贅沢な嫉妬
- 2024.02.27
- 映像系(10分~30分) 退避

■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
アニメ、ファンタジー、シリアス
■キャスト
ジャック
ジェイムズ
店主
■台本
ジャック(N)「あいつは天才だった。俺がどんなに努力しようとしたところで、追いつけない。……追いすがるのがやっとだ。そんなあいつは、俺に対して、いつも苦笑しながら言う……」
ジェイムズ「お前が羨ましいよ」
ジャック(N)「バカにしている。俺を見下している。そう思うだけで、憎悪が溢れ出す。だからこそ、俺はどんなに絶望的でも、歩む足を止めないのだ」
場面転換。
ドアが開き、店にジャックが入って来る。
店主「よお、ジャック。調子はどうだ?」
ジャックがテーブルの上にドンと戦利品を置く。
ジャック「鑑定頼む」
店主「おお。こりゃまた大量に持ってきたな。どれどれ」
袋を開けて、中をごそごそと漁る店主。
店主「なぬ! お前、これ! スノードラゴンのカギ爪じゃねーか。しかも、レアものの!」
ジャック「ああ。それ、レアものだったのか」
店主「はあ……。まったく。お前ってやつは。大体、スノードラゴンを一人で狩ったなんていったら、大抵は村の英雄に祭り上げれるくらいなんだぞ」
ジャック「興味ない。それに、英雄なら、もう既にいる。村だけじゃなく、世界のな」
店主「ジャック……。ジェイムズは別格だ。稀代の天才。いや、史上最高、空前絶後の素質だ。そんなやつと比べるのはよせ」
ジャック「おやっさんはさっさと鑑定して、金だけ出してくりゃいい」
店主「ったく……。世の中、どうしようもないことは、どうやっても覆らない。割り切った方が楽だぞ」
ジャック「……」
場面転換。
ジャックが剣の素振りをしている。
ジャック「ふっ! ふっ! ふっ!」
回想。
店主「ったく……。世の中、どうしようもないことは、どうやっても覆らない。割り切った方が楽だぞ」
回想終わり。
ジャック「……わかってるさ。わかってるけど……」
ジェイムズ「よお、ジャック。精が出るな」
ジャックが素振りを止める。
ジャック「……ジェイムズ」
ジェイムズ「聞いたぜ。一人でスノードラゴンを狩ったんだってな。すげえじゃん」
再び、素振りを始めるジャック。
ジャック「ふん。お前なんか、10歳で倒してただろうが」
ジェイムズ「まあ、そりゃそうだけどさ。大抵の人間は10人が束になっても勝てないんだ。それを一人で勝つっていうのはすげー……」
ビュンと剣をジェイムズに向けるジャック。
ジャック「嫌味か?」
ジェイムズ「……違うよ。本気でそう思ってるんだ」
ジャック「……ふん」
再び素振りを始めるジャック。
ジェイムズ「前にさ、俺、お前に羨ましいって言ったことあるだろ?」
ジャック「……」
ジェイムズ「あのとき、お前は怒ったけどさ。俺は今でもその想いは変わらない」
ジャック「ふざけるな。俺なんかの、何が羨ましいって言うんだ? 俺が持ってるいる者で、お前が持っていないものなんて、何もないだろ」
ジェイムス「……そんなことはないさ」
ジャックが剣を地面に叩きつける。
ジャック「俺にあって、お前にないものなんて、なにがある!? 俺は、お前に追いつこうと必死に努力してきた! だが、それがどうだ!? お前に追いつくどころか、背中さえ、見えない!」
ジェイムズ「それなんだ」
ジャック「なにがだ?」
ジェイムズ「お前は会うたびに強くなっている。見違えるほどな」
ジャック「それでも、お前の足元に及ばない」
ジェイムズ「ジャック。そこだ。そこなんだよ」
ジャック「……」
ジェイムズ「俺は天才だと言われ続けてきた。実際、そうなんだろう。みんなができないことも、俺は容易にできる」
ジャック「……」
ジェイムズ「だがな。俺のピークは15までだ。それ以降は、俺は全く強くなっていない」
ジャック「……そう、なのか?」
ジェイムズ「ああ。……極めてしまったんだろうな。10年以上、足掻いてみたが、ダメだった。どうやっても今以上には強くなれないんだ」
ジャック「……」
ジェイムズ「だからさ。だから、お前が羨ましいんだ。これからも強くなれる、お前が」
ジャック「それでも、お前に届かなくても、か?」
ジェイムズ「強くなる。それが、身を震わせるほど楽しいことはお前だってわかってるはずだ」
ジャック「……」
ジェイムズ「俺は強くなりたい。今よりも。それができる、お前が本当に、狂おしいほど羨ましいんだ」
ジャック「ふん……。そんなのは贅沢な嫉妬だ」
ジェイムズ「……俺から言わせれば、俺みたいになりたいなんて思う方が、贅沢な嫉妬だ」
ジャック「……」
ジェイムズ「……」
ジャック「ふっ。ふふふふ」
ジェイムズ「あはははあははは」
二人が大笑いする。
場面転換。
ジェイムズ「じゃあな。これからも強くなってくれ。……もしかしたら、お前への嫉妬に負けて、お前を殺しに来るかもしれないけどな」
ジャック「ああ。そのときは返り討ちにしてやる」
ジェイムズ「……楽しみだ」
ジャック「じゃあな」
ジェイムズ「ああ」
ジェイムズが去っていく。
ジャックが剣を手に取り、素振りを始める。
終わり。
-
前の記事
コレクション 2024.02.26
-
次の記事
オオカミと赤ずきんちゃん 2024.02.28