呪いのブルーレイ
- 2024.06.05
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
千尋(ちずる) 17歳
美那子(みなこ) 17歳
男
ナレーション
女
■台本
千尋の部屋。
ホラー番組を見ている。
女の人「きゃあああああああ!」
ナレーション「その後、その女を見た人間はいない……」
怖そうなBGMが流れる。
千尋「うーん。30点かな」
場面転換。
学校の教室内。休み時間。周りは騒がしい。
美那子「ねえ、千尋。夏休みって何か予定とかあるの?」
千尋「うん。もちろん」
美那子「うそ! まさか、男と出かけるとか言うんじゃないでしょうね!?」
千尋「……本気でそう思ってる?」
美那子「ううん。どうせ、レンタルショップを回って、ホラー作品を借り漁るんでしょ?」
千尋「……わかってるなら、聞かないでくれないかな」
美那子「あーあ。千尋はいいなぁ。熱中できる趣味があって」
千尋「なら、美那子も一緒にホラー映画見よう。面白いよ」
美那子「パス」
千尋「そういう食わず嫌いはよくないと思うよ」
美那子「私は安全がモットーなの。危険なものを食べる勇気なんていらないわ」
千尋「うーん。じゃあ、心霊スポット巡りでもしてみる?」
美那子「なんでさっきより、難易度が上がってるのよ? もっと、普通の、女の子っぽいのを提案してよ」
千尋「うーん……。丑の刻参りとか?」
美那子「あんたに聞いた私がバカだったわ」
千尋「でもさー。おかしいと思わない?」
美那子「なにが?」
千尋「ほら、丑の刻参りって聞いたら、女のイメージない? 白装束で黒い長い髪の女が金づちと五寸釘を持ってる感じ」
美那子「ああ……。あとは頭にろうそく付けてるとかね」
千尋「そうそう。なんか、男ってイメージなくない?」
美那子「確かに……」
千尋「幽霊もそうじゃない? 一般的なよくある幽霊って、女の子って感じじゃない?」
美那子「……そうね」
千尋「あと、呪いのビデオもそうじゃない? 中から出てくるのって、女でしょ?」
美那子「いや、それはそういう作品だからでしょ」
千尋「でも、やっぱり、呪いのビデオから出てくるのって女が選ばれるでしょ」
美那子「そりゃそうだけどさ。男がビデオから現れるって、なんかシュールな気がしない?」
千尋「んー。そうだね。長い髪の白いワンピースを着た男がテレビから出てきたら、怖いって言うよりキモイって思っちゃうね」
美那子「……別に髪は長くなくていいし、ワンピースじゃなくてもいいでしょ」
千尋「それにさ、今の時代だと、ビデオなんて持ってる人、少ないよね。ずっと待ってても誰も再生してくれないって悲しいと思う」
美那子「まあ、そう考えると可哀そうになってくるけど……って、ちょっと待って! 話が逸れてる!」
千尋「え? あ、そっか。ごめんごめん。どこの心霊スポットに行くかって話だったよね?」
美那子「……そんな話は一言もしてない」
場面転換。
一週間後。休み時間の教室。
美那子「ふっふっふ。千尋。私、凄い良い物、手に入れたわよ」
千尋「呪いのビデオとか?」
美那子「な、なんでわかったのっ!?」
千尋「いや、凄い良い物っていったら、呪いのビデオくらいしかなくない?」
美那子「あんたのその感覚、ヤバいと思うわよ」
千尋「それよりさ、呪いのビデオをせっかく手に入れても、うちにデッキとかないよ?」
美那子「チッチッチ! 甘いわね。今時、幽霊もちゃんとアップデートしてるのよ」
千尋「アップデート?」
美那子「じゃじゃーん! 見て! 呪いのブルーレイよ!」
千尋「おおー! 今時だねぇ」
美那子「でしょ? し、か、も! 出てくるのは男なんだってさ」
千尋「へー。それも今時だね。平等ってやつかな?」
美那子「んー。幽霊の世界にもそういうのがあるのかわからないけどね」
千尋「じゃあ、今日の帰り、うちで見ようよ」
美那子「オッケー!」
場面転換。
千尋の部屋。
千尋「じゃあ、セットするよ?」
美那子「うん。……って、あれ?」
千尋「どうしたの?」
美那子「なんで、私、一緒に見ることになってるんだろ?」
千尋「趣味を見つけるって話でしょ?」
美那子「……そうだっけ?」
千尋「じゃあ、再生するよ」
美那子「……ちょっと待って! やっぱり止める」
千尋「もう遅いよ」
テレビの砂嵐の映像。
千尋「おおー。雰囲気出てるね。……まあ、今の時代はこういう砂嵐をテレビで見ることはないけど」
美那子「ねえ、やっぱり止めようよ」
千尋「あ、映った!」
美那子「え?」
千尋「……森の中に井戸がある」
美那子「ベッタベタね……」
千尋「今時、井戸なんて残ってるところあるのかな?」
美那子「そういうこと言わないの」
おどろおどろしい音楽が流れる。
千尋「こういう曲も幽霊がチョイスしてるのかな?」
美那子「だから、そういうこと言わないの!」
千尋「あ、見て! 井戸から手が出てきた!」
美那子「……ホントだ」
千尋「うわ……。なんかすごい凝ってる。それっぽいね」
美那子「ちょっと怖い……」
千尋「あ、男だ……」
美那子「ほ、ホントだ……」
千尋「前に、長髪でワンピースの男なんてキモイって言ったけど、撤回する。……ちょっと、怖い……」
美那子「千尋! 止めて!」
千尋「わかった!」
ピッピッピと何度も停止ボタンを押すが映像が止まらない。
美那子「なんで止まらないの!?」
男の声「ああああ……」
千尋「いやああー!」
美那子「でででで出てきた! テレビから出てきた―!」
千尋「きゃああああああ!」
男の声「あああああああ……」
ピッピッピと何度も停止ボタンを押すが、勢い余って、違うボタンを押す(ボタン音を変える)。
男「え?」
千尋「へ?」
男「あ、ああああ~……」
美那子「なになに?」
男「あああああーー~~……」
スーッとテレビに戻っていく音。
美那子「……テレビに戻っちゃった。どうなってるの?」
千尋「……間違って、巻き戻しボタン押しちゃったみたい」
美那子「……なるほど」
ガチャンと音が鳴り、ブルーレイディスクが開く。
千尋「……どうしようか、これ」
美那子「とりあえず割ったら?」
千尋「そうだね」
場面転換。
休み時間の教室。
美那子「ねえ、千尋。今度はどこ行こうか?」
千尋「ええ……もういいじゃない。やめようよ」
美那子「何言ってるのよ。千尋が勧めたんでしょ、心霊スポット巡り」
千尋「あんなことがあって、よく、行けるね」
美那子「あんなことがあったからよ。あの興奮をもう一回味わいたいの! あの恐怖! 癖になりそう!」
千尋「うう……」
美那子「責任もって、付き合ってもらうからね」
千尋「そんなぁ~」
終わり。
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