幽霊なんかいない

〈前の10枚シナリオへ〉  〈次の10枚シナリオへ〉

〈声劇用の台本一覧へ〉

■概要
人数:2人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
恵麻(えま) 16歳
璃斗(りと) 16歳

■台本

璃斗と恵麻が並んで歩いている。

恵麻「人間は3つの点が集まったものを見ると、人の顔に見えてしまうの。これはシミュラクラ現象って言って、脳にそういう作用があるってわけ。幽霊に見えるって思い込んでるわけじゃなくて、脳の作用だから、仕方ないのよ」
璃斗「……それで心霊写真の大半は説明できるってこと?」
恵麻「そういうこと」
璃斗「じゃあ、心霊スポットとかで、霊感が強い人が寒気を感じるとかは?」
恵麻「それも思い込みよ。こういう実験があるわ。ある人に、ここで人が自殺したっていう場所に連れて行ったら、寒気がするって言い出したの」
璃斗「実はそれは嘘で、何でもない場所だったってこと?」
恵麻「そう。逆に、事故で人が亡くなった場所で、ここは有名なパワースポットで癒しの効果があるって場所に連れて行ったら、癒されるって言ったのよ」
璃斗「なるほどなぁ」
恵麻「これは聞いたことあるんじゃない? プラシーボ効果ってやつ」
璃斗「ああ。確かに聞いたことある。確か、薬だって言って、なんでもないものを飲ませたら、病気が治ったってやつだよな」
恵麻「そうそう。つまり、脳ってすごい便利というか、凄いっていうか、いい加減なのよ」
璃斗「……どれなんだよ」
恵麻「とにかく、心霊現象には、全て説明が付くってわけ」
璃斗「でもさ、説明つかないものもあるんだよな? ポルターガイスト現象とか」
恵麻「あー、それも、まだ解明されてないってだけで、これから解明させるわよ」
璃斗「じゃあ、幽霊はいないってこと?」
恵麻「そういうこと」

場面転換。
恵麻と璃斗が並んで歩いている。

恵麻「あー、もう、イラつく!」
璃斗「まあ、落ち着けって」
恵麻「なにが、幽霊がいないなら、心霊スポットにも夜に行けるだろ、よ!」
璃斗「ははは……。お前がムキになって幽霊を否定するからだろ」
恵麻「いないものをいないって言って、何が悪いのよ。大体さ、心霊スポットなんて、普段は人が立ち寄らない場所よ? 不良のたまり場になってたり、ホームレスがいたり、幽霊じゃなくても危険はたくさんあるわ」
璃斗「あー、まあ、確かに」
恵麻「そんなところに女の子一人で行けだなんて、頭悪いわ。もし、なんかあったら責任取れるの!?」
璃斗「いや、俺に言われても……」
恵麻「それに、建物内は老朽化が進んで、底が抜けたり、天井が落ちてきたり、物が倒れてきたりとか、そういう危険だってあるんだから!」
璃斗「うん。そうだな」
恵麻「大体さ、幽霊がいるなら、世の中、幽霊だらけになると思わない? 少なくても西暦から考えても2000年も経っているのよ? その間、何人死んだと思ってるの? 1000人に一人くらいが幽霊になるんだとしても、膨大な人数にならない?」
璃斗「そうだな」
恵麻「だから、幽霊なんかいないのよ」
璃斗「わかったわかった」

場面転換。
恵麻と璃斗が並んで歩いている。

璃斗「……すっかり遅くなっちまったな」
恵麻「もう! あんたが、学校でゲームに夢中になってるからよ!」
璃斗「お前だって、夢中で本読んでたんじゃねーかよ」
恵麻「まあ、いいわ。は、早く行くわよ」
璃斗「お、おい。なんで、そんなに急いでるんだよ?」
恵麻「う、うるさいわね! 早く行くわよ!」
璃斗「……あれ? そういえば、ここって学校で噂の幽霊通りだよな?」
恵麻「早く行くって言ってるでしょ!」
璃斗「お前、まさか怖いのか?」
恵麻「はあ? そそんなことあるわけなないでしょ」
璃斗「……幽霊はいないんじゃなかったのか?」
恵麻「いないわ! いないに決まってるわよ!」

そのとき、カランカランと音がする。

恵麻「きゃああああああ!」

恵麻が走り出す。

璃斗「お、おい! 待てって!」

璃斗も走り出す。

場面転換。
蹲って震えている恵麻。

恵麻「幽霊なんかいない、幽霊なんかいない、幽霊なんかいない」
璃斗「……怖いから、信じないようにしてただけだったのか」

終わり。

〈前の10枚シナリオへ〉  〈次の10枚シナリオへ〉