よくある主人公ポジション
- 2023.05.04
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
結人(ゆいと) 17歳
晴馬(はるま) 17歳
警備員 年齢は自由
■台本
結人と春馬が町を歩いている。
結人「……人多いな」
晴馬「……ゴールデンウィークだからな」
結人「なんで、ゴールデンウィークに野郎と二人で街を歩いてるんだ?」
晴馬「彼女がいないからだろ」
結人「あーあ。世の中、理不尽だよなー」
晴馬「なにがだ?」
結人「結局さ、生まれた時点で、イケメンかどうかで人生が確定するだろ? なんかやるせないよなーって」
晴馬「まあ、確かにイケメンの方が世の中、生きやすいっていうのはあるだろうな」
結人「生きやすい程度じゃねーって。全てが確定するよ。大体、俺がイケメンだったら、とっくに彼女が出来てて、今頃は勝ち組だったんだよなぁ」
晴馬「いや、そうとも言えんだろ」
結人「あん? なんでだよ?」
晴馬「……あのカップルを見ろ」
結人「カップル? ……あっ」
晴馬「どうだ?」
結人「……なんで、あの顔で、あんな可愛い女の子と付き合えるんだ?」
晴馬「いわゆる、美女と野獣ってやつだな」
結人「……待ってくれ。それじゃ……」
晴馬「ああ。そうだ。顔で全てが決まるわけじゃないんだよ」
結人「……」
晴馬「だから、もし、お前がイケメンだったとしても、彼女が出来てるとは限らないわけだな」
結人「どうすればいい? どうすれば、俺でも彼女を作れるんだ?」
晴馬「俺が思うに、それはポジションの問題だな」
結人「ポジション?」
晴馬「主人公のポジションって、やたらとモテると思わないか? いつの間にかハーレム状態になっているとか、よくあることだろ?」
結人「けど、それは漫画とか小説の話だろ? 現実だと、主人公ポジションなんてないって」
晴馬「そうでもない」
結人「どういうことだ?」
晴馬「これも、見たことがあると思うが、スポーツができるやつってモテたりするだろ?」
結人「あっ! 確かに。甲子園の投手とか、めちゃめちゃモテるって聞くもんな」
晴馬「そうだ。そこまで顔が格好良くなくても、スポーツが出来たりするとモテたりする」
結人「……けど、俺、スポーツとかできないし」
晴馬「わかってる。だから、俺にいい考えがあるんだ」
結人「……なんだ?」
晴馬「俺の計画に乗るか?」
結人「彼女ができるならな」
晴馬「……よし。ちょっと来い」
場面転換。
反復横跳びをしている結人と春馬。
結人「はあ、はあ、はあ……もう、限界だ」
結人が倒れる。
晴馬「もうギブアップか? お前の、彼女を作りたいって気持ちはその程度なのか?」
結人「ち、違う……」
結人が立ち上がる。
結人「はあああああ!」
再び反復横跳びをする結人。
結人「はあ、はあ、はあ……一つ、聞いていいか?」
晴馬「なんだ?」
結人「なんで、反復横跳びなんだ?」
晴馬「主人公ポジションに上りつめるためだ」
結人「どういうことだ?」
晴馬「見たことないか? 女の子が風船を手放してしまって、それをキャッチして女の子に返すシーン」
結人「ああ、見たことあるな。……その女の子は風船を取ってくれた男に惚れるって流れだ」
晴馬「そう。まさに、それだ」
結人「けどよぉ。風船を持ってる女の子って、小学生とかそんな年齢だろ?」
晴馬「そうだな」
結人「小学生に惚れられてどうするんだよ」
晴馬「考えてみろ。確かに今は小学生と付き合うと周りから白い目で見られる。だが、10年後はどうだ?」
結人「俺が大人になった頃、女の子は女子高生……」
晴馬「どうだ? ゾクゾクしないか?」
結人「うおおおおおおお!」
物凄い勢いで反復横跳びをする結人。
場面転換。
晴馬「よし、これでどんなときでも、風船に反応できるようになったな」
結人「半径50メートル以内なら、どんな風船だって、取れる自信があるぜ」
晴馬「じゃあ、さっそく、特訓の成果を試しにいくぞ」
結人「ふふ。楽しみだなぁ」
場面転換。
町中を歩く結人と春馬。
結人「なあ」
晴馬「なんだ?」
結人「そもそも風船を持ってる子がいないぞ」
晴馬「確かに、今時、街中で風船を配ってることは少ないな」
結人「ど、どうするんだよ?」
晴馬「大丈夫だ。いい考えがある」
結人「なんだ?」
晴馬「ここでは風船が配られていないなら、配られているところに行けばいい」
結人「それはどこなんだ?」
晴馬「遊園地だ」
結人「おお!」
晴馬「さっそく行くぞ」
結人「よし!」
場面転換。
遊園地の入り口付近。
結人「……おお。やっぱり、遊園地の中じゃ風船を配ってるみたいだな」
晴馬「だろ? 行くぜ」
結人「ああ」
遊園地に入ろうとする2人。
だが、警備員に止められる。
警備員「ちょっと待ちなさい。入るなら入園料を払ってくれないと」
結人「入園料?」
晴馬「いくらだ?」
警備員「一人、2100円だよ」
結人・晴馬「……」
晴馬「帰るか」
結人「そうだな」
場面転換。
結人と春馬が町を歩いている。
結人「……人多いな」
晴馬「……ゴールデンウィークだからな」
結人「なんで、ゴールデンウィークに野郎と二人で街を歩いてるんだ?」
晴馬「彼女がいないからだろ」
結人「あーあ。世の中、理不尽だよなー」
晴馬「なにがだ?」
結人「結局さ、金持ちかどうかで、人生が確定するだろ? なんかやるせないよなーって」
晴馬「そうだな。それが現実だな」
結人「はあ……。金持ちになりたい」
晴馬「働くしかないな」
結人「バイトでもしようかな」
晴馬「……いいと思うぞ」
結人「……なんだかなぁ」
終わり。
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