただろ?」
アリア「うん!」

場面転換。
数分前。

アリア「……えーっと、まず、お父さんが台所にお皿を取りに行く。そして、すぐにサンタの服に着替える」

アリアのスタスタと歩く音。

アリア「その後、ピンポンが鳴って、お母さんがリビングから出て行く」

アリアのスタスタと歩く音。

アリア「そして、玄関で今度はお母さんがサンタの格好に着替える。で、サンタの格好をしたお父さんがリビングにやってくる。そして、プレゼントを忘れたって言って、玄関に行くと言った……」

アリアのスタスタと歩く音。

アリア「お母さんの声がして、廊下に出て……後ろからお父さんが来た。たぶん、リビングから出て、すぐに着替えたのかな」

アリアのスタスタと歩く音。

アリア「玄関で見たサンタさんはたぶんお母さん。だって、そのとき、顔は見えなかったから。そのあと、お父さんが先にリビングに戻っててって言ってキッチンに行った。そして、キッチンにお母さんが戻ってくる」

立ち止まるアリア。

アリア「その間にまたお父さんがサンタの格好に着替えて、私にプレゼントくれた。最後に、サンタさんを見送るときにお父さんの声がしたのは……」

ガサゴソと探る音。

アリア「あった。レコーダー」

再生ボタンを押すと、声が流れる。

ネイサンの声「ありがとうございました」

アリア「やっぱり、サンタさんはお父さんだったんだ……」

場面転換。
ドアが開く音。

アリア「ねえ、お父さん、お母さん」
ネイサン「ん? どうしたんだ?」
アリア「サンタさんって本当にいたんだね」
グレース「そうね」
ネイサン「だから言っただろ?」
アリア「うん!」

アリア(N)「私のお父さんとお母さんは本当のお父さんとお母さんじゃない。でも、そんなことは関係ない。お父さんとお母さんは私を愛してくれてる。だって、私のためにここまでしてくれるんだもん。だから、私も頑張るんだ。私が、サンタさんがいるって思ってるっていう、お父さんとお母さんの夢を守るために」

終わり。

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